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<舛添知事辞職>後任候補選び混沌…「人気投票」知名度頼み

毎日新聞 6月15日(水)21時41分配信

 与野党は15日、東京都の舛添要一知事の辞職を受け後任候補選びをスタートさせたが、混沌(こんとん)とした状態だ。全国最多1100万人という有権者に候補者の政策や人物像を届けるには、知名度が不可欠だ。ただ、名前が取りざたされた複数の著名人は早々に出馬を否定。過去の都知事選の候補選びでは、石原慎太郎氏ら告示直前に出馬表明した候補が当選するケースが印象に残り、「後出しジャンケン」にも例えられる。参院選も絡み、各党がけん制し合いながら候補者選びを進めそうだ。

【舛添氏の軌跡】99年の都知事立候補から謝罪会見まで

 自民、公明両党は前回、舛添氏を支援しただけに、候補擁立で前面に出るのには及び腰だ。自民党の谷垣禎一幹事長は党本部で茂木敏充選対委員長らと対応を協議した後、記者団に「党本部としては都民がどう感じているか、都連がどういう意向を持っているかを十分尊重しながらやっていく」と述べるにとどめた。

 自公両党で早くから名前が挙がったのが、人気アイドルグループ「嵐」の桜井翔さんの父親としても知られる桜井俊・総務事務次官。17日付で退任予定の桜井氏は15日、総務省で記者団に「出馬するつもりはありません」と否定した。ほかに、石原慎太郎氏の長男の石原伸晃経済再生担当相、小池百合子元防衛相、萩生田光一官房副長官らの名前も出る。公明党の山口那津男代表は15日、党本部で記者団に「国政の党派対立の要素を持ち込むべきでない」と述べ、与野党相乗り候補に期待感をにじませた。

 民進党都連は15日、国会近くのホテルで幹部会合を開いた。有力視されるのが参院議員の蓮舫代表代行だが、22日公示の参院選で改選を迎える。東京選挙区(改選数6)での当選後に知事選に転じると民進議席が減るが、比例代表での当選なら辞職しても次点の民進候補が繰り上げ当選する。党内からは「比例に転じ比例票全体の底上げを」(若手議員)との声も出る。

 一方、おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は15日の会見で、橋下徹・前大阪市長の出馬について「2万%ない」と語った。2008年大阪府知事選で初当選した橋下氏が、当初出馬を否定した際の発言をなぞって期待感を示した形だ。ただ、橋下氏自身は15日夜に愛知県一宮市で報道陣に出馬の可能性を問われると「ないです」と答えた。東京選出の長妻昭・民進党代表代行は会見で自身の出馬を問われ「『2万%ない』というと誤解を受けるので、100%ない」と否定した。

 与党側には民進党の長島昭久元副防衛相を擁立し、野党の分断を図ろうとする声も一部にある。

 都知事選は、自治官僚出身で1979年から4期16年務めた鈴木俊一氏を最後にタレントや作家などの著名人が当選し、「人気投票化」しているとの指摘もある。95年に放送作家やタレントとして活躍する青島幸男氏が「反既成政党」を掲げ、自民が支持した石原信雄・元官房副長官らを破り当選した。99年には芥川賞作家の石原慎太郎氏が当選。12年10月に国政復帰のため辞職するまで13年半にわたり知事を務めた。12年には3代続けて作家の肩書を持つ猪瀬直樹氏が当選。小泉政権下で道路公団民営化に携わるなど知名度があり、石原氏から後継指名を受け都知事選最多の約434万票を獲得し圧勝した。舛添氏も、元厚生労働相という経歴と政治学者としての知名度があった。

 ただ、猪瀬氏は医療法人グループから5000万円を受け取った問題で辞職。2代続けて「政治とカネ」の問題で1期目途中に知事が辞職する異常事態に、ある都幹部は「人気投票で選ばれた個性が強い知事は自我も強く、継続性が求められる行政には好ましいことではない」とこぼした。【三上剛輝、高橋恵子、飯山太郎】

最終更新:6月15日(水)23時33分

毎日新聞

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