株式市場の「構造変化」との見方も
このところ、日経平均株価の構成銘柄などに代表される「主力大型株」はいまひとつさえない。しかし、その一方で、東証マザーズに代表されるような「小型株」が大きく上げるという展開になっている。
従来から、「小型株」は不規則な動きをするため、その動きをファンダメンタルズで説明することは困難であるとされてきた(小型株のアノマリー)。そして、その「アノマリー」を利用した投資戦略の有効性についても、ファイナンスの分野で様々な研究がなされてきた。
この「小型株のアノマリー」の理由については、様々な仮説が提示されているが、代表的なものとしては、アナリストのカバー率が低く(要するに、証券会社等の企業アナリストの分析対象になっていない銘柄が多い)、様々な「情報」(チャート分析や企業情報など)が瞬時に株価に織り込まれにくいこと等が指摘されている。
だが、最近の小型株市場の動きは、このような従来の「アノマリー」では説明しにくい趨勢的な動きになっているのではないかという指摘がなされている。そして、株式市場関係者の中には、最近のこの「小型株の活況」を、日本の株式市場の「構造変化」ではないかとポジティブに考える人も出始めている。
ただし、筆者のような「マクロ屋」の観点からみると、1990年代後半の米国のITブーム期のナスダック市場に代表されるように、通常、小型株市場が活況になるのは、その国の経済に新たな成長余地(もしくは新しい「時代」を予感させる環境)が投資家の間で認識された時である(もしくは、信用保証の拡充など中小企業優遇の政策が出されたとき)。
確かに、個別の材料では、「自動運転やフィンテック、バイオなど様々な新技術の実用化が目の前にまで迫ってきている」という話がメディア等で踊るようになっており、「産業革命の再来」などのように喧伝されているが、経済指標を見る限り、それが現実にマクロ経済を動かす牽引力にはなり得ていないのもまた事実である。
例えば、米国のITブーム期には、フィリップス曲線が「左下方」にシフトし、生産性の上昇がマクロ統計で確認されていた(これについては、先週の当コラムを参照のこと)。今回の日本には当時の米国のようにマクロ経済指標に明確な変化が現れるには至っておらず、個別の材料も一過性のブームとして消え去る可能性も否定できない(フィリップス曲線の明確なシフトも確認されない)。