カンヌ国際映画祭、審査員賞を受賞した映画「そして父になる」は福山雅治演じる父親が、子供の取り違えという事件を通して成長する姿を描いた作品である。
突然、二人の父親が現れた息子も様々な葛藤を抱えて、両方の父親に父の日のプレゼントを贈るのだが。。。
アンニュイな夕方。いつのものように夕飯の支度をしていると、娘氏が「ハァー疲れた」と変な演技をしながら、幼稚園から帰宅した。
クツも揃えず、帽子を投げ捨て、手洗いもしないストロングスタイルを貫く彼女は、帰ってくるなり、リュックを開けて箱を取り出した。
「んっ!」
アニメ史に残る名場面、となりのトトロで少年がサツキに傘を渡すスタイルで、ワタクシは箱を受け取った。どうせ、ビックリ箱か何かだろうと思いながら箱を開けると、画伯直筆の絵が入った父の日のプレゼントであった。
ニコちゃん星人みたいなのが3匹描かれていたため、画伯の解説を求めたところ、パパとママとネコらしい。なるほど、満面の笑みのニコちゃん星人は愛すべき我が家だがや。
人生で初めて、娘から「父の日」のプレゼントをもらったワタクシは思った。
「そうか、ワタクシは父になったのか」
思えば、娘氏が生まれた日から今日までの数年間は、ワイフとの闘争に明け暮れ、父になったことを実感する余裕もなく過ぎ去っていったような気がする。
4年前の夜、分娩室で”もうすぐ産まれる!センセイ呼んで!”という時に、窓から外を眺めて、
「センセイがそこの居酒屋から出てきた!」
と、用意していたとっておきのギャグをかましたのだが、ワイフにはさっぱりウケず、助産師さんが馬鹿ウケしただけに終わった時から、なんだか、空回りしていたような気がする。
しかし、親は無くとも子は育つ。いつの間にか、娘氏は父にプレゼントを渡すくらい大きくなっていた。
娘を産んで以来、ワイフはひたすら不機嫌になったが、ワタクシはワイフを刺激しないよう息をひそめ、ひたすら自分に革命を起こしてきた。
努力の甲斐あって、旦那としてはレベルが格段にアップし、家事をしないワイフを怒ったり、責めたりすることはもうなくなった。それをしたところで、ケンカになるだけである。名著「ビジョナリーカンパニー」にはこんなことが書かれている。
止めるべきことのリストを作る
ほとんどの人は忙しいわりに、規律のない毎日を送っている。「やるべきこと」のリストをたえず膨らませ、あれもやり、これもやり、さらにこれもやって勢いをつけようとつとめている。しかし、めったに成功しない。
ところが、飛躍を導いた指導者は、「やるべきこと」のリストと変わらないほど、「止めるべきこと」のリストを活用している。無意味なことをあらゆる種類にわたって止める点で、おどろくほどの規律を示している。
「ビジョナリーカンパニー②」223ページより引用
なるほど。ビジョナリーな家庭を作るためには、「止めるべきこと」リストのトップには夫婦ゲンカを書き込むべきなのだろう。
すでにワタクシは、趣味のフィリピンパブ通いやパチンコ、GTA(ゲーム)の世界での乱射騒ぎなど、独身時代にほとんどの時間を費やして極めたことをやめている。
努力の甲斐あって、娘が描いた絵に描かれたパパとママは笑顔でよかった。ワタクシは、自分がやってきたことを娘氏に褒められたような気がした。
問題は、ワイフの止めるべきことリストに、
- デパートでの散財
- 気温30度以下でのエアコン稼働
- まつ毛エクステ
などなど、記入したいのであるがどうすればよいのでしょうか?
よくよく考えれば、ワイフのリストにあるべき家事を、ワタクシがすべてやってしまっているため、暇を持て余したワイフが要らぬことをやるべきリストに書き込んでいる気がする。
止めるべきことリストの本来の意味は、ムダなことをキッパリとやめて、やるべきことに資源を集中させることにある。
ワタクシもリストをさらに見直して、FC2動画を観たり、ひたすらネットサーフィンしてつまらないブコメを残したりすることをやめて、仕事に集中しようと思う今日この頃である。
映画「そして父になる」のワンシーン、ワタクシに似た福山雅治が息子に叫ぶ。
「できそこないだったけど、パパだったんだよ!」
ワタクシも娘にいつか謝らなくてはならない日が来るのだろうか。こんなブログを書いているけど、パパだったんだよ! いや、違う。毎日、家事を全部してるし、どこのパパよりも娘と一緒にいる。
「ママは家事をしないけど、ママなんだよ!」
うん、しっくりきた。コレが正しい。娘氏には、パパもママもちょっとずつだけど成長していることを伝えよう。
娘氏よ、父の日のプレゼントありがとう。