沖縄県・尖閣諸島の接続水域に中国の軍艦が入ったのはつい先週のことだ。今度は中国海軍の情報収集艦が、鹿児島県沖の日本の領海を通過した。

 これを偶発的な出来事とは、片づけられない。周辺国の懸念を無視する形で既成事実を積み重ねようとする態度が、中国側からうかがえる。

 中国政府は、今回の海域について「国際航行に使われる海峡であり、各国艦船に通過する権利がある」「航行の自由の原則に合致している」としている。国際海洋法に照らして正当だと言いたいようだ。

 中国の主張どおり、現場海域が国際海峡だとすれば、確かに日本領海内であっても軍艦を含め外国船舶の通過は問題ないことになる。

 だが、中国艦が単に通過していただけとは考えにくい。実際に何をしていたのか。日米印の合同演習に参加するインド軍艦を追う形で領海に入っており、レーダーで監視していた疑いがある。この点を中国政府は「遠海訓練」とするのみで、はっきりとは説明しない。

 中国艦が日本領海に入ったのは、確認されたものでは2度目だ。前回の04年11月は、原子力潜水艦が潜ったまま航行したことが違法にあたり、中国政府も「誤って入った」と認めた。

 その後の12年間、中国は海軍力を強め、積極的な海洋進出の動きを隠さなくなった。周辺国と事前協議もせず、実力で事実を先行させ、あとで都合次第で法の理屈を使い正当化を図る。そんな行動を今後も続ければ、東シナ海も南シナ海もいっそう緊張を増す。

 国際海洋法の原則を重視しているならば、南シナ海の大半を囲むように線引きして優先権を唱え、岩礁を強引に埋め立てることをどう説明するのか。フィリピンとの国際仲裁裁判を拒むことは正当化できるのか。

 中国雲南省で今週開かれた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別外相会議では、南シナ海問題をめぐる懸念が参加国から表明された。中国はASEANとの協調ぶりを示したかっただろうが、逆に裏目に出たのも当然だろう。

 中国は、アジアの平和に責任を負うべき大国である。にもかかわらず国際社会のルールや規範を、あるときは無視したり、別の時は自己正当化の根拠にしたりでは、周辺国はとても信用することができない。

 静かであるべき海を荒立てる艦艇の動きに加え、法の原則まで我が物扱いしようとする中国政府の姿勢を憂慮する。