沖縄県民大会 「繰り返さない」の誓い
沖縄がいかに理不尽なものを押しつけられているか、すべての参加者が改めてかみしめたことだろう。
沖縄県うるま市の若い女性が無残な遺体で発見され、元米海兵隊員で米軍属の男が殺人などの疑いで逮捕された事件。抗議の県民大会がきのう那覇市の奥武山(おうのやま)公園で開かれ、約6万5000人が参加した。
壇上で翁長雄志(おながたけし)県知事は「21年前に二度と事件を繰り返さないと誓いながら、政治の仕組みを変えることができなかったことは、政治家として、知事として、痛恨の極みだ」と悔しさを訴えた。
21年前とは、1995年に沖縄で起きた米兵3人による少女暴行事件を指す。いたいけな少女への蛮行に、積もり積もった県民の怒りが爆発した。当時も、約8万5000人が参加して抗議集会が開かれ、「島ぐるみ」のうねりに発展した。
日米両政府が宜野湾市にある米軍普天間飛行場の返還で合意したのは、少女暴行事件が起点になっている。ただし、返還そのものは、名護市辺野古への県内移設が条件になったため、いまだに実現していない。
再発防止に向けて沖縄が求めた日米地位協定の改定も見送られ、運用の改善にとどまっている。
事件・事故はなくならない。米軍関係者による犯罪は、72年の本土復帰から今年5月までに沖縄で5910件発生し、うち殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件が575件を数える。
きのうの大会には、21年前の大会にも参加した人が数多くいた。北谷町から来た公務員の男性(62)もその一人だ。梅雨が明けた炎天下のグラウンドで「声を上げたのに変えられなかった。でも、声を上げ続けなければ変わらない。こういう沖縄では駄目だ」と静かに語った。
今回の事件後、米側は地位協定に基づく特別な法的地位を与えられる「軍属」の範囲を見直すことに同意した。軍人・軍属の基地外での飲酒や深夜の外出も制限された。
しかし、どれほど効果があるのかは不明だ。曲がりなりにも両政府が危機感を持った21年前と比べて、今回の動きは明らかに鈍い。沖縄の人びとが心の底から怒りを口にしても、同じような日常が繰り返されるとしたら沖縄は救われない。
大会で採択された決議は、地位協定の抜本的改定や、普天間の県内移設によらない閉鎖・撤去に加えて、在沖海兵隊の撤退も求めている。
沖縄は23日に「慰霊の日」を迎える。戦後71年たってなお、国土面積の0・6%しかない沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中し、若い女性が基地の存在ゆえの凶悪な事件で命を落とす。そんな沖縄に終止符を打つことが日本全体の務めだ。