英 EU残留支持の女性議員 銃撃され死亡 男を拘束

英 EU残留支持の女性議員 銃撃され死亡 男を拘束
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来週、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票が行われるイギリスで、16日、EUへの残留を呼びかけていた女性の下院議員が銃で撃たれるなどして死亡し、警察は、現場近くで拘束した男から事情を聴いて動機などを調べています。事件を受けて、国民投票で残留を支持する団体と離脱を支持する団体はともに、運動をいったん中断する考えを明らかにし、国民投票に向けた運動にも影響が出ています。
イギリス中部ウエストヨークシャー州の図書館の前で16日午後1時ごろ(日本時間午後9時ごろ)、野党・労働党のジョー・コックス下院議員が男に銃で撃たれたあと刃物のようなもので刺されました。コックス議員は、病院で手当てを受けていましたが、地元の警察は、コックス議員が死亡したと発表しました。

警察によりますと、近くにいた77歳の男性もけがをしたということです。警察は、現場近くで52歳の男を拘束するとともに銃などを押収しました。

コックス議員は、ウエストヨークシャー州出身の41歳で、本人のフェイスブックによりますと、今月23日に行われるEUからの離脱の賛否を問う国民投票では、EUへの残留を呼びかけていました。今回の事件と国民投票との関連は分かっていませんが、警察は、拘束した男から事情を聴いて動機などを調べています。事件を受けて、国民投票で残留を支持する団体と、離脱を支持する団体はともに、運動をいったん中断する考えを明らかにし、国民投票に向けた運動にも影響が出ています。

コックス議員は41歳 2児の母親

ジョー・コックス議員は、イギリス最大の野党、労働党の下院議員で、去年行われたイギリスの総選挙で初めて当選しました。コックス議員の公式サイトによりますと、ウエストヨークシャー州出身の41歳で、2人の子どもがいるということです。

コックス議員のフェイスブックによりますと、今月23日に行われるEU=ヨーロッパ連合からの離脱の是非を巡る国民投票では、EUへの残留を呼びかけていました。フェイスブックの写真では「EUに残留するよう投票しよう」と書かれたプラカードとともに、「EUからの離脱は、イギリスの経済や雇用、地方の人たちのビジネスや地域社会を不安定にするだろう。私たちは、EUの中でイギリスをより強く、より安全によりよくするために残留を訴えていく」とコメントしています。

双方の団体が「運動中断」

イギリスで女性の下院議員が男に銃で撃たれるなどして死亡した事件を受けて、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票で残留を支持する団体「ストロンガー・イン」はフェイスブック上で、「コックス議員はよい友人で、すばらしい女性であり、熱心な活動家だった。今回の悲劇は活動に携わるすべての者に衝撃を与えた。われわれは16日から2日間、活動を一時、中断する」という声明を出しました。
また、離脱を支持する団体「ボート・リーブ」もツイッター上で「運動を一時、中断する。コックス議員の家族に心よりお悔やみ申し上げる」という声明を出しています。

英首相「悲劇的で恐ろしい事件だ」

イギリスで女性の下院議員が男に銃で撃たれるなどして死亡した事件について、キャメロン首相は「悲劇的で恐ろしい事件だ。夫と2人の子ども、ご家族のことを心配している。熱心に政治活動に取り組む思いやりのあるすばらしい議員だった」とコックス議員の死を悼みました。そのうえで、「国民投票の運動を中断するのは正しいことだ。すべての人たちが、悲痛な思いをしているご家族と選挙区の方々に思いを寄せている」とコメントしています。

英議事堂前でコックス議員を追悼

イギリスの議会議事堂前にある広場には亡くなったコックス議員の写真が置かれ、若者などが次々に訪れて花を手向けていました。
訪れた人たちは、コックス議員がシリア難民の支援などに取り組んでいたことから「シリアや人道支援のために力を尽くしてくれたことに感謝します。私たちはその思いを引き継いでいきます」などとメッセージボードに書き込んでいました。訪れた女子大学生は「コックス議員は情熱があり、温かい心を持ち、暴力と闘う人でした。私は移民を排斥したり人種差別を行ったりすることが嫌なので、国民投票では必ず『残留』に入れたいです」と話していました。
また、30代の男性は「とても悲しく、イギリスの歴史にとってターニングポイントになったと思う。国民投票にどう影響するかは分からないけれど、移民問題などに取り組んできた彼女の意志が引き継がれることを望んでいます」と話していました。