「自分で稼いで食べているわけでもない子供に下手に『権利』なんて覚えさせちゃ駄目よ! ろくな大人にならないわ」

 日本会議政策委員の百地章・日本大学教授が監修した冊子「女子の集まる憲法おしゃべりカフェ」には、47歳の主婦が、こんなふうに叫ぶ場面がある。

 大人の従者とみて導くか。独立した権利の主体とみるか――。二つの「こども」観の対立が各地で起こっている。

 東京都日野市の元市議の渡辺眞(ただし)氏は2006年ごろ、日本会議の地方議員ネットワークで呼びかけ、自発的に「子供権利条例に反対する全国地方議員の会」を結成。地方議員50人以上が加わり、情報交換した。

 渡辺氏が危機感をもったきっかけは、「子どもの権利」で著名な大学教授が、同市に講演に来たことだった。「子供にも当然権利があると思うが、子供権利条例がいう『ありのままの権利』や『意見を尊重される権利』などは、子供の未熟な欲望を拡大してしまう」と感じた。

■「自然発生的」な反対運動

 激しい反対運動で、権利条例が11年に頓挫した広島市。運動の中心になったのは、「『広島市子ども条例』制定に反対し子供を守る教師と保護者の会」だ。日本会議広島に事務局を置くが、PTA連合会のOB会や教員団体など20団体以上が名を連ね、署名活動などをした。この会の代表は、元全国高校PTA連合会長で、一般財団法人「日本教育再生機構」理事の女性だ。

 日本教育再生機構の理事長八木秀次氏は当時、「危ない!『子どもの権利条例』」と題した冊子やDVDを作成。反対運動の参考資料になった。だが、憲法24条の改正なども訴え、日本会議の主張と近い八木氏も、「日本会議の役員ではなく、講演や原稿の執筆を依頼している」(日本会議)だけだという。