日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、最近の円高進行について「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映しないような円高やボラティリティー(変動率)の増加は好ましくない」との考えを示した。為替相場で金融政策を決めることはないとしつつも「こういった形で円高が進んでいるということが日本経済や将来の物価上昇率に対して好ましくない影響を与えることは事実だ」とも話した。
英国の欧州連合(EU)からの離脱問題に関しては「国民投票で市場は揺れている」などと懸念を表明。離脱が決定するなどして、国際金融市場がさらに混乱した際の対応については「各国の中央銀行と緊密に連携している」とし、ドル資金供給などで「十分に対応できる」と説明した。
マイナス金利政策については、住宅投資が持ち直していることなどを挙げ「マイナス金利の効果は実体経済面にも波及しており、今後より明確になる」と話した。
一段の金利低下を背景に、メガバンクの一角である三菱東京UFJ銀行が国債入札で特別な立場である「プライマリーディーラー」の資格を返上する方針を決めた。これについて黒田総裁は「個別行の判断」として評価は避けた。一方で「これまで国債買い入れは円滑に行われている」として、市場に配慮しつつも現行の政策を続けることが必要との認識を示した。また、超低金利政策の金融機関への影響については「今のところ金融機関の収益に大きなマイナスを与えるとか信用仲介機能を阻害するといったことには全くなっていない」と強調した。
同日の会合ではマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を決めた。消費者物価指数(CPI)が2%に到達する時期については2017年度中との見方を維持した。黒田総裁は会見で「今後とも毎回の決定会合でリスクを点検し、必要ならば量・質・金利の3つの次元でちゅうちょなく追加緩和する」と語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕