昨今のマッサージは低価格のものが流行っており有難い話だ。三千円で1時間の幸福が買える。しかしながら安かろう悪かろうの店もやはり存在し、そういう店に入店しようものなら大変だ。ソコジャナイスイッチを延々と押しやがる。勘弁してくれ。餃子専門店に行って餃子が食えないみたいな話だ。皮が包めないなら餃子専門店なんて辞めちまえ!!!
だから私は店を決めている。その店は約9割の確率でマッサージが上手い。1割くらいなら目を瞑ろう。先日その店に行った。最近また遠方が多いので身体はボロボロだ。入店し、私を受付してくれたのは私が一番プロだと賞賛しているオバサン。良いヒキしてやがるぜおちょい!私は鼻歌交じりでマッサージ用のTシャツに着替えた。
マッサージ用穴あきベッドに案内され、私ぐらいになると最初からうつ伏せに寝転んであんま師を待つ。至福の時だ。そしてあんま師は現れ私に問うた。
「今日はどこがお疲れですか?」
「!?」
私は耳を疑った。声が若い。私が期待していたオバサンは酒焼けしたガラガラヘビみたいな声をしている。しかし今私に話し掛けたのはロリ系の若い女だ。声なんか知らんが篠崎愛が頭に浮かんだ。ファッション的な所では喜ぶべき事態だがここはリラクゼーション的な場所。クソ!これでは期待出来ない!しかし私は「チェンジ」を言い出せないチキン野郎。諦めよう。私はうつ伏せに寝ながら絶望の淵にいた。
しかしどうだろう。良い。良いじゃないか!ツボを理解している。私のツボと彼女の指圧が一体化している。うむ。やはり今日はヒキが良いようだ。安心して施術を受けていると、頭に胸が当たっている。胸が当たっている?平常心を保ておちょい。お前はもう枯れたジジイだ。無を貫け。私は心の中で般若心経を唱え、平常心を保った。そして顔にタオルを掛けられながら仰向けに。
「!!!!!」
何が起こっているのだ。仰向けにされてから両手を上げろと要求されたので上げると、脇のリンパをマッサージされている。それは良い。その両手を何かで挟んで固定している。今両脇のリンパをマッサージされているわけだから手ではない。
「股間」
私は両手を股間で固定されている。なんのプレイなのだ。何のプレイなのだ!!!私は心の中で叫んでいた。ここはリラクゼーションだろう!ファッションではないはずだ!ふざけるな!クソ!リラクゼーションに集中出来ないじゃないか!私は心の中で泣いていた。煩悩だらけの自分に。いつからこんな情けない男になったのだ。しかしここで私が「もうやめてください!」なんて叫んだら完全に病気である。意味が分からない。諦めよう。彼女に身を委ねよう。たまには煩悩に溺れるのも良いじゃないか。人間だもの。
気が付くと私は眠りについていた。「凄い凝ってましたねー。」という彼女の声で私は目が覚めた。そうか寝てしまっていたのか。私は起き上がり、ベッドに腰掛け、最後のストレッチに入っていた。まるで夢を見ていたかのような感覚に陥ったが、話す声は最初の彼女のロリ声だ。夢ではない。身体がフワフワしている。良い時間を過ごさせて貰った。色々葛藤があったが、楽になった身体を確認し、彼女にお礼を言おうと思った。私は振り向き、まだ見ぬ彼女の顔を見てお礼言った。
ありがとうございました