カフェインもタウリンも疲れを取らない?

疲労研究者に聞く「食と抗疲労」(前篇)

2016.06.17(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
栄養ドリンク。「肉体疲労時の栄養補給に」と宣伝する商品もあるが・・・。(写真はイメージ)

 じめじめする梅雨時から暑い真夏にかけて、「疲れ」を覚える人は多い。「精力のつくものを食べて、疲れを吹き飛ばそう」と考える人もいることだろう。

 一般的に「食べることは、疲れを取るのにプラス」という通念がある。だが、「食べること」と「疲れを取ること」の関係を考えるといろいろと疑問が浮かぶ。たとえば、「食べものが疲れを取る」とはどういうことなのか。スタミナや滋養強壮を謳う食べもの・飲みものを摂れば本当に疲れは取れるのか。そんな疑問だ。

 そこで、今回は「食と抗疲労」というテーマで、疲労研究の専門家に数々の疑問を投げかけることにした。応じてくれたのは、大阪市立大学大学院医学研究科特任教授の梶本修身氏だ。疲労医学を専門に研究する国内ではユニークな大学講座「疲労医学講座」で疲労研究を行い、2003年に産学官連携で立ち上がった「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」のリーダーも務めた。2015年8月には、東京・新橋で、疲労研究の成果を社会でより生かすため「東京疲労・睡眠クリニック」も開業している。

 前篇では、まず梶本氏に、食と抗疲労の基本的な関係について聞くことにしたい。後篇では、同プロジェクトで抗疲労効果が見出された「イミダペプチド」とよばれる食品成分の話を中心に、抗疲労のための具体的な食事の方法などを聞いていきたい。

睡眠と食事に「異なる役割」あり

――仕事などで「疲労」を日々感じている人は多いと思います。そもそも、疲労とはどういうものなのでしょうか。

梶本修身氏(以下、敬称略) 疲労の定義ははっきりしていて、日本疲労学会でこう定めています。

「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」

 また、疲労が存在することを自覚する感覚が「疲労感」であるとも定めています。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。