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zoom RSS ペシミスティックな詩情が胸を打つペドロ・コスタ流“移民の歌” 『ホース・マネー』短評

<<   作成日時 : 2016/06/19 15:30  

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凄い…。ただただ凄い映画だとしか言いようがない。なぜいちいちこんなにカッコいい“絵”が撮れるのだろう…?
どう考えても全篇劇映画だけどもうドキュメンタリーとかフィクションとかそんな垣根は軽々と越えてしまっている。
正直、ペドロ・コスタの映画はいわゆる作家性が強すぎて決して得意ではないし、『コロッサル・ユース』 と同じく、
リスボンのスラム街、フォンタイーニャス地区を舞台にアフリカ移民の苦難の歴史を描くという内容一つにしても、
描写が先鋭的すぎていかに画面に意識を集中させたからって時に置き去りを喰うのはこれまで通りなんだけど、
それでも今までの作品の中で本作がいちばんよかったというか不思議と胸に沁みてくるものを大きく感じられた。
なにしろ主人公ヴェントゥーラをはじめ出てくる登場人物も彼らの人生の影が根深く染み込んだスラムの風情も、
またコスタ映画ならではの“黒”も震えるほどカッコよく、寝ボケた島国の人間の身勝手な感傷とは思いながらも、
その昔“移民”という言葉に対し覚えた憧れみたいなものを滋味深く感じさせてくれてそれがすごくよかったのだ。
しかも本作はSF映画でもないのに確かに近未来SFを思わすような空気がありまるでタルコフスキー映画のよう。
クライマックスのエレベーターのシーンには、ちょっぴり遊びすぎじゃないかと思いつつもゾクゾクしてしまった…。
とにかく、どこか絶望を漂わせながらも移民という今まさになテーマを優しく見つめているところが感動的なのだ。

画像
これに大賞を与える山形ドキュメンタリーも凄い。

『ホース・マネー』(2014年・ポルトガル/カラー/DCP/104分)
【監督】ペドロ・コスタ( 『血』 『骨』 『ヴァンダの部屋』 『あなたの微笑みはどこに隠れたの?』 『コロッサル・ユース』 )
【出演】ヴェントゥーラ、ヴィタリナ・ヴァレラ、ティト・フルタド、アントニオ・サントス
【配給】シネマトリックス
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ユーロスペース1(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員)

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