参院選へ 原発政策の行方 維持か、脱却かの岐路
安倍政権は、原発依存度を下げると言いつつ、実際には原発維持・再稼働路線を歩んでいる。
だが、原発維持は、民意の反映とは言い難い。毎日新聞が今年3月に実施した世論調査では、原発の再稼働反対が5割を超えている。
第2次安倍政権の誕生後、国政選挙は今回の参院選で3度目だ。過去2度の選挙で、与党・自民党は原発についてほとんど語らず、電力供給における再生可能エネルギーや原発の比率を示してこなかった。脱原発の受け皿となる野党が分散したことも重なり、原発を巡る与野党の論戦が深まったとは言えない。
今回は違う。安倍政権は昨年、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)を決めた。具体的には原発20〜22%、再生エネ22〜24%などとしている。この目標が妥当なのかどうかが、エネルギー政策における大きな争点となるはずだ。
20〜22%という原発比率は、新増設や老朽原発の運転延長がなければ実現できない。原子力規制委員会は近く関西電力高浜原発1、2号機の運転延長を認可予定で、「40年廃炉の原則」も骨抜きになりつつある。
再生エネの目標比率は現状の約2倍だが、既に約3割を再生エネで賄うドイツなど、先進各国に比べ後れをとっている。
安倍政権が原発再稼働を進めるのは、アベノミクスの経済成長路線にとって、「安定的で低廉なエネルギー」が欠かせないという理由だ。
確かに、原発は火力発電より燃料費が安く、二酸化炭素の排出量も少ない。しかし、いくら規制を強化しても、原発事故のリスクをゼロにすることはできない。原発を動かすほど増え続ける核のゴミ処分は解決のめどが立たず、核燃料サイクル政策も行き詰まっている。
原発を維持するなら、こうした課題を解決する方策を示し、国民の理解を得る責任が与党にはある。
世界に目を向ければ、再生エネの導入が拡大している。発電コストは低下を続けており、普及はさらに進むだろう。全世界の風力発電の設備容量は原発を上回ったという。
民進や共産など野党4党は参院選に向けた政策協定で「原発に依存しない社会の実現」を掲げた。
ならば、野党には、再生エネを主軸とした新しいエネルギー社会に至る具体的な道筋を示してほしい。
東京電力福島第1原発事故から5年余り。原発を維持するのか、脱依存を進めるのか。日本はいま、大きな岐路に立っている。今回の参院選では、エネルギー政策で、明確な将来展望を持った論戦を期待する。