重力波 2回目の観測に成功

宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象、いわゆる「重力波」の2回目の観測に成功したと、アメリカを中心とした国際研究チームが発表し、今後のさらなる観測に期待が高まっています。
これは、アメリカにある観測施設「LIGO」の国際研究チームが15日、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴで開かれているアメリカ天文学会の会議で発表しました。
「重力波」は、ブラックホールなどの天体によって生み出された宇宙空間の「ゆがみ」が波となって伝わる現象で、アインシュタインが100年前に存在を予測し、LIGOが、初めて観測に成功したと、ことし2月に発表しました。
研究チームは今回、2つのブラックホールが合体するときに出た14億年前の重力波を新たに観測したということです。初めて重力波が観測されたのは去年9月で、2回目にあたる今回の観測はその3か月後でした。相次いで、重力波が観測されたことで、これまでの観測手段では見つからなかったブラックホールの分布や、今後の重力波の観測の頻度などを予想するのに役立つとしています。
研究チームによりますと、さらにまた、重力波が観測された可能性があり現在、観測データを検証中だということで、研究チームの担当者は「これから、どんどん重力波が観測されることになるだろう。重力波天文学の始まりだ」と述べ、重力波のさらなる観測や、天文学の発展への期待感を示しました。

重力波で何が分かる

今から100年前、アインシュタインが存在を予言した「重力波」とは、どのようなものなのでしょうか。「一般相対性理論」では、質量がある物質は、すべて空間をゆがめていると考えます。そして、この物質が動くとゆがみが波となって周囲に広がっていきます。これが重力波です。しかし、仮に銀河系の中で太陽の何倍もある星が動いても地球で観測できるのは、水素原子の直径にも満たない僅かなゆがみと予想され、予言から100年もの間、誰も観測できませんでした。

その重力波を立て続けに捉えることに成功したアメリカの「LIGO」。「一般相対性理論」の正しさを裏打ちするとともに、さらに多くの重力波が観測されれば、多くの宇宙の謎の解明につながると世界中の研究者が注目しています。
その1つが、「ブラックホール」の解明です。ブラックホールは、すさまじい重力によって光さえも抜け出すことができないため、これまで直接観測されたことはなく、周囲のガスの動きなどから存在を推測するのにとどまっていました。これに対して重力波であればブラックホールを直接観測することができます。しかも、重力波の中にはブラックホールにどれぐらいの質量があるかやいつ誕生したかなどさまざまな情報が含まれるため、宇宙の歴史の解明にもつながると期待されています。

重力波を捉えようと、日本でも東京大学などが岐阜県飛騨市に巨大な重力波観測装置「KAGRA」を建設しました。KAGRAは再来年の3月に本格的な観測を始める計画で、世界の観測網と連携することでさらに宇宙の謎の解明が進むと期待されています。

LIGO 日本の研究者も参加

アインシュタインの「最後の宿題」とまで呼ばれた重力波の観測に立て続けに成功したアメリカの重力波観測施設「LIGO」には、日本人の研究者も参加しています。

カリフォルニア工科大学の研究員、新井宏二さんもその1人。7年前からLIGOに組み込む機器の開発に取り組んでいます。中でも新井さんが力を入れているのが、重力波を捉えるためのレーザーの光を効率よく電気信号に変える装置で、今回の観測でも重要な役割を果たしました。
こうした実績の背景には、およそ20年前に東京・三鷹の国立天文台に建設された重力波観測装置「TAMA300」の経験がありました。この計画に参加していた新井さんは、ここで重力波を捉えるためのレーザーのほか、機械や電子回路など幅広い知識を学びました。結局、TAMA300では、重力波を観測することはできませんでしたが、このときの経験が今に役立っているといいます。
LIGOで重力波の観測に成功したことについて、新井さんは、「自分の作った装置が貢献できたことに、無上の喜びを感じています。研究にはいいときと悪いときの『波』があると思いますが、このまま研究を続け、多くの重力波を捉えられるように使命を果たしたい」と話しています。