ネットに公開、広島の大学生逮捕
神奈川県警、著作権法違反容疑 40万回以上のダウンロード
スマートフォンなどのオンラインゲームのデータを改ざんする不正プログラム「チートツール」をインターネット上に公開したとして、神奈川県警サイバー犯罪対策課は15日、広島県内の男子私立大学生(21)を、著作権法違反(技術的保護手段を回避するプログラム譲渡)容疑で逮捕した。捜査関係者によると、男子学生はチートツールを自ら作成し、約2年間で40万回以上ダウンロードされていたという。
「チート(ずる)ツール」はゲームキャラクターを強くしたり、使えない裏技を使えるようにしたりする不正プログラム。捜査関係者によると、男子学生は2013年夏ごろ、人気ゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」用のチートツールをネット上に公開し、不特定多数が使用できるようにした疑いが持たれている。
男子学生はチートツールを自分のパソコンで作成し、開設したサイトなどに無料で公開していたとみられる。ゲーム運営会社が対策を講じても内容を改めて計30回以上公開を繰り返したという。県警が昨年6月、ネットオークションで販売したとして別の男を著作権法違反容疑で逮捕し、男子学生の関与が浮上した。
捜査関係者によると、県警は15日、別のチートツールを常用していたとして、偽計業務妨害容疑で4人を横浜地検に書類送検した。
不正プログラムでオンラインゲームを有利に進める「チート行為」は近年横行し、ゲーム運営会社が導入したチート行為防止ソフトを無効化させるチートツールも出回っているという。【国本愛】
「裏技」横行 対策すり抜け
「対策を立てても、網の目を抜けようとする不正利用者とのいたちごっこ。普通に楽しめるゲームを作っているので、ずるをせず遊んでほしい」。パズドラを運営するガンホー・オンライン・エンターテイメント社(東京)の担当者は訴える。
「裏技」と呼ばれるチート行為は近年、手口がエスカレートしつつある。ネットオークションやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にチートツールが出回り、現金と引き換えにチート行為を施してもらう「チート代行」も横行しているという。
同社は不正に対抗する専門チームを設置したが、データを改ざんできないよう暗号化を強めても、解読を試みる不正利用者が後を絶たない。背景には、チート行為への違法性の認識が薄い利用者が安易に手を出す半面、取り締まる法整備が進んでいない現状がある。
チートツールを作成しても直ちに罪に問うことは難しい。このため捜査当局は、著作権法違反や不正競争防止法違反など多様な法律を適用してきた。捜査関係者は「不正利用者は、取り締まることが可能な犯罪行為だと認識するべきだ。チートツールから個人情報や金銭が取られる危険性もある」と注意を呼び掛ける。【国本愛】