蹴球探訪
奇跡の初優勝見えた レスター・岡崎が激白「試合後はいつも悔しい」(4月27日)
【大リーグ】オリックス時代のコーチ、新井宏昌さんが語るイチロー2016年6月17日 紙面から
イチローのローズ超えを、オリックス在籍時の打撃コーチ、新井宏昌さん(64)が祝福。自らの発案で改名したエピソードを交えつつ、高い打撃技術をあらためて称賛した。 −イチローとは最近も交流があるそうだが 「毎オフ、神戸の打撃練習で投げさせてもらう。彼には独特の動きや捉え方があって、面白い。私の投げるテンポが速くて、特にいい感じで打った後には『ちょっと待ってください、打球を見させてくださいよ!』と。彼には彼のリズムがある(笑)。そんな打球の飛び方も含めて、2月に数回見た限りではことしは例年以上に状態が良さそうだった。『殿堂入りに向けて、ローズを超えて、3000本も』と声を掛けると『それもモチベーションにします』と言っていた」 −そんな「イチロー」の名付け親が新井さんとか 「仰木監督も、コーチの私も1年目だった1994年。3月下旬の中日とのオープン戦で、彼が満塁ホームランを打って。それまでも活躍していたが、あの1本でもう間違いないと思った。何があっても開幕からスタメンで使い、登録名は『鈴木はたくさんいますから、下の名前でいきませんか?』と監督に提案した。実際、周りから『一朗』と呼ばれていたし。当時のオリックスは全国区のスターを求めていて、彼はうってつけ。パ・リーグの宣伝部長を自任していた監督も大乗り気だった(笑)」 −開幕後、すぐに期待通りの活躍を見せた 「想像をはるかに超えていた。糸を引くような打球を飛ばし、いずれはスターになる予感はあったが、いきなりあそこまでとは思わなかった。当時は振り子に例えられた独特のタイミング。われわれ(首脳陣)は対戦が増えれば増えるほど、相手が対策を練っていろいろやってくると考えていた。実際その通りだったが、彼にはそれを上回る対応力があった」 「頭のいい選手だが、それだけじゃない。子供のころからボールを延々と打ってきたし、神戸の合宿所では気が向いたら真夜中でも。だから当時から引き出しは相当あった。それに誰よりも野球が好きだから、探求心は底知れない。オリックスでは対戦相手のチャートが選手に配られたが、20歳の彼は貪欲に投手の特徴などを直接スコアラーに聞いていた」 −その年、プロ野球新(当時)の年間210安打。それまでの130試合制での最多安打は新井さんの184安打 「私が張本さんのプロ野球記録182安打を抜いた時、この記録は今、自分が目の当たりにしている選手には抜かれないと思った。でも彼がブレークしたら、この選手になら抜かれても仕方がないと(思った)」 −ブレークから数年は振り子打法。その後、フォームはいろいろ変わった。一時はケン・グリフィーJr.(元マリナーズなど)のように背中を伸ばす構えもあった 「早くから米国にいきたい思いがあって、その指向が似せた打ち方になったのかも。あの時は監督も困って『おい新井、あれ、どうにかせーよ!』と。でも、数字自体はそんなに悪くなかった。あの時に限らず、私から事細かく指導したことはない。わずかなステップの動きや『構えが固い』ぐらい。言ったところで彼は聞かないし、こだわりもあるから」 −こだわりの塊のような打撃。“詰まらせてヒットを出す”という言い方もする 「ことしの2月、『バットは内から出す意識をしてるの?』とたまたま聞いた。彼は『変化球のいい投手には追い込まれた時にそうする』と話していた。得意なその球を引きつけて、打ち返したい。そんな時に速い球がくれば当然詰まるが、それは織り込み済み。詰まってもバットの出が良ければ、三塁の頭上を越えるという。バットの出方は内から外。究極といっていいほど、ギリギリまで開かない」 −詰まることを嫌う打者も多いが 「彼は追い込まれるまでは詰まりたくない、追い込まれたら詰まってもOK。意識をがらりと変える。投手のタイプや状況によっても自在で、卓越した技術でカバーできるゾーンは内外、高低、前後とも極めて広い。時にはショートバウンドのボールまでヒットに。彼のストライクゾーンは大きくて立体的だ」 −そんなイチローも現在42歳 「信じられない。脂肪がついてないのが何よりすごい。体もプレースタイルも昔から不変。バットスピード、走るスピード、スローイングのスピード…。決してがむしゃらではない、持ち前のきれいなスピードに今もあふれている。50歳までやると公言しているが、やらせてもらえる環境があれば、十分できる」 −プロ野球選手の引退時期は 「選手は目で得た情報を脳から全身に送る。その回路がずれたり遅れるようになると厳しい。私の場合、狙った真っすぐを捉えにいって空振りした。それが1試合の中で2、3度。辞める年は何試合もあって潮時と思った。実は2、3年前のイチローには数こそ少ないが似たような感じがあった。ことしは全くないし、三振も減っている。思えば神戸自主トレでも、一緒に練習する川崎(カブス傘下3Aアイオワ)が打っている時、外野で懸命に打球を追いかけていた。感覚を衰えさせないようにいろいろやって、盛り返そうとしていたのかもしれない」 −次は大リーグ3000安打 「時間の問題でしょう。あとは打率。彼の数字で、頭に『3』がこないとらしくない。ことしは3割台を維持してほしいね」 PR情報
|