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「高解像度のカメラほど画質は落ちる」
こう言うと、多くの人が「ええっ?」「嘘つき」と言うかもしれません。高解像度=高画質というイメージが神話のようになっていますが、それが真実とは限らないのです。
しばらくF値の話を続けようとも思いましたが、レンズの話ばかりでは飽きてしまう読者の方がいても困るので、今回は撮像素子、別名イメージセンサーの話をします。
デジタルカメラを購入する際、多くの人は「解像度」を気にします。
「解像度」とは「1000万画素」や「1000万ピクセル」で表されている数値で、最近のカメラはだいたい「1200万画素〜2200万画素」のものが多いように思います。
この数値を比較して、解像度が高い、解像度の数が多いカメラほど、性能が良いカメラだ、と判断する人が多いのですが、これは正しくありません。
今回も例を挙げて比較してみましょう。
2つのキヤノン製コンパクトデジタルカメラ「PowerShot G1 X」と「PowerShot A2600」の解像度を比較してみましょう。
機種名 | 画素数(解像度) |
PowerShot G1 X | 約1430万画素 |
PowerShot A2600 | 約1600万画素 |
画素数で見ると下段の「PowerShot A2600」の方が高解像度です。
しかし、「PowerShot G1 X」のホームページではメーカーであるキヤノン自ら、「PowerShot G1 X」に「キヤノン コンパクト史上最高画質、完成。」というキャッチコピーが光っていますね。
つまり、「高解像度のカメラほど高画質だ」というわけでは「ない」、ということが解ります。
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PowerShot G1 X ホームページ |
PowerShot A2600 ホームページ |
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高画質なデジタルカメラを求めるなら、解像度で比べるのではなく、撮像素子(イメージセンサー)の大きさで比較するべきです。イメージセンサーが大きいほど、より高画質な画像を得ることができます。大きさはカタログやホームページの「仕様表」に掲載されています。(PowerShot G1 Xの仕様表 / PowerShot A2600の仕様表) どちらも冒頭に出て来ていますね。
※これは技術論を言っていて、実際にそのカメラが高画質かどうかは厳密には撮った写真で比べるべきではあります。
撮像素子、イメージセンサーはCCD方式とCMOSセンサー方式があります。
レンズを通って入ってきた光をイメージセンサーが受けて画像を作り出す役割を担っています。フイルムカメラでフイルムにあたります。
上の写真のようにミラーレスカメラの場合は、交換式レンズをはずすと、イメージセンサーが目の前に見えます。一眼レフの場合は、反射ミラーの奥にあります。(青く見えるのが撮像素子、イメージセンサーです)
先ほどの2機種の比較では、「PowerShot G1 X」のイメージセンサーはCMOSセンサー方式で、大きさは1.5型です。これはコンパクトデジタルカメラとしてはとても大型のものを搭載しています。
一方、「PowerShot A2600」のイメージセンサーはCCD方式で、1/2.3型です。1.5型と1/2.3型って比べるのもややこしいですが(*^_^*)、1.5と0.5以下を比べてるんですからずいぶんと大きさが異なることが解ると思います。
先ほどの表にイメージセンサーの大きさの情報を追加して比較してみます。
機種名 | 画素数(解像度) | センサーの大きさ |
PowerShot G1 X | 約1430万画素 | 1.5型 |
PowerShot A2600 | 約1600万画素 | 1/2.3型 |
この例ではコンパクトデジタルカメラ同士で比較していますが、コンパクトデジタルカメラと一眼レフで比べても同じことが言えるのです。
機種名 | 画素数(解像度) | センサーの大きさ |
EOS Kiss X50 | 約1220万画素 | APS-C (22.0×14.7mm) |
PowerShot A2600 | 約1600万画素 | 1/2.3型 (6.2×4.6mm程度) |
コンパクトデジタルカメラに比べて、一般に一眼レフの方が画質が良いことは皆さん、ご存知と思います。このケースで比較してもやはりそうでしょう。
解像度で言えばPowerShot A2600の方が高解像度ですが、一眼レフの「EOS Kiss X50」の方がずっと大きなイメージセンサーを搭載しているので、より高画質な写真が撮れるカメラと言えるのです。
フィルム式カメラの時代も、より大きなフイルムを使った方が画質の良い写真が撮れるとされてきました。一般に市販されていた35mmフイルムより、ずいぶんと大きなフイルムを写真屋さんが使っていたのを記憶している人もいるのではないでしょうか。よりたくさん光を、よりたくさんの面積だけ受けた方が写真はきれいに撮れるのです。
だからこそ、「コンパクトデジタルカメラ」より「APS-Cサイズのセンサーの一眼レフ」、それよりも「フルサイズ・センサーの一眼レフ」とイメージセンサーがより大きなカメラ種別の方が高画質とされているのです(イメージセンサーの大きさはこんなに違う:下の写真)。
ただ、前回も言いましたが、ここでの話は高画質というひとつ側面で比べたに過ぎません。カメラとしてPowerShot A2600が劣っているというつもりはありません。
イメージセンサーのサイズはカメラ設計の基本となる部分で、この大きさによって、レンズの大きさや機構のサイズが大きな制約を受けるのです。つまり、PowerShot
A2600のような薄型コンパクトが大切な機種ではイメージセンサーが小さいからこそ、コンバクトに仕上げることができる、とも言えるのです。
話がややそれましたが、高画質性能を実現するためには、解像度よりもイメージセンサーの大きさの方が重要だということだけはなんとなく理解頂けたと思います。
それは解ったとして、イメージセンサーのサイズが同じ2機種があったとしたら、高解像度の方が高画質だろうな、と推測するのが普通ですよね。
しかし、技術論では違うのです。まったく逆。高解像度ほど画質は低下するはずなんです。
その理由はまた次回以降に解説します。
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画素数が多いほど画質が低下するのはなぜ?
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