明窓 :  夢の超特急 　山陰新幹線開通へ−。東京都内で、そんな議論が盛り上がっている。５月には山陰両県を含む日本海側５府県の自民党国会議員が「山陰新幹線を実現する国会議員の会」を設立した▼会長に就いた石破茂地方創生担当相が「今やらないと駄目だ」と強調した理由の一つが、北陸新幹線の未着工区間・敦賀（福井県）−大阪間のルート決定だ。国が年内にも判断するルート次第で共有できる区間が延びれば、建設費が圧縮され、現実味が増す▼両県など７府県の４９市町村長らは早速動いた。石破氏に京都府北部を経由するよう後押しを要望。副会長の松浦正敬松江市長は「今後の日本の強靱（きょうじん）化政策でも意味がある」と訴えた▼大阪市から鳥取、松江両市を経て下関市を結ぶ山陰新幹線の基本計画は国が１９７３年に決定し、いつかは造るという約束の状態にある。そもそも半世紀近く経て計画通り整備された新幹線は全国で３割程度。本州では太平洋側は整備が進み、その沿線だけは産業振興による人口流入という果実を享受した▼内閣官房参与の藤井聡氏によると、山陰、北陸、羽越、上越の４新幹線を組み合わせると日本海側国土軸が形成され、鳥取−金沢間は２時間強でつながるという▼新幹線の駅まで２〜３時間かかる上、金沢や新潟に行くには大阪や東京を経由せねばならない現状は当たり前でいいのか。財源や整備方式など課題は山積するが、「裏日本」という呼ばれ方を返上する好機。熱意の先に夢の超特急のレールは敷かれる。　（敬） ('16/06/18 無断転載禁止) << しつけと押しつけ