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静岡外国人の子どもの日本語教育 現状探る◆初期支援は学校?民間? 模索続ける自治体
日本で暮らし始めた外国人の子どもが日本語をどこで初めに学べば良いか−。焼津市は四月から、学校に通訳を兼ねた支援員を置き、来日間もない子でも日本の子と一緒に学べる環境の整備を目指している。一方、菊川市などは民間に運営を委託する「虹の架け橋教室」に半年間の初期支援を任している。フィリピン人を中心に就労目的で来日する外国人が増えている県内の自治体で、模索が続いている。 四月中旬、焼津市の大井川南小学校で、二カ月前にフィリピンから来日した六年生のジェバニ・グレイス・エティルさん(11)が、同級生とは別教室で日本語を学んでいた。「私の名前はグレイスです。よろしくお願いします」。支援員の安野イメルダさん(46)のタガログ語の説明を聞きながら、声に出して覚えていく。 日本語はほとんど分からない。安野さんが「物の名前が分からなければ指さして友達に聞いてね」と語り掛けると、にっこりうなずいた。安野さんは日本人男性と結婚し十四年前にフィリピンから来日、独学で日本語を学んできた。「不安や孤独は分かる。自信を持たせたい」と話す。 焼津市は英語やタガログ語、ポルトガル語などができる支援員を随時募集し、現在は十三人が登録する。初期支援が必要な小中学生は四月現在で十九人。支援員と一対一で学ぶ時間を毎日設けているが、付きっきりとまではできない。学校教育課の担当者は「焼津の子として地元の学校に通うのが本来の姿。言葉が通じなくても音楽や体育などはできる」と方針を説明する。 県内の「虹の架け橋教室」は二〇一四年度、浜松市に二カ所と、藤枝市のNPO法人「日本インターネットスクール協会」が運営する藤枝、菊川両市の教室各一カ所の計四カ所あった。一五年度からは国の事業でなくなり、各自治体の事業となった。菊川市は一六年度から掛川、御前崎両市とともに立ち上げた協議会で教室の支援を決めたが、藤枝市の教室は閉鎖となった。 菊川市の中央公民館近くの建物で開かれている教室は、子どもの母語を使わず、日本語で日本語を教える指導が特徴。講師が鉛筆を見せて「鉛筆、ありますか」と聞くと、子どもたちが「あります」と鉛筆を持って答える。勉強に必要な物の名前やあいさつ、「おなかが痛い」など学校生活に必要な言葉を繰り返して覚える。山下泰孝理事長(60)は「自立し生きる力を身に付け、辞書を使い自分で学習する方法を教えている」と話す。 静岡大の矢崎満夫准教授(多文化共生教育)は四年前、県教委と学校での初期指導用カリキュラムの冊子をまとめた。初めは学校生活に必要な日本語表現を同級生と別に学んだ後で、徐々に学級の中に入っていくことを目指す内容だ。矢崎准教授は「取り組みのかぎは学校側にある。民間にはできない、子どもが多数の中に入っていける環境づくりを進めてほしい」と話す。民間と行政の連携や、双方をつなぐコーディネーターの必要性も指摘している。 (神谷円香) <虹の架け橋教室> リーマン・ショックによる景気後退で日本に定住する外国人の子どもの不就学が問題になり、2009年度に文科省が始めた支援事業。委託を受けたNPO法人や学校法人が原則半年間の日本語教室を開く。14年度までに全国で4333人の就学につながった。15年度からは地方自治体が実施する「定住外国人の子供の就学促進事業」の一つとなり、文科省が事業費の3分の1を補助、自治体が3分の2を負担する。焼津市のような学校への支援員配置も補助対象となる。浜松市は15年7月からこの事業で市内の2教室を継続している。 PR情報 |
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