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【社説】

沖縄県民大会 耳傾けるべき声がある

 米軍犯罪の犠牲者を二度と生み出さない。沖縄の県民大会で表明された人々の願いと覚悟だ。沖縄に基地を集中させている日米政府はもちろん、私たち国民全体が沖縄の声に耳を傾けるべきだ。

 うるま市の二十歳の女性が元海兵隊員の軍属に殺害され、無残な姿で発見されてから一カ月。大会では多くの人から苦しみが語られた。若い命を守れなかった悔しさや怒り。「被害者は私だったかもしれない」と、女性の感じた恐怖や悲しみに共感している。

 一九九五年の少女暴行事件から二十年がたっても、相変わらず米軍関係者の犯罪が繰り返されてきた。事件や事故のたびに日米両政府が示す再発防止や綱紀粛正の策は小手先だった。今回もそうだ。日本側は警察官を増やしてパトロールを強化したり、街路灯を増やし、米側は米兵らに飲酒禁止を求めた。これが県民の怒りや苦悩を理解した対応なのか。県民の要求とはあまりにかけ離れている。

 米軍に特権を与えている地位協定についても、今回は軍属が公務外で起こした事件であり、直接捜査の障壁になっていないとして、抜本改定はしないという。

 だが、翁長雄志県知事は異を唱える。基地の外で起きた米軍関係者の事件をすべて日本の司法で裁くなど、不平等な協定を対等な内容へと抜本改定を求める。全基地撤去を求める世論も膨らんでいる。辺野古新基地建設に反対する運動に象徴されるように、沖縄社会は変わった。大会決議で「海兵隊撤退」が掲げられたように、「基地の整理縮小」のレベルで県民の心はもう収めきれない。

 県民大会は超党派による開催が探られたが、調整は難航した。辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄会議」の主催では参院選への影響もあるとみたのだろう。辺野古への新基地移設を容認する自民や、政権与党の公明は参加しなかった。

 問題なのは、このように沖縄の人々を分断させているのはだれなのかということだ。米軍犯罪の本質は、日米安保のために、在日米軍施設の大半を沖縄に集中させてきた基地政策にこそある。

 七十一年前の今頃、沖縄は壮絶な地上戦の最中にあった。戦後は米兵らの犯罪や事故も問えない、治外法権に泣かされてきた。この不条理な歴史を終わらせたい。

 県民大会に連帯し、国会前など四十一都道府県で市民集会が開かれた。沖縄の問題に閉じ込めず、日本全体で、わが事としたい。

 

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