本間ミチルは視力を失くした女性。
家族も居らずに一人で静かに暮らしている。
そんな彼女の家で最近何者かの気配を感じる。布が擦れるような音が聞こえて、食パンの枚数が足りない。
何者かが私の家に住んでいる...。
他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。
こうして、恐怖の同棲生活が始まった。
乙一によるミステリー小説。危険な同棲生活は思わぬ方向へと転がり始めた。
「暗いところで待ち合わせ」のここが面白い
容疑者・大石アキヒロ
駅のホームで男が線路へと突き落とされる殺人事件が発生した。
大石アキヒロは、殺された松永トシオと同じ印刷会社に勤める同僚で、お互いに反りが合わずに殺意をもっていた。
その日、駅のホームで松永トシオを見つけた。
二人っきりのホームに無防備な背中...。次の瞬間、松永トシオはホームから落下していった。
思わずその場から逃げ出してしまったアキヒロは、警察に追われる容疑者となった。
視力を失った女性・本間ミチル
本間ミチルが視力に異変を感じたのは三年前のことだった。
それから、徐々にミチルの目にうつる世界は暗くなっていった。
完全に視力を失くしてからは家にこもるようになって外にほとんどでない。
そんな生活を続けてたある日、家の中で何者かの気配を感じる。
最初は小動物かと思っていたが、徐々にそれが人間であると確信をしていく。
自分が気付いていることを知られたら何をされるかわからない...。
お互いの存在を意識しあった状態で、知らない振りを続ける。恐怖の同棲生活が始まった。
緊迫感あふれる同棲生活
家の中の、ほとんど顔見知りといってもいいほど親しかった暗闇が、わずかに緊張をはらんでいる。
だれかがすぐそばにいて、どこかから 自分を見ているかもしれないという不気味さがあった。
もうしばらくはじっとし様子を見よう。
自分が何も気づいていないふりをしているうちは、安全だと思えた。
根拠はない。
ここ数日がそうだったのだからという単純な発想だった。
(出典:『暗いところで待ち合わせ』)
この小説はミチルとアキヒロの一人称で進んでいく。
息がかかるほどに近くにいる二人は、何度となくお互いに接触しかけてしまう。
お互いにその存在を認め合ってしまったら何が起こるかわからない。
緊張感のあふれるシーンが続いていく。
終わりに
というわけで、『暗いところで待ち合わせ』を紹介した。
盲目の女性と殺人事件の容疑者の危険な同棲生活を描いた物語。
緊張感のあふれる描写が続き、衝撃の結末を迎える。
ハラハラとした気分を味わいたい人にはおすすめの小説となっている。