九州の雑誌から候補作に 今村夏子さん「あひる」
福岡の出版社「書肆侃侃房」発行の創刊号掲載 九州の雑誌から20年ぶり
日本文学振興会は第155回芥川・直木賞の候補作を発表した。芥川賞は5人、直木賞は6人がノミネートされた。選考会は7月19日、東京都内で開かれる。
芥川賞候補になった今村夏子さんの「あひる」は福岡市の出版社・書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)が発行した「たべるのがおそい」創刊号に掲載された。
単行本が候補になる直木賞と違い、芥川賞は文芸誌に掲載された作品から選ばれる。「文学界」(文芸春秋)などの大手5誌からノミネートされるのが通例で、九州の雑誌から同賞候補作になるのは故・福島次郎さんの「バスタオル」が載った「詩と真実」(熊本市、1996年2月号)以来、20年ぶり。
「たべるのがおそい」は4月に発行された。目次の執筆者の名前の大きさを全員同じにするなど、書き手を平等に扱う編集方針。3000部を刷って完売し、増刷を決めている。
編集・発行人で今村さんの担当編集者でもある田島安江さん(70)は「芥川賞は全く考えておらず、非常に驚いています。いい作品が注目されてうれしい」と話す。選考会当日は、今村さんと一緒に吉報を待つ。【米本浩二】