米民間シンクタンク「北核兵器除去シナリオ」衝撃の中身

■ピンポイント攻撃は現実として限界があるが北朝鮮は緊張

 リポートの4章と5章には北朝鮮による報復攻撃のシナリオと、それによる被害について予想している。米軍が軍事攻撃に出た場合、北朝鮮は長射程砲や生物化学兵器、短距離ミサイル、特殊部隊による後方への侵攻、サイバー攻撃など可能な手段を全て動員し、韓国と日本に報復攻撃を加えてくるだろう。リポートはこの報復攻撃のやり方やそれに伴う被害状況についても分析を行っている。

 ちなみに韓国に対する北朝鮮の主力兵器とされる長射程砲の場合、それによる人命被害は数千人に上ると予想されている。一部では数万人以上の犠牲者が出るとの予想もあるが、リポートは北朝鮮が保有する武器の老朽化や不発弾の割合の高さから、被害者数の予測は難しいとみている。また米軍の物量攻勢で北朝鮮の核施設は間違いなく跡形もなくなるが、その場合でも戦線は引き続き拡大する可能性があるため、リポートは「米軍は北朝鮮の全ての戦力を一気に破壊する大規模戦争を同時に準備する必要もある」とも指摘している。

 ただし韓国の専門家は平時にピンポイント攻撃で北朝鮮の核施設を攻撃し核兵器を無力化することについて「現実的に難しいだけでなくリスクも大きい」と指摘する。

 報告書の予測とは異なり、北朝鮮の地下に隠された核関連施設については、韓米の情報当局が把握できていない秘密の施設も決して少なくないとの見方もあるため、爆撃による攻撃だけではどうしても限界があるということだ。韓東大学のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮の核攻撃能力はすでにレッドラインを越えた」とした上で「米国が在来式兵器でピンポイント攻撃を行ったとしても、北朝鮮は核兵器による報復能力を持ち続けるはずだ」と指摘する。

 それでも北朝鮮がこのリポートに神経質な反応を示す理由は、米軍がこの種のシナリオ通り攻撃する可能性が実際にあると考えているからだ。安全保障政策に携わるある韓国政府関係者は「かつてイスラエルがシリアの核施設に対してピンポイント攻撃を加えたように、北朝鮮も『米軍はいつでも核施設やミサイル施設を爆撃できる』と考えているはずだ」との見方を示した。北朝鮮が核兵器保有に執着することを受け、ワシントンで北朝鮮に対する強硬論が力を持ち始めていることも、北朝鮮が緊張する要因の一つだ。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者 , チョン・ヒョンソク記者
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