あしたのジョー実写映画版(1970年)

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     「あしたのジョー」の上映直前のポスター
目次
Introduction
「あしたのジョー」の実写映画化まで
高樹蓉子の白木葉子役の決定
実写版「あしたのジョー」の主な出演者
高樹蓉子の出演場面
実写映画のその後
台本と実際の映画との違い
力石役の亀石征一郎と力石のトレーナー役の中山昭二の関係
その他

    

Introduction

高樹蓉子にとって「あしたのジョー」は彼女が映画の出演した作品で最も印象に残る作品だったと思われる。「あしたのジョー」はこの当時、約130万人のファンがいたし、彼女自身もヒロイン白木葉子という役をもらった。舞台、実写、アニメを通じて唯一白木葉子の役で顔を出して出演したのは高樹蓉子だけである。(舞台では葉子役として長谷川澄子が出演していたが、丹下段平の娘なので白木葉子ではない。アニメの声優では西沢和子、田中エミ、壇ふみが行っていたが、演じていたのはアニメの白木葉子)
「あしたのジョー」は1968年1月より『少年マガジン』に連載された。作者は高森朝雄(梶原一騎)とちばてつやのご両人で、原案は高森朝雄が主に担当し、漫画の作成はちばてつやが担当した。この原作の背景については「あしたのジョー原作の背景」で詳しく述べる。
「あしたのジョー」は『少年サンデー』連載後、『少年サンデー』は部数が100万部を突破し、サラリーマン、学生以外に女性まで人気が浸透した。ところが、力石の突然の死というストーリーの展開になったため、読者より抗議が殺到し、1970年3月23日には葬儀まで行われ、人気の低下を心配した。しかし、1970年4月より虫プロ製作よるフジテレビ系列で30分のアニメが始まると、視聴率は初回から14%を取り、その後も20%をキープして1971年9月に一時終了した(「あしたのジョー」撮影と原作が追いついたため)。
実写映画版「あしたのジョー」はアニメ版が放映されているときに新国劇映画社を主に、日活製作で製作、放映(放映は1970年7月22日)された。監督は「野良猫ロック」、「ワイルド7」などで監督された長谷部安春監督。
実写版「あしたのジョー」の作製の意図には次のような事が書かれていた。「現代社会のジャングルに立ち向かっていく若者”ジョー”血と汗と傷だらけの『あした』への大ロマンを謳い上げたい」と。
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「あしたのジョー」の実写映画化まで

実写化は新国劇を中心に行われたが、その前に新国劇により舞台の「あしたのジョー」が1970年6月3日から26日迄、渋谷の東横劇場で行われた。これについては「舞台のあしたのジョー」で詳しく述べる。5月19日の『サンケイスポーツ』の記事によると、新国劇映画社は舞台公演終了後、映画化されることが決定されていた。実は「舞台のあしたのジョー」は松竹と新国劇が共同で公演していたため、映画も松竹が行うものだと思われるが、なぜか日活製作になった。その理由は分からない。
日活での「あしたのジョー」映画化は6月にはすでに決まっていたはずだ。しかし、配役は主役の矢吹丈の石橋正次を除いて、はっきり決まっていなかったようだ。配役が正式に決まったのは6月の終わりごろか。このため、撮影期間は10〜15日くらいと短いと思われる。
7月20日の夕方には九段会館で試写会が行われ、高樹蓉子はジョー役の石橋正次と力石役の亀石征一郎と共に舞台挨拶に出ていた。
この試写会は石橋の人気により、非常に多くのファンが詰め掛けていた。
実写版「あしたのジョー」の試写会の案内
     「あしたのジョー」試写会の案内
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高樹蓉子の白木葉子役の決定

6月中、白木葉子の役は『キネマ旬報』だと松原智恵子、『近代映画8月号』だと和泉雅子と書かれていた。しかし、実際は高樹蓉子が選ばれた。それは日活サイドの強力な推薦があったためだ。彼女の顔の上品さ、プロポーションの良さ以外にも、地味だが、根性のある女優であることを日活として見抜いていたためだった(『1970年7月6日のサンケイスポーツ』より)。
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実写版「あしたのジョー」の主な出演者

矢吹丈石橋正次
力石徹亀石征一郎
丹下段平:辰巳柳太郎
白木幹之介:見明凡太朗
若山(原作には登場しない白木ジムのトレーナー):中山昭二
マンモス西(西寛一):山本正明
青山まさる(特等少年院の服役囚):小松政夫
ウルフ金串:スピーディー早瀬
アナウンサー:太刀川寛
大高会長:武藤英司
鬼姫会チンピラのボス金次:杉山俊夫
特等少年院の服役囚:市村博
特等少年院の服役囚:杉山元

後にTBSのアナウンサー、キャスターになる生島ヒロシが出演
当時大学生だった生島ヒロシがアルバイトのエキストラで出演していた。役はウルフ金串のセコンドで、ウルフがジョーに試合で倒された後、助ける。
撮影の休憩中、こっそりリングに立ち、血が騒ぐ興奮と充実感が忘れられないとのことだった。
(参考:「あしたのジョー9」講談社文庫)



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高樹蓉子の出演場面

実写版「あしたのジョー」の大きなストーリーの流れは矢吹丈(石橋正次)が丹下段平(辰巳柳太郎)と出会い、ジョーが数々の悪事を働き、特等少年院に入れられて、力石徹(亀石征一郎)と出会う。最後は力石がジョーと対戦する。このとき力石は過度の減量のため死亡する。

最初の出演場面(矢吹丈(石橋正次)が逮捕され、特等少年院に入る前)
ある時、公園で昼寝をしていたジョーは白木ジムの若山(中山昭二)から「本格的に白木ジムでボクシングをやらないか。」と声をかけられた。やる気の無いジョーは「契約金として10万でも頂こうか。」と冗談混じりで言った。あきれた若山は一緒に車に乗っていた白木葉子(高樹蓉子)に相談を持ちかける。そこで、ジョーを呼び出し、葉子は「契約金は20万差し上げます。」と言い、「若山さん、参りましょ。」と言ってその場を去った。
   実写版「あしたのジョー」にて
      白木葉子が初めてジョーと会った時

2番目の場面(特等少年院で)
矢吹丈(石橋正次)は特等少年院で脱走を図り、結局失敗して独居房に入れられた。脱走を失敗した後、脱走を止めた力石徹(亀石征一郎)から「初めのジャブだけ本格的なプロ並みで、後のパンチがまるっきり子供だましだとはな。」と言われ、その悔しさから独居房で丹下段平の送ったはがきを基に練習を続けた。
ある日、看守から「院長先生から話がある。」と言うことで、院長室に行って見ると、そこには白木葉子(高樹蓉子)と力石、それに丹下段平(辰巳柳太郎)がいた。
葉子は特等少年院にボクシング用具一式を寄贈したため、ここに来ていた。ジョーは寄贈したことを批判し、力石と葉子の仲をからかうと力石はさすがに怒り、「ジョー、表へ出よ。」と言い、ジョーも一緒に出て行った。外ではジョーと力石の決闘が始まろうとした。その矢先、葉子が「待って、力石さん!」と叫び、力石が葉子の方を見た瞬間、ジョーは力石を連打で負かした。葉子は「卑怯者!振り向いた隙に打ったはね!」とジョーに怒ると、ジョーは「ぶたるんでやがったんだ!」と反抗した。結局2人のけんかは看守によって止められた。

3番目の場面(少年院でのボクシング大会)
内容は省略

4番目の場面(丹下ジムの3人を白木ジムに入れようとした)
丹下段平(辰巳柳太郎)にプロのライセンスが降りないため、その腹いせに、器物破損、暴行障害を起こし、丹下は逮捕された。白木会長(見明凡太朗)が丹下の身元引受人になり、若山(中山昭二)が白木ジムへ連れて行き、丹下ジムの3人を白木ジムに入れようとした。しかしそれはジョーによって断られた。それは力石と同じジムに所属すると、永久に力石との試合ができなくなるからだ。

5番目の場面(ジョーがプロボクサーになったことを葉子が力石に知らせる)
内容は省略

6番目の場面(ジョーとウルフ金串との試合)
内容は省略

7番目の場面(ジョーと力石の試合が決まり、力石が減量するため地下室に入る)
力石はジョーと対戦するため減量を決意する。しかしそれは無茶なことで、葉子は力石に減量を諦めさそうとする。

8番目の場面(減量中の力石はどうしてものどが渇き我慢できなくなり、地下室から抜け出す)
地下室から抜け出した力石は水を求めて洗面所へ行くと水道の蛇口は全て水が出ないようになっていた。力石は怒り、「誰がこんなことをした。」と言った。そこへ葉子が「私がしましたの。こうなることは分かってました。最初から無理な減量ですもの。白湯があります。お飲みなさい。」さらに葉子は「力石さん、私、あなたが減量を諦めてもそれを悲しいとは思わないわ。むしろ鉄のような意志を持ったあなたがわずかでも人間らしい弱さを見せてくれた事が私にはうれしいのよ。私、父に話して試合を延期してもらうわ。」しかし、この言葉が帰って力石に白湯を飲むのを拒絶させた。

     実写版「あしたのジョー」の場面
       力石の無理な減量をあきらめさせようと説得したとき 

9番目の場面(力石とジョーの試合)

内容は省略
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実写映画のその後

実写映画版「あしたのジョー」はその後、再度撮影することは無かった。やはり実写版はアニメに比べ、お金がかかる割りにアニメに比べて収益が上がらなかったためと思われる。
アニメの方はテレビで1980年10月から1981年8月末まで「あしたのジョー2」として放送されたが、反応は前回のものより悪かった。
映画の「あしたのジョー」は1980年にアニメで公開され、1981年にも「あしたのジョー2」が公開された。これらはアニメで2時間以上も放映された(このようなアニメはそれまで例が無かった)。反応については不明。
その後、原作の完結の影響により新たな「あしたのジョー」は出ていない。
(私としては丹下段平に代わり、ジョーがトレーナーになって新たなジョーを作るストーリーはいかがなものか)
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台本と実際の映画との違い

実際の台本とは映画で出ていない場面があった。上映時間の関係だろうと思われるが、その場面を紹介したいと思う。
(1)ドヤ街の空き地で丹下段平(辰巳柳太郎)は殴られる事によって小遣いを稼ぐ商売をしていたが、殴るのは矢吹丈(石橋正次)以外に1人ではなく2人いた。
(2)丹下段平の働いていた工事現場で映画ではオバサンがお茶を配っていたが、労務者が配っていた。
(3)台本では丹下段平と青山(小松政夫)が出会う場面があったが映画ではカットされている。

(4)台本では力石徹(亀石征一郎)と力石の出所前にジョーと決闘を行うが、最後に段平と白木葉子(高樹蓉子)が出てくるが、実際は出ていない。
(5)ジョーの出所場面が台本にはあるが、実際には無い
(6)ジョー達3人を白木ジムへ入れようとしたが、ジョーが断る。その後、台本にはその帰り白木ジムの階段で丹下段平にジョーが殴られる。

力石役の亀石征一郎と力石のトレーナー役の中山昭二の関係

力石役の亀石征一郎と力石のトレーナー若山役の中山昭二は1962年に日本テレビで放映された「ヘッドライト」と「特別機動捜査隊」で共にコンビを組んで共演している。両方とも中山昭二が上司で出演している。これらのコンビによりこの映画で中山昭二が選ばれたのではないかと思われる。
この後、彼等の共演は少なくなったが・・・

実は中山昭二は1957年に「怪談 昇り竜」を監督した石井輝男の初監督作品である「リングの王者 栄光の世界」で主人公役の宇津井健のトレーナー役で出演していた 。
    
    「リングの王者 栄光の世界」出演時の中山昭二
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その他

(1)「あしたのジョー」の実写映画は上映時間の関係からか、原作とはかなり異なる部分がある。それを以下に述べる。
・ジョーと丹下段平との最初の出会いの場面は、段平がジョーに殴られ、段平 が金を稼ぐ部分だったが、原作は酔っ払って寝ている段平をジョーが誤って 踏みつける。
・ジョーと葉子との出会いは原作では家庭裁判所。
・葉子は特等少年院にボクシング用具を一式寄贈しているが、その前に演劇 で少年院へ慰問に訪れている。
・原作で、ジョーと力石は特等少年院のリングで戦っている。
・白木幹之介は白木葉子の父ではなく、おじいさん。

(2)実写版「あしたのジョー」でなんと言っても亀石征一郎の力石がすばらしく迫力があった。あの重厚な演技と声がなんとも力石らしい。

(3)この映画は2本立てで上映されたが、もう1本が「反逆のメロディー」だった。「あしたのジョー」は試写会から想像すると、子供向けだった様に思う。正直言って不吊り合い(これもはやらなかった原因か)。どうせいなら「くたばれ親父」と一緒に上映すると良かったように思う。これは同じスポーツを主題にしているし、子供向けなため。

(4)実写版「あしたのジョー」の撮影は特等少年院が久里浜少年院、スタジオは完全な日活作品でなかったために、国際放映で行われた。国際放映でこの後高樹蓉子は「美しきチャレンジャー」、「(火曜日の女シリーズ)男と女と」、「愛の戦士レインボーマン」に出演する。

(5)この映画を作るに当たり、日本ボクシング協会の後押しがあっても良かったと思う。「舞台のあしたのジョー」ではファイティング原田が応援に駆けつけていたし、ボクシングを石橋正次に教えた関係から、ファイティング原田を映画にゲスト出演をさせても良かったのではないだろうか。そうすれば以外に盛り上がった作品になったのではないだろうか。

(6)高樹蓉子は「あしたのジョー」に出演して以降の映画はそんなに大きな大役が無い。どうしてなのか。もう少しじっくり使わないと意味が無かったのでは。このころの日活は新しい人をしっかりと育てようとしていなかったと思われる。まるで今の読売ジャイアンツのようだ。これでは映画事業がおかしくなるのも当たり前だ。
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