2016年03月03日

セーラー服と機関銃

アイドル映画というビジネスモデル



評価:★★★★   4.0点

薬師丸ひろ子が、アイドルとしての輝きを最も発している映画だと感じます。

また同時に、映画界がTV業界に対して、逆襲に転じた一本でもあったように思います。
というのも「アイドル」という言葉自体、TV業界の10代タレントをさすもので、本来映画界の俳優は「スター」と呼ばれていました。

時代が映画からTVに移っていく中で、さすがにTVのタレントを「スター」と呼ぶのは失礼だという事で、作られた呼び名だったといいます。
しかしTV全盛の時代になって、TVタレントが映画に出演するようになって「アイドル映画」というものが生まれました。

それはTVアイドルに「映画スター」の格と権威をつけようというプロダクション側の戦略だったでしょう。
その最も顕著な成功例が「山口百恵」ではなかったでしょうか。

しかしこのTVアイドルの映画進出が盛んになっても、映画界は古いスターシステムから抜け出せなかったのです。
そこで現れたのが角川書店(角川春樹)率いる「角川映画」でした。
彼は、映画業界外からの参入者だったため、古い映画界に新風を巻き起こせたのです。

その一つが、映画界からアイドルを生むという戦略でした。
その第一弾が薬師丸ひろ子であり、後に原田知世が続きます。

そして、この「セーラー服と機関銃」こそ「映画アイドル」による「アイドル映画」の原典であると思うのです。

ちょっと説明がうまく行ってないのですが、「TVアイドル」による「アイドル映画」とは、TVアイドルの権威付けだと書きましたが、それゆえ過去の映画スターが演じてきた文芸路線「潮騒」「伊豆の踊り子」などの作品に出演させたのです。

しかし、角川「映画アイドル」である薬師丸ひろ子が演じたのは、権威のかけらもないマンガ的なこの作品でした。
さらにしかし、ここに角川春樹の、プロデューサーとしての天性の閃きを感じるのです。

それは、「スター」というのが生まれながらに特別のオーラを放つ別世界の存在だとすれば、「アイドル」とは街を歩けば何人かは見かける「カワイイ子」だと明確に認識していたという点にあったでしょう。

そんな「ありふれた少女」を映画としての権威を極力感じさせない「マンガ的作品」に出演させる事で、それまで映画に対して拒否感を感じていた当時の10代に、映画を見させることに成功したのです。
しかし、この「映画アイドル」による映画大衆化戦略は、思わぬ発見をもたらしたように思います。

それは文学などの権威を借りずとも、「ありふれた少女」が最も輝けるシュチュエーションさえあれば、途方もない光を発するという事実です。
つまり、これまでの「アイドル」を権威によって価値を高める方法よりも、「アイドル」自体が持つ力を発揮させてやれるドラマを作る方が、より効率よく「アイドル」性を発揮できるということを意味していたように思います。

この「セーラー服と機関銃」の優れている点は、普通の女子高生に、普通ではない付加価値(ヤクザや機関銃)を持たせたという点にあったでしょう。
これはそのまま、「普通の少女」を「映画」に出させるという、アイドルの構図と符合するものです。
普通の少女を主人公にしたという設定によって、誰でもチャンスがあれば「輝ける=アイドル化する」のだと宣言をしたと思うのです。

この「アイドル映画」が意味するものを整理してみれば、それは、映画という「権威」あるコンテンツを、TV的に「矮小化」する試みによって、映画離れをしていた観客を戻そうとする試みでした。
それは赤川次郎の原作も同様です。
「マンガに対抗できる小説を書いている」と赤川自身が語っているように、当時の若者達を小説につなぎとめようと、それまでの小説の権威とは違うエンターティーメント作品を明確に目指したものです。

つまり映画も小説も、時代の流れに取り残されて消えようとして行く運命に、必死に抵抗する姿だったでしょう。

それは同時に、映画界や文壇の持つ、旧弊な価値を守ろうとする権威者に対する、新しい世代からの反撃とも見えるのです。

このときの角川映画の盛り上がりを見ていると、「映画界のアイドル」が力を持っていけば、ハリウッドのようなスターシステム(戦前の日本にあったスターシステム)が、誕生するかという期待すら持ちました。

しかし残念ながら、弾切れを起してしまったようです・・・・・・・


関連レビュー:山口百恵「春琴抄」

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posted by ヒラヒ・S at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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