バリー・ボンズがイチに贈った、15個のヒット球
マーリンズのバリー・ボンズ打撃コーチ(51)は、イチローにとって9歳上ながら、96年の日米野球時代から同じグラウンドで戦った“戦友”でもある。今季の復活劇の一翼を担った人物。メジャー記録の通算762本塁打の記録保持者でありながら薬物疑惑で球界のヒール役だった同コーチがイチローの素顔を語った。
ボンズは常々、イチローについて「教えることは何もない。彼が状態良く試合を迎えるために見守っていくことが仕事」と話す。打撃技術などを指導することは、もちろんない。打撃練習中に時々、言葉を交わす姿は、一流を極めた打者同士だけが分かり合える領域にみえる。
開幕後、ボンズはイチローに約束した。「できるだけ安打のボールを取ってあげる」。メジャー3000安打が射程に入った最近になってMLB機構がイチローの安打のボールを回収。本物であることを示す認証シールが貼られている。開幕当初はそれがなかったため、ボンズが約15個のボールをゲットしてイチローに手渡していた。イチローは「記録と向き合った人だから気持ちが分かる。ボンズの場合は全部外に出ちゃう(本塁打)から回収できないんだけど、僕の場合は内側だから」と笑顔で感謝の言葉を口にしている。
最高の理解者がそばにいる心強さは、今季のイチローの好調につながっている。「努力に努力を重ねてここまで来たんだ。寄付してもいいし、親しい友達やファンにあげてもいい。ガラスケースに入れて飾って楽しむのもいい。他の誰でもない、彼だけがそれをするにふさわしい」
数々の記録を打ち立てたボンズだからこそ、記録に挑戦する過程と数字の重さを理解し、サポートを続けている。
とはいえ、ボンズは日米通算記録はあくまで“参考記録”と考えている。だからこそ日本球界に向けて、海外FA権の取得期間の短縮を提言する。
「安打王はローズ。イチローの記録もそれに匹敵するがね。彼にとって残念なのは全ての安打をメジャーで打つ機会に恵まれなかった。日本人がイチローのような逸材を見つけたなら、その選手は直接こっちでプロにならなきゃ。彼のような選手は一生に一度、現れるかどうかという逸材。(海外FA取得期間となる)9年も(日本球団が)保有してはいけない」
ボンズが面白い企画を提案した。イチローとローズの“4000本対談”だ。
「私がどうやっても届かなかった安打数。安打を打つことに関して、この2人が座談会をしたら面白いと思う。僕だって聞きたいよ」。1941年に最後の4割打者となったテッド・ウィリアムスが80年代半ば、当時の安打製造機W・ボッグスとD・マッティングリー(現マーリンズ監督)の3人で開いた打撃談議はスポーツ誌に掲載され全米で評判を呼んだ。実現すれば、それ以上のインパクトとなるのは間違いない。(一村 順子)
◆バリー・ボンズ 1964年7月24日、通算332本塁打のボビー・ボンズの長男として米カリフォルニア州に生まれた。51歳。強打の外野手として85年ドラフト1巡指名でパイレーツ入り。93年からジャイアンツにFA移籍。2007年までの22年間で2986試合に出場、01年に新記録の73本塁打を放つなど通算762本もメジャー記録。MVP7回、首位打者、本塁打王各2回、打点王1回。薬物疑惑もあって殿堂入りは果たしていない。今年からマーリンズの打撃コーチに就任。188センチ、109キロ。左投左打。