「翁長与党大勝利」という歪んだ情勢認識はなにをもたらすのか
この人はこのようなことを書き込んでいます。
「現実を見ましょうよ。
自民党や公明党は、党本部の意向により、翁長知事誕生から辺野古容認派として袂を分かち、選挙では辛酸を舐めている。
この状況は、以前から。
それでいて翁長知事は県民に支持されている。
それは県議会議員選挙みてもわかるでしょう。
都民から総スカンされた都知事とは違う。
今更、自民党や公明党が県民大会に参加を表明する方が驚くよ。
まあ、他県に住んでいる人や否定的な人にとっては、沖縄の空気を感じられないのは仕方ない。」
この人の書き込みを読んでいると、頭がグルグルします。鏡の世界という奴ですね。
この人はたぶん琉新か沖タイしか読んでいないと思います。
「県政与党大勝」「知事大勝利」などという、景気のいい見出しが地元紙に踊っていましたが、ホントでしょうか?
ここから押さえておきます。
読者の方には繰り返しになりますので、お分かりの方は中央の集会写真下まで飛んで下さい。
さて、こういう大本営発表ワールドの人のように、「自民党や公明党は選挙では辛酸を舐めている」なんてやられたら、そもそもの状況認識から違ってきます。
下のグラフは、旧議席数と新議席数です。
・共産党・・・7⇒6(1減)
・社民党・・・8⇒6(2減)
・社大党・・・5⇒3(2減)
・民進党・・・0⇒0(減りようがない)
計5減
名無しさん、「現実をみましょうよ」。これが「県政与党大勝利」に見えますか。熱、ないですか。
はい、与党は軒並み議席を1~2議席減らしています。
与党が増えたように見えるのは、「諸派」と「無所属」が増えたからにすぎません。
これがこともあろうに、シンザト事件の直後で、なおかつ、投票前夜にノータリンな米兵が泥酔運転をして人身事故を起こした直後の投票結果なのです。
これだけの神風を受けながら、議席を減らしておいて、どこが「翁長与党大勝」でしょうか。
一方、「辛酸をなめている」はずの野党側は、どうだったでしょうか。
・自民党・・・13⇒13(増減なし)
・公明党・・・4⇒4(同上)
・お維新・・・2⇒2(同上)
自民・公明は手堅く地盤を固めて、ブラスマイナスなしです。
翁長が自民党時代那覇市長をしていたお膝元の、那覇市・南部離島区を覗いてみます。
・自民当選 ・・・3名
・共産当選 ・・・2名
・新風会当選 ・・・0
名無しさん、「辛酸をなめた」のは、自分の子飼いの新進会系を全部落とした翁長さんたちじゃありませんか。
この人たちの情勢認識では、「県議会選でも大勝利して、翁長県政は完全なる支持を受けている」という判断になります。
すると、出てくる声は決まって強気で国とぶつかれ、「和解」なんかするな、イケイケドンドンの強硬方針になります。
係争委の結論は「よく議論してください」で、想定されたとおり次の高裁に進みます。
本来「保守政治家」の翁長さんならば、この「和解」期間に、ここでなんとか国と妥協点を探って「結果」を出すべきです。
ところが、この県議選結果を「大勝利」と総括すれば、もうその目はないですね。
だって、自分らは「大勝利」しているんですから、国になんぞに妥協することは微塵もないからです。
少しでも翁長氏が譲って落とし所を探ろうとすれば、「日和るな!要求を貫徹しろ!」という金切り声が応援団から飛んできます。
つまり、こういう歪んだ情勢認識は、いっそう翁長氏を政治的選択の幅がない隘路に追い込むことになります。
さて、シンザト事件も一カ月が立って、かなり客観的に見られるようになりました。
http://news.goo.ne.jp/article/thepage/politics/the...
上は昨日の県民大会のものですが、「元海兵隊員による」と大書きしてあります。
何度か書いてきていますが、「元海兵隊員」という職業はありません。
よもや海兵隊のモットーである、「ワンスマリーン・フォエバーマリーン」(「一回海兵隊員になれば、一生海兵隊員だ」)をパクったわけじゃないでしょうね(苦笑)。
つまり、一回蔑むべき職業につけば、終生その烙印を服に縫いつけてく暮らさねばならないのでしょうか。
県条例で、ユダヤ人狩りに使われた「ダビデの星」もどきの「海兵隊の星」でも服に縫い付ける法令でも作ったらいかがですか。
そうすれば、一目でただの米国民間人ではなく「元海兵隊員」だと分かります。
http://ona.blog.so-net.ne.jp/2011-04-26
犯罪は属人的なものだとするのが、近代法の原則です。
その門地、職業、宗教、民族に原因を求めていくことは、絶対にしてはならないとしています。
なぜなら、それはその集団に対する差別を生み出すことになるからです。
「元海兵隊員」という言い方を声高にしている人に聞きたいのですが、ならば、「犯人は元在日韓国人」という言い方も許されるのですね。
今は帰化して日本国籍であっても、「元在日韓国人」という言い方で、犯罪を糺弾したとしたら、これは立派な憎悪表現ではないでしょうか。
在日韓国人に罪咎があるのではなく、犯罪を犯した個人に責任があるのです。
あくまでもシンザトという米国籍民間人が犯した許しがたい凶悪犯罪であって、それ以上でも以下でもないのです。
今、私は「米国籍民間人」とシンザトを呼びました。
ところが翁長氏たちはそう呼びません。
「軍属」という概念規定そのものが怪しい言葉で呼び、さらには「軍属は米軍関係者だ」としています。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-5f24.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-2.html
「軍属」(シビリアン・コンポーネンツ)とは、あくまで軍と直接雇用関係にある民間人のことです。
たとえば、自衛隊の駐屯地にはコンビニかありますが、その従業員は間違っても「軍属」とは呼びません。
自衛隊が直接雇用していないからです。
しかし、なぜか日米地位協定第1条(b)で、以下のようなあいまいな定義をしてしまったために混乱が起きました。
●軍属の定義
①民間人である
②米軍に雇用されている者
③あるいはそれに随伴している者
④米国籍を有する者
シンザトは①④の合衆国民間人ですが、②米軍に雇用されてはいない基地出入りの民間会社従業員にすぎませんから、ただの③の「随伴するもの」該当します。
ここが盲点で、シンザトは「軍属」という日米地位協定で保護される地位に滑り込んでしまいました。
だから、嘉手納基地にいけば簡単に取れるYナンバー車を乗り回して、凶行に及んだのです。
しかし、このような米軍との直接雇用がない者まで「軍属」とした結果、彼が仕事の間に凶行をしでかしたら、一体どうなったのでしょうか。
あるいは基地に逃げ込んで、軍に保護を求めたりでもしたら、どうなったのでしょうか。
日米地位協定において、シンザトは保護されねばならないのでしょうか。
さて正直に言って、あいまいです。日米があいまいにしてきたからです。
「日米地位協定を抜本改正しろ」と集会参加者たちは叫びましたが、その前にこんな米国人でありさえすればほぼ無制限に保護対象を拡大解釈できてしまうような、「軍属」規定の運用の厳密化を要求したらいかがですか。
ところが沖縄左翼は、そんなそぶりも見せません。
なぜなら、「米軍関係者」の幅は広ければ広いほど、味噌もクソもみんな「米軍関係者」で一括りできて都合いいからです。
そして、米国人絡みならすべて、「全基地撤去」「海兵隊撤退」に結びつけらて政治利用できるから、手放したくないのです。
そこまで無制限に「米軍関係者」を拡げれば、本島に住む2千数百名の米国籍民間人の圧倒的多数はなにかしらの形で基地と関係していますから、すべからく「米軍関係者」となり、米国人はすべて凶悪という刻印を押されることになります。
これが、チャンプルーな文化を生み出してきた沖縄にとっていいことなのかどうか、少しは頭を冷やして考えて欲しいものです。
■米軍関係者犯罪についての関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-9e07.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-8595.html
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