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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 舌が辛(つら)い、と書いて「辞」。辞めたくないのに、自ら職を辞すると口にすることは、なるほど、舌が辛かろう

▼「辞」の元々の形は、「辭」。まるで糸くずが絡んだように複雑な字だ。「辛」は、大きな針を表す。それを使い、乱れ絡まった糸を解きほぐすさまを示すのが、辭。白川静博士の『常用字解』によると、古くは裁判用語で使われ、かけられた疑いを解き明かすこと、そうするのに使う言葉を意味する字だったという

▼東京都知事の舛添要一さんは、政治資金の流用疑惑を解き明かす「辞」を持たなかったようだ。都議会与党にも見放されて、辞職するに至った。しかし、それで絡んだ糸が解きほぐされたことになるのか

▼政治とカネが問題にならなかった年があったろうか。都知事が二代続けて辞職する異常さ。第二次安倍政権だけで四人の大臣が辞めている

▼であるのに、政治とカネの問題は、絡み合ったまま捨て置かれた糸のようだ。政治資金の規制を強化しようとの動きが出ても、棚ざらしにされ続けた。参院選に向けた自民党の公約を見ても、この問題に取り組む決意は見えぬ

▼疑惑の人が連日追及され、退場して終幕。しばらくすると、俳優と舞台を変えて再演される。これでは単なる「政治ショー」。悪役の退場で観客が留飲を下げていては、いつまでも、薄っぺらい勧善懲悪劇を見せられることになる。

 

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