2016年6月16日(木)
米国・ロサンゼルスで現在開催中の“E3 2016”。ここではE3開催前に行われた各社の発表やプレスカンファレンスを受けて、その注目ポイントと、そこから見えてきた今後のゲーム業界の動向についての考察をお届けする。
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▲会場前のPlayStation E3 2016 Press Conferenceの様子。 |
“E3 2016”は数年ぶりに、新たな据置ゲームハードが登場するE3となった。だがその動きはまだ本格的なものではなく、しかもこれまでとはやや違った方向性となっている。
マイクロソフト(MS)が今年8月の海外発売を発表した“Xbox One S”は、本体のサイズやデザインがかなり変化している他、4K動画、HDRレンダリング、Ultra HD Blu-rayの対応など、機能面でも“ニューモデル”にあたる。
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また、HDD容量が500GBで299ドル、2TBでも399ドルという価格も魅力的だ。日本でもXbox One Sが年内発売と発表されていることもあり、日本でもより大胆な戦略が行われることを期待したい。
そして同時にMSから発表された“Project Scorpio”は、強力なGPUを搭載して本格的な4K解像度のゲームプレイを可能にするという、Xbox Oneの“上位機種”だ。また、今回のE3では発表が行われなかったものの、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)も“ネオ”と呼ばれるPS4の“上位機種”を開発していることを公式に認めている。
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ここで注目したいのは、これらのハードが“次世代機”ではなく、あくまで現行機種と並行して存在する形の“上位機種”である点だ。
PS4やXbox Oneの登場から約3年が経過しようとしている現在は、ゲームハードの能力をフルに引き出したソフトが続々と登場してくる成熟期を迎えている。裏を返せばゲーム開発者の立場としては、ハードのさらなるグレードアップを求め始めているのかもしれない。またVRへの対応という面で、ハード性能を強化する必要が出てきたことも想像できる。
だがPS4やXbox Oneのユーザーにしてみれば、まさに今、魅力的なゲームがどんどんと登場してきている時期に、“次”のハードの話をされても困惑するというのが本音だろう。ハードメーカーの側もその点ははっきりと理解しており、だからこそ“Scorpio”や“ネオ”は現行機と並行する存在であることを、最初の情報が明らかになった現時点から明確に語っている。
ハードメーカーとしては、以前のようにゲームハードが完全に世代交代するのではなく、今後はスマートフォンのように異なる性能のモデルが並行することで、徐々に進化していくという形を考えているようだ。実際にそうなるのかどうかは、“Scorpio”や“ネオ”がユーザーにどう受け入れられるかによっても、また変わってくるだろう。
いずれにしても、“Scorpio”の発売は2017年のホリデーシーズンと発表されており、“ネオ”のほうも今回のE3で発表が行われなかったことを考えると、2017年以降の発売になると想像できる。
将来登場するハードを意識しすぎるあまり、現行のPS4やXbox Oneで続々と登場してくる魅力的なゲームを楽しむ機会が失われてしまうのはもったいない。“Scorpio”や“ネオ”でも、現在発売されているソフトは動作すると明言されているので、目の前のゲームを安心して楽しんでほしい。
ゲームハードに関してはもう1つ、PlayStation VRの北米と日本での発売日が10月13日に決定したことも発表された。すでに発売が開始されているOculus RiftやHTC Viveなどと合わせて、主要なVRハードがいよいよ市場に出揃うこととなる。
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VRに対する関心の高さ、特にゲーム開発者たちの意気込みについては、過去のE3でも十分に感じることができた。だが一方で、VRが単なるデジタルガジェットではなく、本当にゲームプラットフォームとして成立しうるのかということについては、まだ不確かなところがあった。
それに対して今回のE3では、本格的なゲームプラットフォームとしてのVRの存在が、かなり具体的になってきたという印象を受けた。
まず注目したいのは、2017年1月26日に発売される『BIOHAZARD 7 resident evil』が、ゲーム本編すべてをPS VRで楽しめると発表された点である。
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『バイオハザード7 resident evil』。 |
VRは、特に日本では数分間のデモ的なプレイがメインになると思われがちだが、海外では通常のゲームと変わらない本格的なゲーム体験も期待されている。『バイオハザード』という世界的人気シリーズの最新作をまるごとVRで体験できるのは、VRに対する人々の認識を大きく変えるという意味でも画期的なことだ。
→E3 2016会場での『バイオハザード7』PS VRプレイ動画
また今回のE3では、『Star Trek: Bridge Crew VR』や『BATMAN ARKHAM VR』、『スター・ウォーズ バトルフロント』の“X-WING VRミッション”など、映画やコミックの人気作をVRでゲーム化する作品の発表が相次いだ。
既存の人気IPをゲーム化する際は、オリジナル企画のゲーム以上にビジネス的な成功が求められるはずだ。こうしたゲームの発表が相次いだことは、ゲーム業界の内外で、VRにビジネスとしての可能性を見いだしている企業が増えてきた表れだと言えるだろう。
ただし、現状ではまだゲームメーカーによって、VRに対する姿勢に温度差があるのも事実だ。今後ゲーム業界がVRに向かって進んでいく流れがさらに加速していくのかどうか、まずは10月に発売されるPS VRの動向に注目したい。
個々のゲームソフトの面から今回のE3を見てみると、先に挙げたようにハードの成熟期を迎えたこともあり、どのタイトルも非常に充実した内容になっている印象を受けた。
ただ、『Horizon: Zero Dawn』『ディスオナード2』『Ghost Recon: Wildlands』『フォーオナー』のように、昨年のE3でその存在が明らかにされて、今回改めて新情報が公開されたものも少なくない。
その意味では、小島秀夫氏の最新作『DEATH STRANDING』には会場が沸いたものの、2年前のE3での『スプラトゥーン』や、昨年のE3で『FINAL FANTASY VII REMAKE』や『シェンムー3』が電撃発表された時のような、サプライズ感は薄かったように思う。
今回のE3にあわせて発表されたタイトルでは、ゾンビのような感染者の群れが無数に押し寄せてくる『Days Gone』の実機プレイが、非常にインパクトのあるものだった。また『Watch Dogs 2』は、大都市のインフラをハッキングするという前作の特徴的なゲームプレイをよりいっそう進化させており、発売が非常に楽しみな内容となっていた。
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▲『Days Gone』。 |
さらに『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、あらゆるものにインタラクトできるオープンワールドならではのプレイ感覚と、『ゼルダ』らしい雰囲気が見事に融合されており、配信されたプレイ映像を見ただけでもその作り込みの凄さが感じられた。
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▲『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。 |
今回明らかにされたのは、作品全体からすればまだほんの一部だと思うので、さらなる続報に期待したい。
また今回のE3では、『バトルフィールド1』『タイタンフォール2』『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』という人気FPSの最新作が、わずか2週間のあいだに相次いで発売されることが明らかになった。
これらのシリーズは、いずれもオンライン対戦が高い人気を誇っているだけに、発売日が近いことでプレイヤー人口が互いに影響しあうのではと、不安視する声もある。
陸・海・空が連動した壮大なスケールで、第一次世界大戦を描き出す『バトルフィールド1』。シングルプレイのキャンペーンが加わることで、巨大メカに搭乗して戦う世界観がより深まった『タイタンフォール2』。そして宇宙空間で戦闘を繰り広げるという驚きの設定ながらも、『コール オブ デューティ』ならではの圧倒的な映像表現はさらに迫力を増している『インフィニット・ウォーフェア』と、各作品の個性はいずれも異なっている。
それだけに各作品がそれぞれ独自のプレイヤーを獲得し、共存していくことは十分に可能だろう。発売日の競合がマイナスに働くのではなく、互いに話題を盛り上げるというプラスの面に働くことを期待したい。
今回のE3における各社のプレスカンファレンスでは、スマートフォンやタブレットも含めた携帯ゲーム機の話題は、ほとんど見られなかった。海外では据置ハードが非常に好調なこともあり、数年前のようにカジュアルなモバイルゲームに急激にシフトしようとするような動きは、やや落ち着いているように見える。
日本でもこれから2016年の年末にかけては、今回のE3でも存在感を見せている『ファイナルファンタジーXV』や『ペルソナ5』といった話題作が続々と登場してくることによって、PS4をはじめとする据置ハードにも勢いが出てくるのではないだろうか。
その一方で2017年は、今回のE3での発表が見送られた任天堂の“NX”や、MSの“Project Scorpio”、そしてSIEの“ネオ”と、新たなゲームハードの話題が一気に登場してくる激動の年になりそうだ。
VRも含めて、ゲームはこれからもまだまだ進化していく。今回のE3では、そうした可能性がおぼろげながら見えてきた。今後ヨーロッパで開催されるイベントや9月の東京ゲームショウでは、ゲームの持つ進化の可能性がどれだけ明確になっていくのか注目したい。
[集計期間2016年 06月08日~06月14日]
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