ネット・リテラシーということが言われはじめて久しいですが、多様なSNSサービスの普及により誰でも簡単にインターネット情報に触れることが可能になり、ますますネット・リテラシーが叫ばれるようになりました。 インターネットは上手に利用すればこれほど便利なツールはありません。しかし利用方法を間違えると、そこには様々な落とし穴が待ち受けており、思わぬ事態に巻き込まれる危険性が誰にでもあります。 ところでネット・リテラシーの概念にはいくつかありますが、ここでいうネット・リテラシーとは下記リンク先にあるように、「ネット上にある嘘に騙されないようにする、危険から上手に身を守る」 という意味で使用することにします。 → ネット・リテラシー/Net Literacy (同人用語の基礎知識) ここでは「ネット上にある嘘」の例として、皇室批判に関するものをあげたいと思います。 私は以前から、ネット上に溢れる皇室に関する話題には、びっくりするほどの虚偽、捏造されたものが多いということを言ってきました。皇室に関することは、一般人には分かり辛いことが多いために、簡単にデマが流されたりするし、そして簡単にそのデマに騙される人も多いです。 以前検証した「ヤフオク事件」もそうですね。こちらも合わせてご参照ください。 → 皇室「ヤフオク事件」の検証 → 皇室「ヤフオク事件」の検証 番外編 今日は一部ネット上で拡散されている「皇居の森を天皇陛下・皇后陛下が破壊した」という内容について検証します。 これは、昭和天皇が愛した皇居の森を、天皇陛下、皇后陛下がご自身たちの贅沢のために破壊して新御所を建てた!けしからん!というものです。中には「皇居の森を贅沢のためになぎ倒した環境破壊ご夫妻」と激しく罵る人たちもいます。 検証するもなにも、私にとっては失笑ものの、おもろいネタでしかありませんがw ここではあえて真面目に「検証」してみました。 そもそも、この奇天烈なお話の元ネタは何かと申しますと、22年前の週刊文春の記事です。 平成5年9月23日号「美智子皇后のご希望で昭和天皇の愛した皇居自然林が丸坊主」 この記事では、謎の「皇室に近い関係者」の話として、 ・新御所の建設が決まったのは、昭和天皇がお亡くなりになって半年も経たないうちのこと。 あまりにも亡きお上をないがしろにした決定。 と、このように激しい批判をしていますね。 まずこの頃の時代背景・・・といっては大げさですが、皇室に対して週刊誌がどのような報道合戦を繰り広げていたのかと申しますと、凄まじい皇后陛下バッシングが起きていた時期です。 同じように週刊文春が書いたバッシング記事は他にもたくさんあります。 平成5年4月15日号 「吹上新御所建設ではらした美智子皇后『積年の思い』」 上記にある平成5年7月22日号で取り上げられたのは、月刊「宝島30」8月号(宝島社発行)が、宮内庁勤務だという謎の大内糺(仮名)が掲載した、「皇室の危機『菊のカーテン』の内側からの証言」 という記事です。 内容は皇后陛下が「午前1時、2時になっても『インスタントラーメンを作ってください』『リンゴをむいて』という下命があったりするというから、当直勤務の職員たちも気を許すことが出来ない」というようなもので、「このままでは皇室の権威が失墜し、スキャンダルにまみれる」というものでした。 このような度重なるバッシングにより、皇后陛下は失声症のため御誕辰の朝に倒れられたのです。 週刊文春による、皇后陛下のご希望で「皇居自然林が丸坊主」に戻りますが、ではこの記事は果たして真実だったのでしょうか? 結論から言いますと、何の根拠もないデマです。 まずは皇后陛下の異例の反論から。 皇后さま 反論 雑誌記事に事実ではない 毎日新聞 1993年10月20日(夕刊第27面) 皇后さまは20日、59歳の誕生日を迎えた。御誕生日を前に皇后さまは、宮内記者会の質問に文書で回答、最近の一部皇室批判報道について公式の形で初めて遺憾の気持ちを明らかにした。 皇室の方が、このように反論するのは非常に難しく、記事に関して直接的な言葉で反論すると、逆に批判されてしまうのが皇室です。実際、「こういう意見を表明するものはいかがなものか?英国でもこのような直接話法で批判しない」と懸念されたり、批判の声も一部ありました。 この件は、当時の国会でも取り上げられました。 こちらがその時の議事録です。 → 第128回国会衆議院 法務委員会議事録 第1号 (pdf) 議事録6ページ(3段目)からです。 (一部抜粋) さらに、週刊文春や月刊宝島の記事が真実なのかどうか、曾野綾子氏が週刊新潮に検証記事を書いています。 こちら → 美智子皇后さま 「批判再考」 週刊新潮1993年11月11日号 これは週刊新潮と曾野氏が質問事項を箇条書きにして提出し、侍従職から回答を貰ったものと、八木貞二侍従長に直接質問して得られた回答による、客観的事実、数字に基づくもので構成されており、少なくとも「皇室に近い関係者」による記事よりも信憑性が高いことは、誰にでも理解できることでしょうw 新御所に関することも詳細が記載されていますので、ぜひリンク先の画像を拡大して読んでみてください。 平成5年にさまざまな皇室バッシング記事を掲載した週刊文春ですが、この時の編集長は花田紀凱氏です。 花田氏は、週刊文春の編集長から後に「マルコポーロ」の編集長になり、ホロコースト否定説で問題になったいわゆる「マルコポーロ事件」の後、文春時代にさんざん批判していた朝日新聞社の契約編集者となり話題になりました。 そして現在は保守系の雑誌「WiLL」の編集長です。 花田氏は、現在は保守だというふうに多くの方に認識されていると思いますが、私の印象では、保守だとか左翼だとかサヨクなどという、そういうイデオロギーなどまったく関知していない人物だと思います。また、ジャーナリストという誇りも無いと思います。 花田氏は何でもいいから売れればいいという、単なる商売人だという印象です。 事実、花田氏自身も皇室バッシング記事、特に皇后陛下バッシング記事を掲載したことについて、後に自身の著書でこんなふうに語っています。 天皇家というのは日本最大のスターであるというのがぼくの持論で、だから機会あるごとにグラビア、特集記事などで取り上げようという方針だった。といっても、それは天皇家に対する崇拝とかいうよりも、本音を言うなら単純に商売になるからというだけなのである。 そして一連の皇后陛下バッシング、「皇居の森」の件についても言及しています。 『女性自身』など女性週刊誌でも美智子さんをしょっちゅう取り上げている。しかしそうした雑誌に比べて『週刊文春』は取材力があるし、ちょっと違った角度と深さで記事にして好評を得ていた。 お読みいただいたら分かる通り、言い訳っぽく曖昧な書き方をしていますが、要するに何の証拠もない話を事実であるかのように取り上げた。売り上げが落ち、「週刊ポスト」に抜かれた焦りから、当時人気の高かった皇后陛下で盛り返そうと思ったが、記事の“作り方”を間違えた、ということですねw ネット上で「天皇陛下、皇后陛下が皇居の森を破壊した」とバッシングしている方々は、このように何の根拠もない、しかも22年も前の記事を持ち出して来て読者を煽ってるのです。 こういう事例から言えることは、週刊誌の記事、特に無記名の「謎の関係者」の発言で構成されている記事をソースとしているものは信用してはいけない、ということですね。 いまどき、週刊誌の記事をまるっと信じる人もそうそういないとは思いますがw ちなみに、皇居の森の現状は・・・? 皇居に新種「フキアゲニリンソウ」 国立科学博物館が調査 日本経済新聞 2014/5/16 20:18 皇居に新種のニリンソウ――。国立科学博物館は16日、2009〜13年度に皇居内の一部で実施した動植物の生息状況の調査結果を公表した。計3448種の動植物が確認され、少なくとも3種は新種と断定した。絶滅危惧種も相次いで見つかった。 どこが環境破壊なのでしょうか? (2)につづく。 ※この記事はリンクフリーです |
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皇室批判に学ぶネット・リテラシー(2)
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ぴよぴよ党 2016/02/10 17:10 |
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ぴよさま、こんばんは。 |
Pica 2015/11/18 17:10 |
<Picaさん> |
ぴよ 2015/11/18 22:36 |
お久しぶりです。 |
ミケの友達 2015/11/21 12:29 |
<ミケの友達さん> |
ぴよ 2015/11/21 21:28 |
記事の更新、ありがとうございます、 |
ららら♪ 2015/11/23 00:00 |
<ららら♪さん> |
ぴよ 2015/11/23 16:20 |
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