ネット予約に影響も…旅行シーズン控え
海外からの不正アクセスで、最大約793万人分の個人情報が流出した可能性があると発表したJTBは15日、顧客からの問い合わせが殺到し、対応に追われた。個人情報にはインターネットを通じて旅行商品を購入した利用者の住所やパスポート番号などが含まれる。消費者のネット通販に対する不信が高まれば、夏休みの旅行予約などに影響する可能性もある。
JTBは不正アクセスを発表した14日夕、電話による相談窓口を開設し、同日だけで数千件の問い合わせがあった。15日も同様の状況が続いているという。JTBは約793万人の顧客に電子メールで連絡をとり始めたが、「しばらく時間がかかる。1カ月以内には全員に連絡したい」としている。
夏休みを控えたこの時期は旅行業界にとって書き入れ時だけに、旅行商品の販売に響く可能性がある。同社の高橋広行社長は「今の段階で経営に大きな影響を及ぼすかについてはコメントしかねる」と慎重な立場だ。観光庁の田村明比古長官は15日の記者会見で「JTBには影響が出ないような対応、再発防止策の徹底が強く期待されている」と述べた。
2014年7月に顧客情報流出事件が発覚したベネッセホールディングスは、主力の通信教育講座「進研ゼミ」の今年4月の会員数が1年前と比べて約10%減り、16年3月期の連結最終(当期)損益は2年連続で赤字。個人情報流出の影響は無視できそうにない。
一方、今回のJTBへの不正アクセスは、企業の情報を盗むため、取引先を装ってウイルス感染させる「標的型メール」が送りつけられたのが原因だった。標的型メールによる不正アクセスはここ数年増えているとされ、ネット通販企業は警戒を強める。楽天は「当社にもかなりの攻撃があるが、社内の専用部隊が検知しており、外部からの侵入はない。リスクを認識しながら顧客が不安にならないようサービスを提供している」という。
情報セキュリティーの専門機関「情報処理推進機構」は「不正アクセスはどの企業でも起こりうる。大手よりも規模の小さい企業が狙われやすい。安全対策はコストをかければある程度できるが、企業にとっては、そこがネックなのではないか」と指摘している。【川口雅浩】