本欄前回の記事『水素水、「ニセ科学」と切り捨ててはいけないが、エビデンスありとは言い難い』は、大勢の方にお読みいただいた。
週刊誌なども水素水を相次いでとりあげたせいか、一般社団法人「分子状水素臨床工学研究会」という団体が、科学者、メディア、さまざまなところに、抗議文を送っているようだ。天羽優子・山形大准教授が、抗議文を公開したうえで反論している。私のところにも、週刊朝日の記事に出ている「水素水のエビデンスに疑間がある」などのコメントについて、同様の抗議文が配達証明付きで来た。
週刊朝日の取材に対しては、前回記事でとりあげた総説を示して、個人の見解を述べた。抗議文には「私たちの学術論文を精読しないで研究成果を批判することは科学的事実の捏造と同様に科学を冒涜する報道だと思います」と書かれているが、私は総説だけでなく、二重盲検試験の論文を中心に十数報にも目を通した。今も、考えは変わらない。
長年、この仕事をしているが、個人としての見解表明に対して抗議文が来たのは初めてだったので驚いたことも、付け加えておこう。
さて、これはほんの前置き。国立健康・栄養研究所のデータベース「健康食品」の安全性・有効性情報に今週初め、水素水のデータが加わったことをお気づきだろうか。
このデータベース、リンクはトップページにしなければいけないし、データベースの中のデータは、「無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁」と注意書きがある。というわけで、ここに情報が新しく加わっても、その情報がまったく拡散しない状態になっている。水素水についても皆さん、知らなかったでしょう?
引用は著作権法上、正当な権利として認められているし、今年度からは消費者庁の「健康食品の機能性等に係るエビデンスのセカンドオピニオン事業」の事業費も投入され、内容を消費者にしっかりと伝える義務も生じている。広告宣伝への利用お断りは当然だが、情報は伝わってナンボなのだから、もっと消費者に伝わりやすいように「注意書き」は改めた方がいい。
こういう事情を踏まえてあえて、データベースに追加された水素水についての内容を若干ご紹介すると、俗に「活性酸素を除去する」「がんを予防する」「ダイエット効果がある」などと言われていることに触れ、ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらないと記述している。
そのほか、指摘はいろいろあるのだが、個人的に興味深かったのは、「水素分子(水素ガス)は体内で腸内細菌によって産生されている」という記述だ。食物繊維などの摂取量によっても産生量が変わるという報告があるという。「水素ガスは、体内でそこそこの量発生しているのに、それは全く考慮せず、検討せず、経口摂取の量のみで効いている、というのは、研究として変でしょう? お粗末ではありませんか?」 という意味だと、私は受け取った(あくまでも、個人の感想ですよ〜)。
データベースで水素水と入力して、ぜひ熟読いただきたい。そのほか、「ヒアルロン酸」「コラーゲン」「プラセンタ」のデータも刷新されるなど、注目すべき情報が満載だ。