東側クレーンの支柱傾きが原因
神戸市北区の新名神高速道路の建設現場で4月、橋桁が落下し、作業員10人が死傷した事故で、西日本高速道路が設けた技術検討委員会は19日、東側で橋桁をつっていた門型クレーンの支柱の傾きが原因だったと発表した。東側の地盤が軟弱だったが、事前の調査が不十分で、土台が不均等に沈下したことで橋桁のバランスが崩れたという。
事故は4月22日午後4時半ごろに発生。検討委の終了後に記者会見した委員長の山口栄輝・九州工大副学長や西日本高速によると、事故の6時間半前、東側の支柱の土台が不均等に西側に4センチ深く沈み、橋桁(長さ124メートル、重さ1350トン)をつるしたクレーンの支柱上部が最大18.5センチ傾いた。橋桁が水平方向に西側に押される形になり、支えていたジャッキからずり落ちたとみられる。
現場近くの防犯カメラには約3秒間、橋桁全体が上下に揺れる様子が映っていた。西側では支えていた4基のジャッキのうち2基がバランスを崩し、橋桁が約2メートル落下。弾みで仮受け台の支柱が圧壊してさらに約5メートル落ち、南方向に約18メートルずれるように落下した。東側でも、橋桁を支えていた部材が落ち、仮受け台まで2メートル落下していたことが分かった。
検討委が事故後に、東側の支柱の地盤をボーリング調査したところ、強度が低く変形しやすい層があった。受注元の三井住友建設と横河ブリッジのJV(共同企業体)は詳しい地盤調査をしていなかったという。支柱の傾きは現場で認識されていたが工事は続けられ、計測や監視も不十分だった。
山口委員長は「技術的に難度の高い作業を終えた時点で事故が起きていた。十分な施工管理をすれば事故は防げた」と述べた。
西日本高速は調査結果を踏まえ、再発防止を徹底し、工事再開に向けた準備を進めるが、工期の遅れについては明言を避けた。
【山下貴史、矢澤秀範】