「炉心溶融ということば使うな」 当時の社長が指示

「炉心溶融ということば使うな」 当時の社長が指示
東京電力が福島第一原子力発電所の事故のあと、2か月以上、メルトダウン、いわゆる炉心溶融が起きたことを認めなかったことについて、原因などを調べてきた外部の弁護士らで作る委員会は、当時の清水正孝社長が官邸からの指示で炉心溶融ということばを使わないよう指示していたなどとする検証結果をまとめました。
福島第一原発の事故では、1号機から3号機まで3つの原子炉で核燃料が溶け落ちるメルトダウン、いわゆる炉心溶融が起きましたが、東京電力は事故から2か月後まで正式に認めませんでした。

事故の大きさを端的に示す重要なことばが、なぜ長期間使われなかったのか、東京電力の依頼を受けた弁護士らで作る第三者委員会が、ことし4月から原因や経緯の検証を進めていました。

その結果がまとまり、16日、東京電力に報告されました。それによりますと、当時の清水社長が事故から3日後の3月14日夜、記者会見中だった武藤副社長に対し、広報の担当者を通じて、炉心溶融と書かれた手書きのメモを渡させ、官邸からの指示として、「炉心溶融ということばを使わないよう」指示していたことが分かったということです。

この問題を巡っては、新潟県が技術委員会を作って追及を続けていて、東京電力のこれまでの説明では、「正確な定義があるわけではなく、誤解を与えるおそれがあり、使わなかった」などとされていて、具体的な指示関係が明らかになったのは初めてです。

しかし、清水社長などへのヒアリングで官邸の誰から、どのような指示や要請を受けたかは解明できなかったとしています。

一方、炉心溶融の判断が事故の2か月後になったことの是非について、第三者委員会は、炉心の状態を見て確認できない当時の状況を考えると、「不当であったとは言えない」としながらも、当時、すでに炉心溶融の発言が出ており、対外的に認めることが可能だったとの見方もできるとして、委員会としての判断は示しませんでした。

この問題を巡っては、この委員会とは別に、新潟県と東京電力で作る合同の検証チームで今後、より詳しい調査を行うことになっています。

東電社長「今月中には再発防止策を」

報告書を受け取った東京電力の廣瀬直己社長は内容をまだ十分に把握していないとしたうえで、「報告書の内容をしっかりと受け止め、今月中には再発防止の対策をまとめて改めて報告したい」と話しました。

新潟県知事「極めて遺憾」

検証結果について、新潟県の泉田知事は「県の技術委員会に対して虚偽の説明をしていたことになり、極めて遺憾だ。東京電力と合同で設置することとした検証委員会で徹底した追及を行う。東京電力は組織として何事も包み隠さず、真摯(しんし)に対応してほしい」とするコメントを発表しました。

福島 浪江町長「ふんまんやるかたない」

福島県浪江町の馬場有町長は「東電の姿勢には、いつも、ふんまんやるかたない。事故がわい小化、小さくされていると思う。当時、かたくなにメルトダウンということばを使わず、5年もたってそういうことを言い出すのは、とんでもない話で、徹底的に情報公開し説明責任を果たさなければならない。今後の廃炉作業も適切な監視が必要だ」と話しました。