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RubyKaigiとDroidKaigi、2つの開発者Kaigiの運営から学ぶチームの作り方

TdX講演会#01「チームと開発者Kaigiづくり」レポート

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2016/06/16 14:00

 2006年から開催を続ける「RubyKaigi」と、2015年に初めて開催された「DroidKaigi」。この二つの開発者Kaigiはどのようなチームによって作られているのか――。東京工業大学CBECプログラムが開催する「チームづくり」「モノづくり」の両方に携わる方をゲストに迎えた講演会シリーズ「TdX(チームでXXXづくり)」、その第1回が4月22日に行われた。今回のテーマは「チームと開発者Kaigiづくり」。RubyKaigiオーガナイザーの高橋正義氏、DroidKaigi代表理事 日高正博氏をゲストに迎え、あの開発者Kaigiの運営上の課題や、チーム作りをする上での工夫が明かされた。

目次

RubyKaigiの作り方

RubyKaigiオーガナイザー 高橋征義氏
RubyKaigiオーガナイザー 高橋征義氏

 まずは、達人出版会代表であり、RubyKaigiオーガナイザーの高橋征義氏による講演。「RubyistのRubyistによる、Rubyistとそうでない人のためのカンファレンス」であるRubyKaigiは、2006年に初めて開催された。2011年には一旦終了し、2013年からは国際色の強いカンファレンスとして再開された。高橋氏は2006年から2011年までは実行委員長、2013年以降はオーガナイザーとして関わっている。

 高橋氏は、開発者Kaigiのチームについて述べる前に、まず「開発者Kaigi」とは何かについて整理した。開発者KaigiとはITエンジニア(開発者)向けのイベントで、「勉強会」「ミートアップ」「ハッカソン」「セミナー」「ハンズオン」「カンファレンス」などさまざまな形式がある。期間も数時間から数日間、有償/無償なものと仕様もさまざまだ。

 これら開発者Kaigiは、勉強・知識の向上、情報交換・知見の共有、自分の作ったプロダクトの紹介や、自慢大会、つながりを作りたい、などの目的で開催される。「RubyKaigiは自慢大会に近い」と高橋氏。

 RubyKaigiは、開催期間は3日間程度+非公式の前日企画などもあり、参加者は500~1000人。2会場以上のマルチトラックで、参加費は当初6000円だったものが、その後、国際カンファレンス色を高めたこともあり、2~30000円と高額になった。無償運営のボランティアスタッフは数十名程度で構成されている。

運営チームの規模が大きくなると本質的な問題をはらむ

 続いて、今回の本題である開発者Kaigiの運営チームについて。高橋氏は、一定以上の規模のあるチームには、担当領域、ロール、特性に応じて役割分担できるとし、役割分担として下記のスライドをあげた。

 高橋氏は「私がRubyKaigiのチームでできたのは、方向性をきめることと、適宜ツッコミを入れること。自分はこれが得意、他の人はこれが得意、と役割を割り振れるのがいいチームの作り方」と言う。

 さらに高橋氏は、チームの規模に応じて特性や問題点が変わってくるとした。

 数名程度のチームは、何でもできる人たちが集まりがちで、一人で複数のロールを担当することが多く、コミュニケーションが取りやすい。理想的な状態であるが、リソース不足で困ることがある可能性がある。

 数名から数十名程度のチームでは、専門チームができ、一部しか顔を知らない、という人も出はじめ、コミュニケーションが取りにくくなる。進捗、問題が把握できなくなり、全員での意見交換が難しくなるため、チームリーダーが導入されるのもこのくらいの規模からだ。

 それ以上の規模になると、さらなる階層化・組織化がされる。例えば、最新の収支予測が分からなくなるなど、進捗確認・問題把握・課題解決が難しくなってくる。誰に聞けばいいのか、お願いすればいいのかが不明。そもそも知っている人がいるのか、という問題に陥る。

 このような問題の解決方法は「本質的に難しい」と高橋氏。ボランティアでやっているため無理なお願いがしづらく、現状では諦めるしかないという。一つの解決策として「メンバーが同じ方向を向く」というのもあるが、そもそも集めることが難しいことと、均質すぎることは長期的に別の問題を引き起こす可能性もあり、やはりこの問題の本質的な解決は難しい、とのことだ。RubyKaigiでも、2013年からはスタッフの人数を絞り込んで運営している。

よいチーム名を考えることはチームの設計につながる

 高橋氏は、2011年までのRubyKaigiの運営チームでは、専門チームに対して名前をつけていたという。例えば、配信、音響、音楽を担当するチームの名前は「KaigiFreaks」。Ruby Conferenceなどで配信を担当する「Confreaks」が元ネタだ。受付チームは、ウェルカムの気持ちを込めて「チームウェルカム」、無料の飲食スペースには「喫茶自由」と名付けた。無料なのに「自由」というのは「Free (Software)」が由来。

 なぜ、このようにチームに名前をつけているかというと「良い名前を考えることが設計になる」からだそうだ。名前はアイデンティティとなり、「私たちのこと」として考えられるようになる。ただ、名前付けを凝りすぎてしまうと、内輪感が増してしまい、参加者やスタッフにさえ通じなかったりする、という問題点もあるとのことだ。「わかりやすさと特別感のバランスが大事」と高橋氏は語った。


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著者プロフィール

  • 近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

    1986年岡山県生まれ。20代前半は京都で青春を謳歌し、大学院から上京。学部・修士では建築の歴史研究を専攻する。「院試浪人中に暇だったから」「プログラマーの友人が増えたから」という理由でプログラミングやWeb制作を学び、IT企業への就職を目指していたら、一時は就活生として有名になったことも。2014...

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