治療に前進 岡山大、有効たんぱく質を特定
細菌やウイルスの感染によって全身の炎症や多臓器不全などを引き起こす敗血症の治療に有効な血中のたんぱく質の特定に、岡山大の西堀正洋教授と和気秀徳助教(ともに薬理学)らの研究グループが成功した。マウスによる実験で生存率が上がることが確認され、今後の治療薬開発につながると期待される。【瀬谷健介】
研究グループによると、血中の血漿(けっしょう)たんぱく質の一種「ヒスチジンリッチ糖たんぱく(HRG)」で、肝臓で作られ、血液中に分泌される。HRGが少なくなることで、多臓器不全などが引き起こされることが判明した。
さらに人工的に敗血症にしたマウス30匹を使い、一部にHRGを注射した。HRGが投与されたマウスは1週間後の生存率が60〜80%だった一方、投与しなかったマウスは全て死んだという。
敗血症は、世界で毎年2000万〜3000万人が発症し、約25%が死亡しているとされる。国内でも毎年37万人が発症しているが、近年、治療法に目立った進歩がなく、抗生物質以外に治療薬はないとされるという。
研究グループは、従来の抗生物質での治療に加え、点滴の中にHRGを含んだ薬を入れて投与する治療法の確立などを検討している。西堀教授は「優れた治療法になる可能性がある。人に使える治療薬の開発を早く実現させたい」と話している。