MVNO(仮想移動体通信事業者)が提供する、いわゆる「格安SIM」を主にサービス面から定点観測する本連載。2015年度末に当たる2016年3月の音声通話編では、「FREETEL SIM」や「LINE MOBILE」(2016年夏開始予定)における特定通信を無料にする取り組みや、店頭販売拡大の模索を話題として取り上げた。
年度が替わった2016年4月・5月の音声通話対応MVNOサービスでは、スマホのレンタルサービスを開始するMVNOの登場、全ての設定を店頭や玄関先でサポートするMVNOや、プレフィックスもIP(インターネット)電話も使わない通話準定額サービスなど、興味深い動きが多数見られた。さっそく振り返ってみよう。
(記事中の料金は、特記のない限り税別。2016年5月31日までの情報をもとに掲載)
現在、多くのMVNOがSIMカードと端末のセット販売を実施している。多くの場合、端末代金は一括払いのほか、分割払いも可能だ。「分割払い」の方法は、大きく分けて以下の4パターンがある。
分割払いの途中でMVNOから新しい端末を購入する場合、旧端末の代金を継続して支払うか、一括で支払う必要がある(MVNOによってはどちらか片方しか選択できない場合もある)。いずれにしても、旧端末の代金を支払う必要があるのだ。
そんな中、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)が、5月25日から「DTI SIM」の契約者に対して「DTI SIM スマホレンタルオプション」の提供を開始した。
このサービスは文字通り、一定の料金を月々支払うとスマホを貸してくれる、というものだ。最初の12カ月が経過すると、「新端末への交換(旧端末は返却)」「現端末のレンタル継続」「現端末の買い取り」の3つの選択肢を選択できる。自動車の「残価設定型ローン」と考え方は近い。
第1弾のサービス対象機種となったiPhoneの場合、現行のモデルサイクルが継続するならば、常に最新機種を使い続けられる計算となる。まさにiPhoneをターゲットに据えたサービスといえるだろう。
ただし、現在のところiPhone 6sの16GB・スペースグレイモデルのみが対象機種となる。容量やカラー、機種の拡充が待たれる。また、ハイエンドAndroidスマホにも「1年ごとに最新機種にしたい」というニーズがあるはずなので、ぜひ対応をお願いしたいところだ。
昨今、「MVNO」あるいは「格安SIM」という単語の認知度が高まっている。それに伴い、従来と比較してスマホやタブレットに対するリテラシー(活用能力)が高くない人も格安SIMの導入を検討することが当たり前になってきた。しかし、リテラシーのそれほど高くない人にとっては、MNO(大手キャリア)のような手厚いサポートを受けづらいことが導入への大きな障壁となっている。
そこを「自覚」してか、あえて手厚いサポートを訴求するMVNOサービスも登場している。
ピーシーデポコーポレーション(PCデポ)は、2014年9月から店頭サポートが付帯するSIMカードと端末のセット販売を手がけている草分け的存在で(参考記事)、2016年2月から店頭サポート内容を拡充した「安心サポート付き格安スマホ」の販売を開始している。
そして4月29日、この安心サポート付きスマホのサービスを「JUST PRICE FON」としてリニューアルし、端末(と通信容量)のラインアップを拡充した。PCデポの店頭でJUST PRICE FONを購入(契約)すれば、端末の接続設定だけではなく、LINEの初期設定、メールアカウントの登録、セキュリティ対策(Androidのみ)など、各種サポートを店頭で受けられる。
端末代金とサポート料金込みのサービスであるため、一般的なMVNOサービスよりも割高な印象も受けるが、それでもMNOよりは格安ではある。3年契約であることをネックに感じる人もいるだろうが、ターゲットするユーザー層を考えれば問題はそこまで大きくないだろう。
一方、楽天の「楽天モバイル」は「出張申込サポート」を開始した。1回8300円の有料サービスだが、楽天モバイルのSIMカードと端末セットの新規契約・MNP手続きから基本的な使い方まで、自宅に訪問の上で手伝ってくれるという。なお、新規契約手数料と端末代金は別途かかる。
近くに楽天モバイルの取扱店はなく、自宅(Web)で申し込むのは不安だ――というサービスだが、記事掲載時(6月16日)現在、新規の申し込みを一時停止している。
2016年2月の定点観測でも取り上げた「コンビニ受け取り」(こちらも受付を一時停止中)同様、潜在的なニーズは間違いなく大きいはず。一刻も早い受付再開と、対象地域拡大に期待したい。
PCデポも楽天も、真剣にリテラシーの高くないユーザーの獲得に動いている。月々の料金が若干割高となる、あるいは別途料金を払うことで手厚いサポートを受けられるようにすることで、単に「安い」だけではない競争軸を打ちだそうとしている両社に追随するMVNOは出るのだろうか。注目したい。
エックスモバイル(もしもシークス)の「かけたい放題」とニフティの「NifMoでんわ」を皮切りにスタートした格安SIMの通話(準)定額。2016年1月には楽天コミュニケーションズが楽天モバイル契約者限定の「5分かけ放題オプション」を、3月にはプラスワン・マーケティング(FREETEL)が「FREETEL SIM」ユーザー限定の「FREETELでんわ」の提供を開始するなど、広まりを見せつつある。
そんな中、DTI SIMに5分以内の国内通話を月額780円で定額利用できるオプションサービス「DTI SIMでんわかけ放題」が登場した。
従来の格安SIM用通話(準)定額は「プレフィックス通話」か「IP(インターネット)電話」で実現していた。しかし、DTI SIMのそれはどちらでもなく、NTTドコモから卸提供を受けた電話サービスをそのまま利用する。そのため、端末あるいはユーザーが特別な対応をすることなく使えることが大きな利点となる。
記事掲載時現在、NTTドコモはMVNO向けに通話(準)定額に対応した音声プランを提供していない。そんな中で登場したこのオプションは、非常に衝撃的だ。他社が追随しようとしても、そう簡単には行かないだろう。
なお、通話(準)定額関連では、エックスモバイルのかけたい放題が同社のプランリニューアルに伴い「プラン」から「オプション」化する動きがあった。また、FREETELでんわも、2016年夏をめどにMVNOを含む他社携帯電話に対応する方針が示された。
エックスモバイルの動きは「必要なサービス(オプション)を、必要な人に」という観点では非常に歓迎すべき動きだ。また。FREETELでんわの他社開放は通話の多さにMVNOサービスへの乗り換えをためらっている人への福音となるはずだ。
2016年度は「格安SIMの通話(準)定額」の動きが激しくなるかもしれない。
ケイ・オプティコムの「mineo」は、ファン(ユーザー)とのコミュニケーションなど独自の取り組みでユーザーを増やしているが、実店舗での販売体制に弱みを抱えていることは前回の定点観測でもお伝えした。この“弱点克服”に関して、2つの新たな動きがあった。
まず、ヨドバシカメラの6店舗(マルチメディア梅田/京都/Akiba/横浜/川崎ルフロン)において6月1日以降順次SIMカードの即日渡しに対応することになった。また、mineoアンテナショップの2号店を東京都渋谷区にオープンすることになった。
まずは6店舗(+1店舗)からだが、mineoの最大の弱点(と筆者が思っている部分)が解消する。今後、どこまで即日渡し対応を広げられるか、ケイ・オプティコムの手腕が問われることになりそうだ。
Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.