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英国が欧州連合(EU)離脱するのではと騒ぎになっているが、プロの投資家で実際にそうなると考えている者は少数派だ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BofAML)は先日、総額6,540億ドル(約67.8兆円)の資産運用を行っている世界のファンドマネージャー213人から回答を得た調査結果を発表。それによるとその3分の2は、英国のEU離脱「ブレグジット(Brexit)」が現実になる見込みは薄い、あるいは全く起こりそうにないと考えている。

とはいえ、国民投票の結果は予想がつかない状況になっており、この問題がテールリスクであることは間違いない。回答者の30%は、ブレグジットについて「発生し得る事象の中で最も懸念している」と言っている。

投資家たちは、6月23日に実施される、英国のEU離脱の是非を問う国民投票に注目している。英国はユーロとは別の独自の通貨を採用しているが、EUは貿易や移民、金融サービスなどに絡む多くの協定で結ばれている。英デービッド・キャメロン首相は、EUからの離脱は国を不景気に陥らせ、「失われた10年」をもたらす可能性もあると警告している。

国民投票の結果を受けてすぐに動かせるように、ファンドマネージャーたちは保有資産の現金比率を高めている(現在の平均比率は5.7%と2001年以来の最高水準)とBofAMLは指摘する。モルガン・スタンレーやJPモルガンのような多くの銀行では、国民投票の結果が入ってくる23日は夜通しスタッフを配置し、顧客のリクエストに対応できるようにしておく計画だ。

「社債や米国の株価は記録的な高水準につけているが、投資家たちは大量の現金を手元に置いている。英国のEU離脱が現実になってそれが市場に悪影響を及ぼしても、すぐにそれが買いのチャンスになり得るのだ」とBofAMLの主任投資ストラテジスト、マイケル・ハートネットは言う。

モルガン・スタンレーでは、英国がEU離脱となれば資本市場が大きな打撃を受け、欧州の株価は15%下落、英ポンドとユーロの価値も下落する可能性があると予想している。一方で、EU残留となった場合の欧州株価の値上がり率はわずか5%だろうと考えている。

欧州の株に比べて、米国の株価の方はそこまで影響を受けなさそうだ。市場の乱高下の影響を受けても、欧州株に比べれば魅力的に見える可能性があり、モルガン・スタンレーは「今は米国株の方が買い」だとしている。

ブレグジッド以外でファンドマネージャーたちが懸念しているのは、量的緩和失敗のテールリスク(18%が懸念していると回答)と中国の通貨切り下げまたはデフォルト(15%)だ。

編集=森 美歩

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