東北学院大サッカー部員が飲食のバイト先で勝手に値引きした件について

こんにちは。愛知総合法律事務所の弁護士加藤耕輔です。
先日複数の大学生が、バイト先の店で不正にレジを操作し正規より8割ほど安い価格で複数の友人に対し食事を提供していたことが発覚し、大学が店に対し弁償を行ったという出来事があったそうです。今回は、この件における不正を行った大学生らの責任について少し述べたいと思います。
▼事件概要
東北学院大(仙台市青葉区)のサッカー部員3人がアルバイト先のファストフード店で、別のサッカー部員や野球部の部員ら約30人に、正規より2割ほどの価格で食事を提供していたことが5月26日、 大学への取材で分かった。店の被害は数万円で大学が弁済したという。
大学はサッカー部員3人を停学処分とし、サッカー部を2月から1年間の対外試合禁止と、半年間の活動停止処分とした。またサッカー部長は辞任。野球部も活動を自粛し、5月下旬に開かれた仙台六大学野球春季新人 戦の出場を辞退した。部長と監督は辞任届を提出したが、学長預かりとなっている。
大学によると、サッカー部の男子学生3人は昨年10月から約2カ月間に複数回、勤めていた仙台市内の店でレジや券売機を不正に操作し、商品を正規の約2割の価格で販売した。 売り上げが少ないことに気付いた店側が調査して判明し、2月に大学へ通報した。
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1.民事上の責任

まずこの大学生らは、自ら働いた不正によって、バイト先の店に本来得られた利益分の「損害」を負わせています。この大学生らが不法行為責任(民法709条)や、バイト先との間の雇用契約上の義務違反による債務不履行責任(民法415条)を負うことに間違いはありません。
今回は、事件の発覚後、大学が店に対して弁償を行っていますが、大学がバイト先のお店に対して賠償すべき法的義務はありません。今回の大学による弁償はあくまでも任意に行われたものといえます。
また民法には、自己の行為の責任を理解するに足りるだけの知能を有していない未成年(概ね10歳程度と言われます)は、賠償責任を負わず、その監督義務者(保護者をイメージしてください)が負うとの規定(民法712条、714条)がありますが、今回の大学生らが未成年者だったとしても責任能力は十分にありますので、保護者が賠償責任を負うということもありません。
したがって、今回のようなケースでは、法的には大学生ら自らが賠償を行わなければならないこととなります。ただ、実際には賠償するだけの資力もないので、保護者が代わりに賠償していくことが多いのだと思います。
2.学校からの処分

またおそらくこの大学生らには、大学から学則に従って退学・停学等の処分が課されることになります。こうした学校からの懲戒処分については、学校長に広い裁量が認められていますから、これを争うことはなかなか難しいでしょう。
3.刑事上の責任

最後に刑事上の責任です。
今回の件では、その具体的な不正の方法が不明ですので,何ともいえない部分はありますが,レジを不正に操作して、本来請求すべき額を不当に下げて計上したということであれば、背任罪(刑法247条)が成立する可能性があります。
大学が代わりに弁償していることや、そのことにより店が警察に届け出ないことは、法的には刑事責任の有無には関係はありませんが、こういった事情があれば事実上刑事処分は見送られる(警察が事件として扱わない、あるいは検察官が起訴しない)可能性が高いものと考えられます。
4.最後に

たとえ刑事処分が科されなかったとしても、将来を棒に振ってしまう可能性のある行為をしてしまったことには変わりありません。 「そこまで大事になるとは思わなかった」では済まないことがあるということだけ十分に認識して、楽しい学生生活を送ってほしいと思います。

弁護士 加藤耕輔
愛知県生まれ
2009年 名古屋大学法学部卒業
2012年 愛知大学法科大学院修了、司法試験合格、司法研修所入所(第66期)
2013年 弁護士登録
弁護士法人 愛知総合法律事務所 津島事務所所属
所在地:愛知県津島市西柳原町3丁目2番地 スカイ友1階
連絡先:0567-23-2377
http://www.aichisogo.or.jp/profile/katokosuke/