自閉症を体験できる?阪大と東大が開発中の「自閉症知覚シミュレータ」がすごい
2016/02/15 更新
自閉スペクトラム症の方々の見ている世界を疑似体験できる「ヘッドマウントディスプレイ型知覚体験シミュレータ」をご存知でしょうか?このシミュレータの研究開発に携わられている、大阪大学特任准教授・長井志江先生の講演に出席し、シミュレータ体験を通して息子の見ているであろう世界をのぞいてきました。そこから見えてきた息子の困難とは・・・
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自閉症の知覚体験シミュレータ
皆さんは、この名前を聞いたことはありますか?
大阪大学と東京大学が開発中のシミュレータです。
ヘッドセットを装着することで、自閉スペクトラム症の方々に世界がどう見ているかを体験できるものです。
自閉症の困りごとの一つに、「コミュニケーションが苦手」という社会性の問題があります。それは、定型発達の方からすると理解しがたい行動に出ることもしばしば。
その行動や問題の根底には「どのように見て、どのように感じるか」という感覚の違いがあり、その差を理解することで周囲の理解が深まり、支援の幅も広がっていくのでは、という視点で研究が進められているそうです。
大阪大学と東京大学が開発中のシミュレータです。
ヘッドセットを装着することで、自閉スペクトラム症の方々に世界がどう見ているかを体験できるものです。
自閉症の困りごとの一つに、「コミュニケーションが苦手」という社会性の問題があります。それは、定型発達の方からすると理解しがたい行動に出ることもしばしば。
その行動や問題の根底には「どのように見て、どのように感じるか」という感覚の違いがあり、その差を理解することで周囲の理解が深まり、支援の幅も広がっていくのでは、という視点で研究が進められているそうです。
実際に、息子の見る世界を体験してみた
5歳の息子は人混みが苦手で電車もショッピングモールもダメ。
それでも私は「もう少し大きくなって場に慣れれば平気になるのでは」と考えていました。
ところが、開発している大阪大学特任准教授・長井志江先生の講演でこのシミュレータを体験してからは、それは大きな間違いだったと反省しています。
白くまぶしい世界、色のないぼんやりした世界、ノイズが飛び交う世界に「慣れれば大丈夫」だなんて、とても言えません。
それでも私は「もう少し大きくなって場に慣れれば平気になるのでは」と考えていました。
ところが、開発している大阪大学特任准教授・長井志江先生の講演でこのシミュレータを体験してからは、それは大きな間違いだったと反省しています。
白くまぶしい世界、色のないぼんやりした世界、ノイズが飛び交う世界に「慣れれば大丈夫」だなんて、とても言えません。
(1)まぶしい世界
輝度によるコントラストの強調・高輝度化、と言うそうですが、私たちが雪山に降り立つと周囲が白くてまぶしい、と感じることがありますよね。
そういった状態が、日常生活でも起こり得るのです。
騒々しい場所や往来の激しい場所など、周囲の環境によって視覚に変化が起こるそうです。
この視覚変化が起こると、表情の判別どころか目の前にいる人が誰なのかもわからなってしまうと知りました。
園や学校で視覚変化が起こったら、授業を受けるのも人間関係を築くのも、とても難しいことだと感じました。
そういった状態が、日常生活でも起こり得るのです。
騒々しい場所や往来の激しい場所など、周囲の環境によって視覚に変化が起こるそうです。
この視覚変化が起こると、表情の判別どころか目の前にいる人が誰なのかもわからなってしまうと知りました。
園や学校で視覚変化が起こったら、授業を受けるのも人間関係を築くのも、とても難しいことだと感じました。
(2)色のない世界
騒音を耳にしたり、早い速度で動くものを見たときにも視覚変化が起こり、色が無くなり白黒に見える無彩色化や、ぼやけて見える不鮮明化と呼ばれる状態になっているそうです。
その例として電車がホームに到着する映像をみましたが、電車がこちらへ向かって、目の前を通り過ぎる際に、色が消え白黒の世界になります。そして、視界はぼんやりとするのです。
これでは乗車する電車の情報を得ることは難しく、スムーズに乗り換えができるとは思えません。
その例として電車がホームに到着する映像をみましたが、電車がこちらへ向かって、目の前を通り過ぎる際に、色が消え白黒の世界になります。そして、視界はぼんやりとするのです。
これでは乗車する電車の情報を得ることは難しく、スムーズに乗り換えができるとは思えません。
(3)ノイズのある世界
視野全体に砂嵐状のノイズが入ることがあるそうです。
この状態になる方はあまり多くないそうですが、片頭痛患者にも類似した症状が出るそうで、片頭痛もちの私はこれをよく経験します。
チカチカとした砂嵐状のノイズのせいで、とても目を開けて普通に過ごせる状態ではありません。
周囲の環境によって、この砂嵐が出てくるのだと思うと、積極的に外出する気にはなれないと感じました。
この状態になる方はあまり多くないそうですが、片頭痛患者にも類似した症状が出るそうで、片頭痛もちの私はこれをよく経験します。
チカチカとした砂嵐状のノイズのせいで、とても目を開けて普通に過ごせる状態ではありません。
周囲の環境によって、この砂嵐が出てくるのだと思うと、積極的に外出する気にはなれないと感じました。
「大丈夫だよ」ではない対処法を
特定の交差点に差し掛かると必ず「まぶしい」と怖がり抱っこを要求する息子。
彼に必要なのは「大丈夫だよ」という言葉かけではなく、帽子を目深にかぶらせて目から入る情報を減らし、耳を塞いで刺激を遮断してあげることだったのです。
このシミュレータを利用した体験は、私にとってとても大きな気づきになりました。
自閉症の息子には、私たちが体験したことのない、とても過ごしにくい世界にいたのです。
彼の見えている世界を少し体験したからといって、全ての困りごとを解消してあげられるわけではありませんが、少しでも理由がわかるとサポートの方法も変わってくるものです。
みなさんも、もし知覚体験シミュレータを利用できる機会があればぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
彼に必要なのは「大丈夫だよ」という言葉かけではなく、帽子を目深にかぶらせて目から入る情報を減らし、耳を塞いで刺激を遮断してあげることだったのです。
このシミュレータを利用した体験は、私にとってとても大きな気づきになりました。
自閉症の息子には、私たちが体験したことのない、とても過ごしにくい世界にいたのです。
彼の見えている世界を少し体験したからといって、全ての困りごとを解消してあげられるわけではありませんが、少しでも理由がわかるとサポートの方法も変わってくるものです。
みなさんも、もし知覚体験シミュレータを利用できる機会があればぜひ体験してみてはいかがでしょうか。
※記事中の画像はイメージです
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この記事を書いた人
GreenDays
8歳の娘、6歳の息子。
ともに自閉症スペクトラムと診断済み。
アスペルガー要素の強い娘。
ADHD要素が強く、協調性発達障害を抱える息子。
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