挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第一章 脱出 一巻ダイジェスト部分

2/182

一話 転生

「……なんで土の上で寝てるんだよ」

 目を開けた俺は、頬に冷たい物を感じながらそう呟いた。

 頬を地面に付け、うつ伏せの状態で寝ていた俺は、この状況が何なのか考えてみるが記憶が曖昧で、頭に靄もやが掛かって居る様な感覚があり、中々思考がまとまらない。

 兎に角、周りの確認しようと頭を起こし、辺りの様子を見渡した。

「はぁ……、マジで何処だよここは」

 どうやら俺は、六畳位の小屋の中に居るらしく、目を凝らして見えた壁は、土で出来ていて見た目はかなり粗悪だ。
 窓などは無いが、唯一外部と繋がっているであろう、開けっ放しの入り口らしき物からは、明るい日差しが射し込んでおり、部屋の暗さはそれ程感じない。
 更に部屋を見回すと、幾つか目に付く物があったので、それらを確認しようと立ち上がると、物凄い違和感に襲われ、俺は思わず叫んでしまった。

「うぉぉぉ、何じゃこりゃ! 体が小せえっ!」

 立ち上がった筈が、恐ろしく目線が低い。まるで膝から下が無くなったんじゃないかと思った程だ。驚いた俺は、更に自分の手足を見て驚愕した。自分の身体が子供の様に小さかったのだ。

 何だこれ、夢か?

 今だ寝起きの様に働かない頭で考えてみるが、幾ら考えてみてもこの場所の記憶は無く、体が子供になっている状態も拍車をかけ、増々頭が混乱してしまう。

 そんな中、俺は一つの考えが浮かんだ。

 あっ、これ夢だ!
 しかも明晰夢って奴じゃないか?
 嫌にリアルではあるが、それ以外ありえないだろ……。

 おいおい、待てよ。
 これが明晰夢なら何でも出来るって話だろっ!
 可愛い女を出してムフフな事も思い通りとかネットで見たぞ!

 よしっ!
 やってやる、やってやるぞぉ!

 俺は両手を突き出し、お尻が素敵なあの子を呼び出す為に、召喚の呪文を唱える。

「出て来いっ! 事務の美咲ちゃん!」

 …………うん、分かってた。

 一瞬で興奮し、一瞬で醒めた俺は、改めて周りにある物を確認する。

 先ず目に入ったのは、俺の直ぐ近くに置いてある、かなり大きい木の箱だ。海賊映画にでも出てきそうな箱には、鍵は付いていない様で、ゆっくりと開けてみると中には一枚の紙とその下に複数の中身の入ったと見られる袋があった。
 紙を手に取り見てみると、印刷したかの様な綺麗な字体の日本語で何かが書かれてある。

『新しい人生、おめでとう。
 まだ混乱しているであろうが、君の魂は地球の神により、ここエルデリアに送られた。
 地球の神との協定に基づき、君の魂は新たな身体を得て新しい生を送る事が可能だ。
 これは先の功績による地球の神からの恩恵で、とても誉れな事である。
 願わくば有意義に役立ててほしい。

 さて、既に外に出て確認済みかも知れないが、君は所謂ダンジョンと呼ばれている中にいる。
 魔物が徘徊し危険な場所ではあるが、どうにか生きて表に出て欲しい。
 だが、幾ら前世の記憶があった所で、子供の身であり、この世界の知識が皆無の君には、とても厳しい試練になる事は理解している。
 そこで、救済としてこの部屋と、君の助けになるであろう少しばかりの道具とスキル、そして神の加護を一つだけを用意した。
 正直な所、まだ不十分なのは分かっているが、どうにかこの試練を乗り越えて欲しい。
 この手紙を読み終える頃には、君の記憶も甦るが落ち着いて行動する事を期待する。

 それでは君の新たな人生に祝福を。』

 あぁ……、そうだ、俺は車に……。

 徐々に戻ってくる記憶に、俺の呼吸は荒くなり、身体が震え始める。あの日、俺が死んだであろうあの日の記憶が、俺の意識を奪いさっていく。



 あの日は、努めている会社のHP更新をする為、元旦当日に出社をした日だった。
 新年一日目にHP更新をせよと、出社を言い渡された事に呆れつつ、上司に文句を言って見たのだが、「出来る奴が他に居ないんだ。松平、お前の実家は都内だし遠出しないだろ? 買い物がてらに頼むよ」と、上司に両手を合わせて拝み倒された。
 せめて自宅から作業が出来る様にと交渉するも、セキュリティーの問題で無理と分かり、結局出社をして作業をする事になったのだった。

「はぁ~、かったるい」

 何時もより遅い時間に家を出た俺は、ゆっくりと歩きながら朝に母から来ていた、『年始帰ってくるの?』という短いメールを見て考える。
 年末に帰った時にも味わった、三十歳を越えた頃から言われ続けている「早く結婚しろ」との小言を思い出す。
 行けばまた言われる鬱陶しさを想像し、俺は『今年は帰らない』と、返信を打ちながら会社のエレベーターを上がった。

 行きのコンビニで買った肉まんを食べながら、早々と作業を終える。

「どうせ外に出たんだ、初詣にでも行くかな」

 そう思った俺は、近くの神社をスマホで検索しながら会社を出た。
 一番の近場では無いが、学生時代に一度祈願に訪れた事のある神社が目に付き、懐かしい思い出が甦ったので、その神社に行く事に決めた。

 電車で三駅ほど移動したその駅は、普段も人は多いのだが、正月の混雑がプラスされ、更に人々でごった返していた。

「正月だし仕方ないか……」

 余りの人の多さに、一瞬帰ろうかと思ったが、速攻で参拝を終わらせ帰ろうと思い直し、人の流れに乗って十分ほどで神社間近までたどり着いた。
 鳥居のすぐ手前にある横断歩道を渡りながら、財布から百円硬貨を取り出しポケットに仕込んでおく。
 鳥居から境内までかなりの量の人が見えたが、思ったよりかは時間が掛らず自分の番が来た。
 特に祈る事も無かったので、無難な健康を祈り参拝を終えた。

 今日はもう何処に行っても人ごみに埋もれるんだろうな、大人しく家に帰ってネットでもしながらテレビを見るか。

 俺は帰った後の事を考えながら、来た道を戻った。
 神社から出る為の、鳥居をくぐった直ぐにある信号は青点滅だったが、急ぐ必要は無いと立ち止まり、そのまま青信号になるのを待っていた。

 近所のスーパーは、正月も開いてんだっけな?

 ぼーっと、帰り道の事を考えているとその時、自分の直ぐ脇を子供が笑いながら走っていくのが目に入った。
 赤信号に突っ込む子供に、思わず体がびくっとなると、周りからも軽い悲鳴が聞こえる。
 焦って道路の右を見ると黒い車が見える。
 気が付いた時には子供に手を伸ばし、胸に寄せながら道路に向かって倒れる俺がいた。次の瞬間、頭と背中に強い衝撃を受け地面に叩きつけられる。

 世界は無音になり、身体が動かせない俺は、頬に冷たい地面を感じながら意識を失ったのだった。


以下、ダイジェスト

 死んだことを受け入れた俺は、部屋の中を見渡した。
 そこにあったのは、様々な道具や設備に素材や武器防具。
 寝床や食べ物の心配は無さそうで、まずは一安心だ。
 部屋の中の物色が終わった俺は、次に外を確認しようと思った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ