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デジタルカメラは「画素数が多い=高画質ではありません」。むしろ技術的には画素数が増えるほど画質は低下する傾向にあります。
ここまでの解説「画質でカメラを選ぶなら撮像素子(CMOS/CCD)の大きさを見る」で、デジタルカメラは撮像素子(右写真)が大きい方が高画質であることを解説してきました。
しかし、多くの一般ユーザーは「高解像度 2200万画素」などのキャッチコピーに惹かれて、「画素数」が多いほど画質が綺麗だと思い込んで機種を検討してしまいます。撮像素子のサイズなんてよく解らない、どこを見ればいいの?
ということもあるでしょう。
しかし、画素数で画質の善し悪しを推測するのは、完全に間違いとまではいいませんが、注意する必要があります。
下記の表を見てください。★印がプロカメラマンに開発された最上位機種ですが、どちらもハイアマチュア向けの上位機種より画素数は少ないのです。つまり、画素数には最適なバランスというものがあるのです。
キヤノン機種名 | 画素数(解像度) |
EOS-1D X | 約1810 万画素 ★ |
EOS 5D Mark III | 約2230万画素 |
ニコン機種名 | 画素数(解像度) |
D4 | 約1660 万画素 ★ |
D800/D800E | 約3630万画素 |
撮像素子のサイズが大きくて、それに伴って画素数が多いのならば問題はないのです。きっと画質も良いことでしょう。しかし、撮像素子のサイズが同じで、画素数が多いというのなら画素数が多い方が画質が良くない可能性があるのです。撮像素子のサイズが同じ2台のカメラを比べる場合、画素数が大きい方が画質が悪いかも、と疑ってみる必要があるのです。
なんで?
大は小を兼ねるでしょうに・・それなのになんで?
と思いますよね。
解説します。
今でこそ、この話しは中上級者の方々には浸透してきましたが、デジタルカメラ黎明期に私達がこんなことを言うと、嘘を言うな、とよく叱られたものです。でも本当です。
僕の著書「体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ」でも詳しく解説していますので、じっくり読みたい人はそちらもご利用ください。
画素数が増えると受光面積は小さくなる
まず大前提として、撮像素子に光を取り込む量が増えるほど画質は良いものが得られます。大口径のレンズを通して、大きな撮像素子で光を受ける、というのが理想ですね。
まず、これが前提です。
さて次に、もの凄く小さい部品の世界の話しになりますが、画素数とは光を受ける部品(まぁ、簡易的にパネルみたいなものをイメージしてもらってもいいですが)の数を示していて、1000万画素なら1000万個の受光部品が撮像素子の上に並んでいます。
そのため、撮像素子の画素数が増えると受光面積は小さくなって、ダイナミックレンジが低くなり画質は低下します。
「んー? なんで? 撮像素子のサイズが同じなら画素数が変わっても受光面積は同じなのでは?」
と疑問に感じるかもしれないので、まずは受光面積についてわかりやすい話しからします。
たとえば、撮像素子のサイズが同じで1画素のものと4画素のものがあったとします。そのとき、1つの画素全体が受光領域として使えるとしたら、1画素のものと4画素とでは受光面積は変わりませんよね。こんな感じです。
しかし、もし個々の受光素子に外枠が必要だったり、境界にある程度の仕切り線が必要だったとしたら、外枠や仕切り線によって4画素の方が受光できる総面積は少なくなります。こんな風に。
青い部分が外枠・・というか、受光できない無駄な部分です。
受光面積の比較とは例えばこのような意味です。
全面すべてが受光面積としては使えない
次に、デジタルカメラに搭載されている撮像素子の実際について解説します。
多くの撮像素子では、1つの画素全体が受光領域として利用できるわけではありません。受光部品に光があたって写真像が作られるのですが、受光部品と同様にその信号をカメラに伝える部品も撮像素子の前面に配置されているのです。
ええっ? ((;゚Д゚))
て、思ったでしょ。そうなんです。撮像素子の全面が受光パネルに使われているのではなく、受光パネルと信号伝達装置(仮名(^^;))が前面に並べられている・・わけです。
撮像素子が同じサイズだとして、1000万画素と2000万画素を比べると2000万画素の受光素子のサイズは1/2になると思われがちですが、信号伝達装置(仮名(^^;))はそんなに急激に小型化できないので、比率的に面積がとられて受光部分の面積がむしろ小さくなってしまい結果として撮像素子の受光面積は小さくなるのです。
つまり、こういうことなんです。(下記のイラストは撮像素子の前面から見たイメージです)
おおっ、なんか解ってきましたね?
(((o(*゚▽゚*)o)))
※イラスト図「体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ」(日経BP社)より
画素数の数値だけで比較してはいけない
これはあくまで技術面での一般論ですが、こうした理由から画素数が増えれば、それだけ細かく描写ができるメリットがありますが、受光面積が小さくなるので写真の表現力としての画質は低下する、というのが常識なのです。
もちろんメーカーは画素数を上げても、画質が低下しないように様々な工夫はしています。高画素のデジタルカメラそのものを否定する気はありません。画素数だけで判断するのは間違い、と言いたいのです。
撮像素子のサイズ比較をせずに、広告に載っている画素数の数字だけで比較して、もしかすると画質の悪いカメラをわざわざ選んでいるかもしれない、そんな間違いをして欲しくないのです。
こういうデジタルカメラ情報は「週刊デジマガ デジタルカメラ」でも解説しています。そちらもぜひご愛読ください。
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