中国、欧州間のシルク、スパイス、奴隷の交易により、中央アジアのオアシスは裕福な商業地となった。中国が海外政策の重点構想としてシルクロードの再建を試みる今、ソ連崩壊後の中央アジア、カフカス地域とその周辺国は、中国の西方拡大に伴い、再び富がもたらされるよう期待している。
カザフスタンのイドリソフ外相は、シルクロード再建のための投資により「この地域における経済活動と貿易が再び活性化されるだろう」と述べた。
投資は大いに必要とされている。商品相場の下落やロシアの景気後退のさなか、国際通貨基金(IMF)によると、中央アジアやカフカスの経済成長は今年、20年ぶりの低水準まで落ち込むとみられている。
IMFのアーメド中東中央アジア局長は「一連の打撃は長く続くだろう」と話し、「(新シルクロードの)構想は、相当の強みと利益をもたらしてくれる」と付け加えた。
■「一帯一路」の効果は不明
2013年に発表された中国政府の新しい「一帯一路」政策の効果は不明のままだ。ソ連崩壊後20年にわたる多額の投資により、中国はすでに中央アジアで際立った経済力を持った。
IMFによると、中央アジアおよびカフカス周辺諸国に対する中国の貿易額は00年に18億ドルを計上し、13年には過去最高の500億ドルまで成長。中国企業はカザフスタンの石油生産量の4分の1近くを所有している。また、トルクメニスタンが輸出するガスの半分をはるかに超える量を占めている。中国の政策銀行、中国輸出入銀行は、財政難に苦しむタジキスタンとキルギスの最大債権者で、それぞれ49%、36%の国債を保有している。
政府高官らは、中国の官僚や民間企業が新シルクロード構想の一環としてプロジェクトをうたい、殺到するのを見てきた。当初の議論では、インフラや中国の工業部門の過剰生産能力を国外に出すことに焦点が置かれた。文字通り不必要な工場や設備を移動させたこともある。
カザフスタンのイサエワ副農相によると、中国企業はカザフスタンの農業に19億ドルを投資する交渉に入っているという。トマトの加工工場を中国からカザフスタンの大草原地帯に移転させるプロジェクトも投資の内訳に含まれている。
新しい貿易ルートが開通しつつあり、中国、欧州間の鉄道による商取引は昨年の2倍以上になる。
中国政府はシルクロード構想は地政学的な策略ではないと主張しているが、中国が経済的存在感を拡大することに用心する関係者もいる。「一帯一路」構想に対する融資の枠組み――シルクロード基金は400億ドル、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は1000億ドル――が創設されたことは、日米政府の反発を招いた。