<イスラム教徒禁止>
トランプ発言の曖昧さと、禁止する範囲をどれだけ拡大するかという問題は、同氏による提案の合法性をめぐる議論を複雑なものとしている。
大統領は特定国からの移民受け入れを禁止する権限を有すると法律専門家が語る一方で、米国は現在どの国からも受け入れを拒否していない。ただし、シリアやイランのような国から入国する人に対しては、さらなる検査を行っている。
トランプ発言の最も広義な解釈は、イスラム世界からだけでなく、武装勢力から攻撃を受けた欧州やアジアの米同盟諸国からの移民受け入れも禁止するというものだ。そうなると、米テクノロジー業界に多くの熟練したエンジニアを提供しているインドもそのなかに含まれる可能性がある。
そのようなことは実現困難で、非生産的だと批判する声もある。
「トランプ氏は、ある特定の国々の国民に対し、ビジネスや観光あるいは教育のためのビザ(査証)発給もやめると提案しているのか。同氏の政策は米国経済を成長させるのではなく、むしろ何十億ドルもの損失を出しかねない」と、前出のベリンガー氏は述べた。
トランプ氏はまた、米イスラム社会に属する人たちに「警察当局と協力し、悪人を突き出す」ことを求め、さもなければ彼ら自身も「法の裁きを受ける」とも発言している。この合法性についても専門家は疑問を呈している。
「一般的に、知っているということそれ自体で刑事責任を問われるという考えは、米国の刑法とは正反対だ」と、元連邦検事であるコロンビア大学のダニエル・リッチマン教授は指摘。もしトランプ氏が大統領としてそのような起訴を行おうとするなら、被告人は自己を有罪にしないようにするため憲法上の権利を行使し、黙秘し続ければよいだけだと、同教授は語った。
(Matt Spetalnick記者、David Ingram記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
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