不動産の購入に即決は禁物
どうも千日です。マイホームの購入を検討されている方に是非知っておいて頂きたい注意点をまとめました。
不動産取引ってなんか怖そう…と、漠然と思われているんですが、常識的なポイントを知った上で名の通った仲介業者を通して取引する分には必要以上に怖がる必要はないです。
傍から見ていて一番怖いのは『見た目と売り手の話だけを聞いて即決する』ということですね。
目に見えないところ程、大事なポイントが隠されているからです。そういう部分はすぐに発見できません。
そして、不動産の購入にあたって売り手がアピールする殆どの部分が目に見える部分です。
- 立地の利便性
- 設備の先進性
- デザインのカッコよさ、などなど
不動産の検討では、売り手のアピールポイントをいくら検討しても十分とは言えません。むしろ、売り手が隠したいウィークポイントをどれだけ把握できるかにかかっています。
つまり、隠れている瑕疵(かし)や目には見えない権利関係です。
こういう事は、
- いくらパンフレットを穴のあくほど見ても見えてきません。
- また、前提となる知識が無いまま営業マンのセールストークを受け身で聞いていても分かりません。
ですから、不動産の購入にあたっては、けしてその日のうちに即決するなんてことはしてはいけないんです。
必ず一度持ち帰り、いろんな方面からその物件についてソースの異なる調査を行い、出てきた疑問について営業マンにぶつける、ということを何度となく行うことが必要です。
つまり
不動産の購入に即決は禁物です。
この後の節でもいろいろな格言をご紹介しますが、最終的にはこの格言に行きつくような大原則です。
掘り出し物に良物件なし
不動産の流通は相対取引です。
売りたい人と買いたい人がいて、双方の納得のいく条件と価格で取引が成立するんですね。さらに、対象となる商品は不動産で、同じ物は2つと無いんですよ。
ですから、一応の相場のようなものはあっても、必ずしもその値段で取引されるとは限らないです。
- 買いたい人が『どうしても欲しい』という需要が強ければ、相場よりも高い値段で取引されます。
- 売りたい人が『どうしても売りたい』という需要が強ければ、相場よりも安い値段で取引されます。
相場よりも安く購入できる場合というのは、売りたい人が『どうしても今売りたい』という場合なんです。
しかしバカじゃありませんから、足元を見られるようなことは自分から言ったり、仲介業者に言わせたりする訳ないですよね。
ですから、不動産広告の『掘り出し物』という売り文句は、上記のような事情で安いのではなく『値段相応の安い物件』という意味です。
- 近隣相場よりも安い=掘り出し物
これは『近隣の通常の物件に対して明らかなウィークポイントがある』ということを意味します。不動産にワゴンセールなんて無いんです。
冷静になって考えたら当たり前ですよね。
どうしてもその立地でその値段でなければ買えない、という場合は『なぜ安いのか?』という理由をトコトンまで調べつくす必要があります。
ワゴンセールのパンツなら、ゴムが伸びてしまっても雑巾に出来ますけど、家はそうはいきません。
では、どんな場合に相場より安くなるのか?について幾つかのケースをご紹介して行きましょう。
これを読めば『確かに安かろう悪かろうだな』ということがご納得頂けると思います。
マンション築25年、戸建て築20年
これを見てすぐピンと来る人はなかなかの人ですヨ。住宅ローン控除を受けられる中古住宅の築年数の年限です。
住宅ローン控除の正式名称は『住宅等借入金特別控除』といい、各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税からマイナスする減税制度です。
新築・中古住宅の購入又は要件を満たすリノベーションやリフォームをして6カ月以内に住み始め、住宅又はリフォームローンを借りている人は、以後10年間の各年の所得税から年度末の借入金残高の1%の額を控除することが出来るんです。
借入が3,000万円で35年ローンなら約250万円の収入になります。
そして、中古住宅の場合は家屋が建築された日から取得の日までの期間が20年(耐火建築物については25年)以内であること、という条件があるんです。
つまり、売っている時点で中古マンション築25年、戸建て20年ということは、ギリギリ住宅ローン控除を受けられるか受けられないかの境目ということです。
近隣相場よりも200万円位は安くて当然、ということです。
じゃあ、中古住宅でマンションなら築25年、戸建てなら築20年以上の物件は買わない方がいい?
多分、ほとんどの人はここまでで考えるのをやめます。
知っているか知らないかだけで数百万円も変わってくる
法律は端から端まで読まなければだめですよ。築年数が超えていても住宅ローン控除を受けられる可能性は残されています。
法律の全文を書くとこうなります
(1)次のいずれかに該当すること
- イ)家屋が建築された日から取得の日までの期間が20年(耐火建築物については25年)以内であること。
- ロ)地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの(耐震基準)に適合する建物であること。
- ハ)イ)又はロ)の要件にあてはまらない家屋で、その家屋の取得の日までに耐震改修を行うことについての申請をし、かつ、居住の用に供した日までにその耐震改修により耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること。
ロ)とハ)の条件だって使って良いんですよ。
つまり、ちゃんとした建物であれば『耐震基準適合証明書』を取得して住宅ローン控除を受けることが出来るんですよ。費用は概ね5万円から10万円位です。
どうでしょうか?
税制を十分に知らない不動産会社の営業マンはゴロゴロいます。
インターネットで住宅アドバイザーの肩書で寄稿している人物でも住宅ローン減税を誤解したまま記事を公開してます。下記のような記事です。
マンションなら築25年まで住宅ローン控除が受けられる。従って築15年を超えると残りが10年を切ってしまい、ローン控除を受けられる期間が減っていく。
これは明らかな間違いです。取得時点で築25年以内であれば10年まるまる控除を受けられます。
- 築年数を見逃してもダメ
- 築年数だけで判断してもダメ
十分に情報収集した上で判断するかしないかで何百万円もの違いが出てくるんですよ。
不動産の購入に即決は禁物
この例だけでも、この格言の重みが見えてきたのではないでしょうか。
専有面積50㎡の1LDK
ついでなので、住宅ローン控除からもう一つご紹介します。住宅ローン控除を受けるための条件として床面積が50平方メートル以上の家屋であることが求められます。
壁芯面積が50平方メートル以上でも、内法面積が50平方メートル未満の場合は住宅ローン控除を受けられません。
マンションのパンフレットに載っている専有面積は普通は壁の中心から内側の面積(壁芯面積)です。
柱が1本で約1平方メートルです。もし、壁芯面積で50平方メートル代の前半であれば、内法面積では50平方メートル未満である可能性が高いですね。
注意が必要です。
建築基準法に違反した中古住宅のデメリット
建築基準法の改正や用途地域の見直し等による不可抗力はもちろん、増改築を行ったことで容積率・建蔽率オーバーとなった中古物件はかなりの数存在します。
こういう物件を既存不適格物件と言います。
建築基準法の大きな改正としては1981年(昭和56年)の耐震基準改正があり、これ以降のものを『新耐震基準』と呼んでいます。
これ以後であっても細かな改正が行われており、比較的新しい建物であっても既存不適格物件になっている建物もあります。
建築基準法に違反しているということは、重要事項説明として伝える必要がありますので、このこと自体は隠される心配はありません。
そのことによって具体的にどんなデメリットがあるかということをよくわかっておく必要があるんです。
建て替えすると今の建物よりも狭くなる(セットバック)
購入後に建物自体を建替えたいという場合、容積率・建蔽率・斜線制限に違反していた場合は、元と同等の規模の建物にすることは出来ません。
町中で結構古い一戸建てが建て替えられずに残っているのをよく目にしますよね。何で建替えないのか?理由は建替えると同じ条件の建物を建てられないからなんです。
後で建替えればいいか。
と思っても、建替えると今よりも狭くなってしまうのは避けられません。
住宅ローンの審査が厳しくなる(建築基準法に適合していない)
住宅ローンの審査基準として、建築基準法に適合しているかという項目があります。建築物がその許容範囲を超えた違反であった場合は、融資の対象外となってしまいます。
つまり、土地の担保価値までしか融資されません。建物はむしろ『障害物』扱いとなってしまうんです。
行政から是正措置を命じられる可能性
具体的な例はあまり聞いたことがありませんが、違反した建物である以上、その所有者に対して行政から是正措置を命じられる可能性は否定できません。
私が増改築したんじゃなくて、買っただけです。
なんて言い訳は通用しません。
建物の違反についてはその所有者が責任を負うのです。
知らずに買ってはいけない立地適正化計画の区域外
どうせなら価値の上がるマイホームを買いたいですね。そんなの誰にもわからない?いいえそうでもありません。少なくとも確実に下がることが決まったような地域は存在します。
なぜそんなことが言えるのかというと、国土交通省が平成26年8月に施行した改正都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画が理由です。
立地適正化計画=コンパクトシティ•プラス•ネットワーク
- 居住誘導区域に緩やかに住民の居住エリアを誘導していく
- 都市機能誘導区域に医療、福祉、商業施設を誘導していく
- 拠点間を結ぶ交通サービスを充実させる
今後、地方都市では高齢化が進んで福祉や医療費の増加は避けられ無いんですが、一方で働き手になる若年層の人口は減少してます。
一方で大体の地方都市は高度成長期に拡大路線を取って膨張して来たんです。効率が悪い。そこでこれをコンパクト化して効率化しようというのが狙いなんです。
国土交通省のパンフレットより
薄い緑色の範囲に疎らに広がった居住区域を立地適正化計画区域にして、それを水色の区域にギュッと凝縮しようということなんですね。
これから知らずに居住誘導区域外の地域にマイホームを購入してしまったら…?
居住誘導区域外ではマイホームを買った時には近くにあったはずの市立病院は無くなり、バスの停留所も無くなり…という状態になっていくのです。
下記は平成28年3月31日現在で立地適正化計画の作成について具体的な取り組みを行っている276都市です。
下記のリンクから一覧を閲覧できます。
都市計画:立地適正化計画作成の取組状況 - 国土交通省
主婦が住みたい街Best20の1位の神奈川県藤沢市と3位の兵庫県西宮市も計画中ですね。
下に参考としてBest20の都市とそのHQ指数(暮らし、家族、お金、健康•食事、モノ•趣味の5つの指標で点数化したスコア)を挙げてます。
◎は立地適正化計画の取り組みが決まっている都市です。
《参考》主婦が住みたい街Best20
- 藤沢市(神奈川県)132.0◎
- 稲城市(東京都)129.5
- 西宮市(兵庫県)127.5◎
- 三鷹市(東京都)123.4
- 松山市(愛媛県)121.3◎
- 福岡市(福岡県)121.1
- 生駒市(奈良県)119.4
- 守谷市(茨城県)119.3
- 新居浜市(愛媛県)117.5◎
- 広島市(広島県)117.1◎
- 大阪市(大阪府)116.9
- 三沢市(青森県)116.5
- 志木市(埼玉県)114.0◎
- 福山市(広島県)112.5◎
- 狛江市(東京都)112.3
- 京都市(京都府)111.6
- 菊川市(静岡県)111.1
- 豊海城市(沖縄県)110.6
- 浜松市(静岡県)110.6◎
- 山形市(山形県)109.4
まとめ
いかがでしたでしょうか。上記のことは全て公表されている公開情報です。つまり、知っていることを前提に取引されているんです。
しかし、知らない人にとっては、思いがけない情報だったりするのかもしれません。
- たまたま知らなかったけど、運よく回避できた。
- 知らなかったがために、落とし穴にはまってしまった。
どうしても知りえない情報については、あきらめるしかないです。
でも知ろうと思えば簡単に知り得た常識を知らないことで思わぬ落とし穴に落ちてないためには、ある程度の勉強も必要です。
ここまでを振り返って、まとめてみたいと思います。
1.掘り出し物など絶対に無い
不動産に掘り出し物なんてありません。全て価格に反映されています。周辺相場よりも安い物件には、必ずそれなりの問題があるんです。
掘り出し物だ、なんて口にする営業マンはまず信用してはいけないということです。
2.情報収集は信頼できるソースから
特に税法は毎年少しずつ変わっていきます。確実を期するべく営業マンの話だけでなく、インターネットや住宅情報雑誌(最新号)などから2重3重に行うようにしましょう。
3.物件は必ず現地確認し、より多くの物件を見て目を養う
必ず現地調査をします。周辺の環境も含め、時間帯を変えて最低3回から4回は見ておくべきです。
相場よりも安い高いを判断するのには、相場観を養う必要があります。そのためには多くの物件を見る必要があります。やがて自分なりに、物件の良い面と悪い面を判断できるようになってきます。
以上、千日のブログでした。
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