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【社会】石巻3人殺傷事件 元少年の死刑確定へ 裁判員裁判で初
二〇一〇年二月、宮城県石巻市で発生した男女三人殺傷事件で、殺人罪などに問われ、一、二審で死刑判決を受けた犯行当時十八歳七カ月だった元少年の被告(24)の上告審判決で、最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)は十六日、「少年だったとはいえ深い犯罪性に根差した犯行で、二人の生命を奪った結果は誠に重大」として、被告の上告を棄却した。裁判員裁判で審理された少年事件で、初めて死刑判決が確定する。 判決は裁判官五人の全員一致の意見。犯行時少年だった被告の死刑判決が確定するのは、山口県の光市(ひかりし)母子殺害事件(一二年確定)以来。永山則夫・元死刑囚(一九九七年執行)の第一次上告審判決で最高裁が死刑を判断する際の「永山基準」を示した八三年以降では、犯行時少年の死刑確定は七人目となる。 第一小法廷は、交際相手だった元少女を連れ戻すため邪魔する者を殺害した動機を「身勝手極まりなく、酌むべき余地はない」と指摘。「無抵抗の被害者を牛刀で突き刺すなどした冷酷、残忍な犯行で、一定の反省や謝罪の意思を表明しているが、死刑を是認せざるを得ない」と結論づけた。 上告審で弁護側は「少年の未成熟さが背景にある衝動的な犯行で、計画性もなかった」などと主張し、死刑回避を求めていた。 一審仙台地裁の裁判員裁判判決は「残虐さや被害結果が重大で、年齢はことさらに重視できない」として求刑通り死刑を言い渡し、二審仙台高裁も支持した。 判決後に記者会見した被告弁護人の草場裕之弁護士は「少年の成育歴を全く考慮せず、誤った事実認定に基づき死刑を選択した。この事件で死刑になるのはおかしい」と批判した。 ◆妥当な判決<榊原一夫・最高検公判部長の話> 少年時の犯行とはいえ、社会に大きな衝撃を与えた凶悪な事件であり、本日の最高裁判決は妥当なものと考える。 ◆裁判員の理解深める工夫を 凶悪事件対処へ宮城県石巻市の男女三人殺傷事件で、元少年の被告に対し、死刑を選択した十六日の最高裁判決は、犯行の悪質性や結果を重視し、少年であっても死刑を回避する決定的な事情ではないとの判断を示した。 市民が審理に参加する裁判員裁判で、初めて死刑が選択された少年事件だった。少年の保護育成を理念とする少年法は、十八歳未満を死刑とすることを禁じる。元少年は犯行時十八歳七カ月。一審の裁判員は極刑か更生の機会を与えるかを巡り、プロの裁判官でも悩む究極の判断を迫られた。 裁判員裁判は、公判の開始前に争点や証拠を絞り込んだ上で行われる。市民が法廷に出された証拠で少年の更生の可能性を見極めることができるのか、という課題は、導入前から指摘されていた。「死刑か無期懲役かの選択は裁判官に判断してほしい」といった裁判員経験者の声もある。 裁判員制度の導入から七年。今後も市民は法廷で凶悪な少年事件と向き合う。死刑制度の存廃も含め、少年の成育歴などについて法廷で専門家の意見を聞く場を設けるなど、裁判員の理解を深める工夫が必要だ。 (清水祐樹) <石巻男女3人殺傷事件> 宮城県石巻市で2010年2月10日朝、当時18歳7カ月だった元少年の被告が、18歳だった元交際相手の元少女の実家に別の元少年=犯行時17歳、殺人ほう助罪などで不定期刑が確定=とともに押し入り、元少女の姉・南部美沙さん=当時(20)=と、元少女の友人の大森実可子さん=同(18)=を刃渡り約18センチの牛刀で刺殺。元少女の姉の知人男性=同(20)=の胸を刺し重傷を負わせ、元少女を無理やり車に乗せて連れ去った。 <お断り> 東京新聞は、宮城県石巻市の男女三人殺傷事件の被告の元少年について、少年の健全育成を目的とする少年法の理念を尊重し、「報道は原則実名」の例外として匿名で報じてきました。今回の最高裁判決によって元少年の死刑が確定しても再審や恩赦の制度があり、元少年の更生の可能性が直ちに消えるわけではありません。少年法が求める配慮はなお必要と考え、これまで通り匿名で報道します。 PR情報
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