言いにくいことを言える職場

リーダーが必要な情報を得るために

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リーダーやマネジャーは社員の率直な声を聞くことを望んでいると言う。ところが、そのためにさまざまな手段が講じられても、社員には逆のメッセージと感じられ、効果が上がっていないケースが多いのだ。たとえば、匿名で意見を募る提案箱などは、逆に自由に話すことのリスクを強調しているようなものだし、実際に問題を解決するには、当の社員に話を聞く必要も出てくるからだ。本稿では、真に社員が自由に物を言える職場を実現するために、まずそれを阻害する「恐れ」と「諦め」という2つの要素について解説したうえで、声を上げやすい文化を創造するための具体策を提案する。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2016年7月号よりお届けする。

 

門戸を開いていると
標榜はしていても……

 部下たちはおそらく貴重な情報をあなたに知らせていない。たとえば、見込み通りに進まなかったプロジェクトについて。態度の悪いマネジャーについて。あるいは、売上アップや業務改善の方法について意見があるのに、それを伝えていないかもしれない。我々の調査によれば、マネジャーとしてどれだけオープンな姿勢を心がけたとしても、部下の多くは仕事上の取り組みに疑問を投げかけたり、新しいアイデアを出したりするより、黙っている可能性のほうが高い。

 ほとんどのリーダーがそうであるらしいが、たとえ部下とのオープンなコミュニケーション(門戸開放)を方針に掲げていても、部下から情報が届かないというのは、よくあることだ(何年間も社員の「声」を調べ、企業や組織に助言してきたが、「門戸を閉ざすのが方針だ」と述べたマネジャーは聞いたことがない)。考えてみてほしい。ありのままの真実を教えてほしいと言っただけで、どれくらいの頻度で部下があなたのところへ来て、そうするだろうか。現実には、彼らは(正しかろうが正しくなかろうが)心配するはずだ。個人攻撃と受け取られるのではないか、無礼な知ったかぶり屋と思われるのではないか、と。

 リーダーは部下たちに自由に話してもらうため、意識調査や全スタッフのフィードバックセッションなど、さまざまな手段を講じる。こうした取り組みの多くは、組織全体のコミュニケーション向上を重視するものだ。しかし、その意図はよいものの、主に2つの理由から十分に機能しない。第1に、結果に対する恐れ(きまりが悪い、孤立する、評価が低くなる、昇進できない、はては解雇されるかもしれない)。第2に、徒労感(話したところで何も変わらないのだから、わざわざ言う必要はない)である。

 以下、リーダーが部下の率直な意見を引き出そうと見当違いの努力をしても、そうした部下の気持ちに応えられない(場合によっては事態を悪くする)ことを見ていこう。また、もっと効果的な戦術についても検討しよう。

 社員が自由に心配事を表明できる組織は、定着率が増し、パフォーマンスも高まることが多くの研究でわかっている。たとえば、いくつかの金融サービス企業では、自由に物が言えるとメンバーが考えているビジネスユニットのほうが、そうでないユニットよりも財務・営業上の成績がよかった。また、全国展開するあるレストランチェーンでは、マネジャーが経営陣を説得して改善を進めた結果、社員の離職率が32%減り、年に160万ドル以上のコスト削減ができた。

 このように、万事うまく運べば、貢献したいと願う個人だけでなく、改善を考える組織にとっても報われるというものだ。

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