挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第12章 鬼ヶ島の恋物語

145/198

第205話 紫紺の美少女

今回、なんとあのキャラにまさかのスポットライトが……?
 

「仕事を手伝う? お兄さんの?」

「そ。それが、イオ兄さんから『真珠』と『琥珀』を貰う条件だってさ」

 開けて翌日。場所は……ローザンパークの外の、とある開けた草原。
 そこで僕は、一緒についてきてくれたエルク達に、今朝イオ兄さんから聞かされた、『真珠』と『琥珀』の対価の件について話していた。

 なお今、エルク、ザリー、シェリー、ナナ、義姉さん、そして、土地勘がある案内役ってことでついてきてくれたナズナさんが一緒に来てくれている。

 ミュウ他は留守番。なお、シェーンには中華料理の件について昨日のうちに打診済みだけども、シェーン自身未知の料理に出くわしてやる気になっていた。期待大だ。
 今頃、宿に残ってるカスミさんあたりにご指導いただいていることだろう。

 さて、話を戻して……朝、僕はイオ兄さんから、真珠と琥珀を貰う条件を聞いたわけだけど、その時一緒に、このローザンパークの内情その他も絡めて簡単に聞かされた。

 ご存知の通り、ここ『ローザンパーク』は、他国との交流がほとんどない。
 政治的にはもちろん、物資とかその他色んな面でも。

 全くってわけじゃなく、定期的に外から来る行商から物資や情報を入手してるらしい。

 と言っても、当然ながら普通の行商がこんな危険区には来られないし、そもそもこんなところに好んで来ようとする行商なんていない。

 そんな中で誰が売りに来るのかって言うと……なんと、ノエル姉さんの商会の手の者だそうだ。それも、ブルース兄さんの傭兵部隊の精鋭の護衛で。
 こんなところでもキャドリーユネットワーク炸裂かい……便利さ底無しだな。

 さて、再度話を戻そう……そんなわけで、この集落はその行商からたまに購入する以外は、基本的に物資面で外とのやり取りっていうのはほとんどない。ゆえに必然的に、ここでの暮らしは……自給自足、という形になる。

 集落の外で狩りや採取をしたり、耕作によって作ったりして物資を手に入れ、それをやりとりして食料や資材に変え、生活するために使うわけだ。
 それらを調理するための料理人や、加工するための鍛治師、技師、薬師なんか集落にもいるため、限定された資材や素材しか手に入らなくても、意外と不便は無いらしい。

 しかし、普段の生活に不便はなくとも……手に入る物資その他に限界がある以上、どうしようもない問題っていうのもいくつかは出てくる。

 そういうのは普段は、次の行商が来るのを待って購入する。あるいは、その時に注文して、そのまた次に行商が来た時に購入したりして対応する。
 それでも手に入らないものは、仕方ないものとして諦めるor放置するらしい。

「で、その時コレ貰ったんだよ」

 そう言いつつエルク達に、その時イオ兄さんからもらった紙束を見せる。

 コレは、昨日のうちに部下の人に作らせたという、現在の『ローザンパーク』における案件のリスト。全部で7枚、計7件の案件それぞれについての詳細な情報が記されている。

「期間は1ヶ月以内。これら7つの依頼のうち、4つ達成したら『琥珀』を、7つ全部達成したら『黒真珠』をくれるってさ」

「……それはわかったけど……何かどれもエラい依頼ね。難易度的に」

「それは確かに……いやまあ、ミナト君を信頼しての判断っていうか、選定の結果なんだろう、ってのはわかるんだけど……」

「……普通の冒険者がコレ渡されたら、『遠回しに断られてる』って思いますよね」

 エルクが見ている紙束リストを後ろや横から覗き込みながら、皆口々に言う。
 まあ、うん……確かに、内容の難易度はちょっとばかし洒落にならないんだよね。

 具体的にどう……おっと。

(おいでなすったか)

 わざと『見つかりやすい』ように、開けた草原に立っていた僕らを……『そいつ』は、まだ数kmもの距離があるであろう遠くから見つけたようだ。
 小さな点にしか見えなかったその影が、どんどん大きくなってこっちに向かってくる。

 それは、鳥だった。黒に近い灰色の羽毛に包まれた、『シムルグ』をも超える巨鳥だ。
 鷹のように鋭い目は金色の輝きを発し、嘴や爪は鋼だろうが紙同然に切り裂けるであろう鋭さが見て取れる。羽ばたきは力強く、その足は尋常ならざる膂力を発揮すること間違い無い。

 とりわけ異様なのは、その羽毛がバチバチと帯電していることだった。時折、稲光かとも思える大きな電撃が空中に放たれ、そのまま霧散して消える。
 それと一緒に見ると、黒灰色の羽毛はまるで雷雲か何かのようにも見える。

 ……うん、間違いない。アレ、兄さんからの依頼に会った獲物の1匹だ。

「まずは肩慣らしがてら、一番楽そうなのから、って言ってたわね」

「……あの『サンダーバード』ってさ、AAAランクの魔物なんだけど……」

「それが『一番楽』って……はぁ」

 うん、まあ、言いたいことはわかるよ。おかしいよね、ランク的に。

 けどさ、ホントに『一番楽』なんだよ……だってコレ、ただの討伐・納品依頼だから。
 『サンダーバード』の討伐と、その素材(っていうか死骸丸ごと)の納品。それだけ。

 しかも、こいつは他の土地から迷い込んできた魔物で、一匹だけしかいない。だから、討伐すれば終わりだし、巣の場所や大体の習性もわかってたから、ホントに楽。

 縄張りに入り込んで隠れずに待ってるだけで、向こうからきてくれた。

 後の残り6つは何ていうか……ただ単にターゲットの魔物を倒すだけとかじゃなくて、達成までに一癖も二癖も、一手間も二手間もありそうなやつばっかだったからさ……。敵のランクが高くても、倒すだけでOK、っていうこの依頼が、ぶっちゃけ一番楽なんだよ。

 ま、脱力はこの辺にしてと……始めますか!

 ☆☆☆

 終わった。1分で終わった。

 僕らを狩る気満々で襲いかかってきた『ザンダーバード』を、爪の一撃をかわしつつ体に飛びついて、片方の翼を根元からへし折ってまともに飛べなくしてから、『スカイラン』で空中を跳び回りつつ連続攻撃叩き込んだら、案外あっさり終わった。

 まあ、体とか羽毛そのものも常に帯電してたから、僕以外が同じことしたらしがみついた瞬間に消し炭になってただろうけどね。

 とりあえず、いつもの黒い伸縮自在の棒に足をくくって逆さ吊りにして、と。

「よし……じゃ、帰ろっか」

「これで早くも1つ達成ってわけね……あと6つ何が残ってるんだっけ?」

「ええと……魔物の討伐が2つ、捕獲が1つ、採取・納品が2つ、調査が1つ、ですね。今日中にもう1つくらいやりますか?」

「いや、やめとく。残りは全部、それなりに前準備が必要そうなのばっかりだったし」

 ただ何かを討伐してはい終了、とは行かない感じのラインナップだったはず。今日はもう、コイツをイオ兄さんに届けて終わりにしよう。

 そして昼食にして……午後から情報集めだな。

「ってことでザリー、ナナさん、手伝ってね」

「了解。ついでに、他分野の面白そうな情報も探してみようかな……ここ(ローザンパーク)ならきっと、余所じゃ手に入らない情報もたくさんあるだろうし」

「相変わらず仕事熱心だこと……でも、さすがにやめた方がいいんじゃないの? ここって一応山賊の本拠地なんだし……あんまり情報あさったりすると目つけられてヤバイんじゃない? よそ者が何かかぎまわってる、とか思われてさ」

「その辺はもちろん気をつけるよ。山賊団の内部情報調べるわけじゃないし。僕が調べたいのは、ここと接してる大国その他の情報が入ってきてないかな、ってことさ」

「それに、『山賊の集落』っていう話も……実際にはちょっと違いますからね」

 と、ナナ。ん、どゆこと? 違うって。
 その疑問に、義姉さんが続く形で答えてくれた。

「あー、話すとちょっと長い上にややこしくなるんだけどね……『ローザンパーク』が山賊の集落って呼ばれてるのは主に、あそこの『初代頭領』が原因なのよ」

 

 移動しながら義姉さんに聞かせてもらった。『ローザンパーク』の成り立ちを。

 前にちらっと説明したとおり、そもそも『ローザンパーク』は、山賊団『ガイア』が、当時完全に未開の秘境だった場所を自力で開拓し、拠点として利用し始めたことに端を発する。地形その他、様々な要因による、鉄壁の防御力を持つ自然の城砦として。

 その当時の頭領こそ、団そのものの名前にもなっている、初代頭領『ガイア』。

 一応その山賊団、いわゆる『義賊』であり、悪人からしか奪わない主義だったらしい。

 ただし、悪人でさえあればそれはそれは容赦なく……相手が貴族だろうが王族だろうが喧嘩売って、奪いまくってたそうだ。
 そして、各地で豪遊・散財するという形で、奪った金品を民に還元していた。

 そんな滅茶苦茶な集団だっただけに、一般市民からは割と好意的に見られていたものの、権力者からすればいつ自分達に牙をむくかわからないならず者であり、排除の対象。
 頭領・ガイアを始めとした幹部格の首には、懸賞金もかかっていた。

 何度も正規軍の兵を差し向けて討伐しようとしたものの……ことごとく惨敗。
 しまいには、その戦いによって国力が低下し、滅んだ国まであったとか。

 やがて数十年がたち、初代頭領・ガイアは引退……二代目頭領に代替わりした。その後、初代がどうしたのかは語られてはいない。戦いの中で死んだのか、隠居したのかも。
 そのタイミングを狙って再び攻めてきた国もあったそうだが、結果は歴史の繰り返し。

 しかし、その二代目の時代の後半あたりから、だんだんと山賊団の活動は大人しくなっていったそうだ。
 その理由は……山賊団に、守るべきものができたから。

 初代の時代から、ローザンパークには、他の国や地域から流れ着いた難民が結構いた。
 危険地帯を放浪の末に、って感じだから、ホントにごくまれに、だけど。

 山賊団は、自分達に害がなければ、特に彼らを拒むことはしなかった。
 義賊だからっていう理由もあるけど、彼らに住む場所と食料なんかを与え、代わりに自分達が今までやっていた雑事の一部を任せることで、労働力として利用出来たからだ。

 その結果として、彼らが持ち込んだ作物や料理、その他色々によって、その後の三代目の時代を経て、あの理想郷が出来上がったらしい……おっと、思い出したらよだれが。

 と、ここまで聞いた所で……『でもねぇ』と、なぜか義姉さんが遠い目をした。

「その話……実は一部分がデタラメなのよね」

「「「は?」」」

 全員で聞き返す僕ら。デタラメってどういうことだ?

 さっきの説明の最中、ちょこちょこ補足説明なんかを入れていたナナまでもが一緒になって聞き返していたところを見ると、軍関係情報とか、そういうんじゃなさそうだけど。

 ていうか、ナズナさんも驚いてる……内部情報ですらない?

 加えて……その遠い目が気になる。
 その目は、何というかこう……僕の『否常識』に付き合わされる時のエルクやノエル姉さんあたりがよく浮かべる目だ。義姉よ、何を知っている……?

「……実はね、その山賊団ガイアや『ローザンパーク』の成り立ちには、いくつかオフレコの裏話があってね……」

 そんな目のまま、義姉さんの『裏話』は始まった。

「まず最初に、山賊団の頭領の名前なんだけどね……『ガイア』って、通り名っていうか、偽名っていうか……とにかく、本名じゃなかったのよね。で、実は本名は……」

 本名は?

 
「……『テーガン・ヴィンダール』って言うのよね」

 
「「「ぅおいっ!?」」」

 ☆☆☆

 約200年前。
 山賊団『ガイア』初代頭領・ガイア――本名テーガン・ヴィンダール。
 彼女が率いる軍団は、他の山賊団だろうが、海賊団だろうが、大国の正規軍だろうが、何を相手にしても向かう所敵無しの常勝軍だった――ある一戦を除いて。

 そしてその戦いこそが、彼女の運命の分岐点となった。

 彼女達はある時、当時猛威を振るっていたとある大きな盗賊団を襲う計画を立てた。
 が、いざそれを実行せんとしたとき……予期せぬ出来事が起こった。

 その盗賊団の本拠地に、全く同時に到着した別の一団がいたのだ。自分達と同じように……盗賊団を壊滅させ、蓄えている財宝をそっくり頂戴しようと画策している者たちが。

 獲物のダブルブッキングを起こしたその一団はしかし、テーガンらが悪名高き『ガイア』だと知ってもなお、盗賊団という獲物を譲ろうとせず……結果、争奪戦が勃発した。

 その一団こそが、後の『女楼蜘蛛』メンバー……リリン・キャドリーユ、アイリーン・ジェミーナ、クローナ・C・J・ウェールズの3人。

 当時はまだ正式にチームは結成しておらず、メンバーもまだこの3人だけだった。
 しかし……それぞれが恐ろしいほどの力を持っていることに変わりはなかった。

 その凄まじい戦闘力の前に、正面から圧倒的な人数差でかかったにも関わらず、瞬く間に粉砕され……精鋭部隊は全滅。
 せめてもの慈悲なのか手加減されていたようで、死者はいなかったという。

 リリンとの一騎打ちになっていたテーガンも、善戦したものの、敗れた。

 なお、両者の『獲物』であった盗賊団については、その戦いの余波でいつのまにか壊滅するという救われない結末を迎えていたことを記しておく。

 敗北の現実を突きつけられたテーガン達は、自分達は所詮は山賊、このまま殺されるか、正規軍に引き渡されるのを待つのみだろうか……と思って覚悟を決めていた。
 が、そうはならなかった。

 自分達の生殺与奪を握っているはずの、金髪緑目の美女は……つい数時間前まで殺し合いを繰り広げていたテーガンに向かって、にかっ、と無邪気な笑みを向けたのである。

 ☆☆☆

「……で、その後、母さん達とそのテーガンさん達は、昨日の敵は今日の友的な……もっと言えば、少年漫画の王道的な展開で仲良くなったってわけか」

「若干意味わかんない文言が混じったけど、まあ、それで当たってるわね」

 すごい出会いだったんだな……獲物がダブった結果の殺し合いって……。

「一度、本拠地の『ローザンパーク』に招かれて歓待されて以降は、お義母さん達、たびたび遊びに来てたらしいわ。主に暇な時とか」

「暇つぶしでAAの危険区に……」

「エルク、そのへんはもう今更ってもんだよ」

 あの人達にしてみれば……ここに来るまでの危険なんて、あってないようなもんだろう。
 母さんなんて、危険度AAの『樹海』を避暑地扱いにして、別荘まで持ってんだから。

「そんで、何年かそんな感じで友達付き合いしてたんだけど……テーガンさんが頭領の座を二代目さんに譲ったのをきっかけに、お義母さんの仲間になったらしいわ。冒険者として」

「大丈夫だったの? お尋ね者だったんでしょ?」

「名前――本名知られてないし、髪型と服装変えたら案外大丈夫だったらしいわよ? もともと顔知ってる人なんてほとんどいなかった上、そもそも世間には人相なんか正確に伝わってなくて、一般には『ガイア』って壮年の男だと思われてたみたい」

「私もそう聞いてました。女性で、しかも『女楼蜘蛛』のメンバーだったなんて……」

 と、ナナ。

「しかもあの人『獣人』でさー、見た目せいぜい20代後半の美女なのよ。今も。あの外見を見て山賊『ガイア』と結びつくことなんかまずないわね。おまけに、代替わりした『二代目』が内政が得意な人で、難民を上手く使って拠点そのものを都市として急発展させたから、諸国の注意は隠居したっていう先代よりそっちに向いたみたい」

「あいかわらず凄いバックグラウンド持ってるな、うちの母さんとその関係者は……」

「……すごい情報だけど、こりゃ使い道ないなあ……スケールが大きすぎて」

「あっても他言すんじゃないわよ、ぼーや。変な噂の一つでも立ってみなさいな、あの褐色の猛牛お姉さまに脳天から真っ二つにされるわよ」

 脅すように言う義姉さん。
 ……猛牛? テーガンさんって、牛系の獣人か何かなのかな?

「……そんな怖い人なの? 初代さんって」

「さ、さあ……私がお使えさせていただいているのは、四代目様からですので……」

 エルクの問いに、若干冷や汗をたらりと流しながら答えるナズナさん。

「ははは、怖いな……僕は大人しく、他国の噂話だけ集めてることにするよ。幸いここには、他国から定期的に使節団なんかも来てるみたいだし」

 こちらも冷や汗を流しながらのザリーのそんなセリフに、ふと僕は、昨日見た光景を思い出していた。

「そういや……確かに来てたな、他国の使節団とかいうの」

「ん? ミナト君、もしかして見かけたの? 昨日」

「うん、2つね」

 食べ歩きツアーの休憩時間中に見かけた光景。
 派手な衣服と装飾に身を包んだ一団と、ちょっと控えめな感じの一団を思い出す。

 ええと確か……派手な方の所属はわかんなかったけど、もう1つは……

「フロギュリア、だったかな。カスミさんが言ってた」

「たしか、ネリドラの故郷よね? あの国からも来てるんだ、使節?」

「『6大国』は、国境を接していなくても皆さん定期的に使節団を送って来られますよ。……一部、終始上から目線で友好の『ゆ』の字も無い国もいますが……。後はたまに、大国の大貴族が国の使節団とは別に個人的に使者を送ってきたりすることもありますね」

「そうなんだ。今回のフロギュリアのは……どっちなのかな? そう言われると……なんかやたら平均年齢若い使節団だったようにも思えるし、その大貴族系の方かも」

「へえ……ひょっとして、かわいい女の子だったりしたの?」

 と、ニヤニヤ笑いながら、からかうようにザリーが言ってくる。
 いや……当たってるんだけどね、その予想。だからってどうこうないけど。

 まあ、女の子だけじゃなくて野郎も1人……

 と、そんなことを考えた時……昨日、すぐにわからなかったあることに気がついた。
 ああ、そういえばあの人……

「うん。多分、僕やエルクと同い年くらいの……気の強そうな目の、紫色の髪の女の子だった。で、隣にもう1人、20代の男もいたんだけど……そういやあの男、なんかザリーに似てたかも」

 
「…………え゛!?」

 
 そうだよ、あの男どこかで見たことあるような気がすると思ったら……ザリーに似てたんだ。微妙に。顔とか、髪色とか。

 ……とか考えてたら……なぜかザリーが表情筋ごと硬直してた。あれ、どしたの?

「む、紫の髪の……気の強そうな女の子?」

「うん」

「……ひょっとしてだけど……おでこが広かったりしなかった? その子」

「……ああ、そういやそうだった気も……いやでもアレは、髪型がツインテールで、後ろで髪を纏めてたからそう見えただけだと……って、ザリー?」

「……紫の髪に広いおでこ……それに、僕に似た男…………まさか、いやそんな……」

 歩きながらぶつぶつと呟くザリー。なんか、こっちの声聞こえてないっぽいんだけど……

 僕以外のメンバーも、突如ザリーに起こった異変に気付いた様子。
 おーいザリー? どしたー? なんか奥さんに浮気がばれた亭主みたいな、危機感迫る感じの顔になってるけど……

「い、いや、何でもないよ……うん、そんなはずない、きっと何かの間違いだから……」

 
「残念ですが、間違いなどではありませんわよ?」

 
「「「!?」」」

 突如として聞こえた、そんな声。

 とっさに声が聞こえた方に視線をやると……そこには、

(あ、昨日の……)

 いつの間にか、『ローザンパーク』の正門前までもう少し、という所まで来ていた僕ら。

 そこに、門に続く石畳の一本道のど真ん中に……僕らの進行ルートに立ちはだかる形で、数人の男女が立っていた。

 今正に話題になっていた……フロギュリアの使節団が。

 その先頭に立っている紫髪の女の子は、昨日と同じ気の強そうな目つきに加え、ふふん、という感じの笑みを口元に浮かべて、真正面からこっちを見据えている。

 何でこの人たちがここに? 別に僕ら、この人達と何も接点とかないはずだけど……

 ……ひょっとして……僕の横で、滝のような汗を流して、引きつった笑みを浮かべているこの男と関係あるんだろうか? ありそうだな。

 そして、そんな僕の予想を裏付けるかのように、紫の髪の女の子が口を開く。
 その視線を、僕の横に向けて……にやり、という感じの笑みを浮かべて。

「ふふっ、まさかこんな所で出会えるなんて……随分と探しましたのよ? 8年ぶりかしら……お久しぶりですわね、ザリー?」

「は、ははは……そ、そうだね……オリビア?」

「「「え!?」」」

 ……やっぱり……この2人、知り合い? いったいどんな……
 フロギュリアの(おそらくは)お偉いさんと、ネスティアの情報屋って……何も接点とかパッと思い浮かばないんだけど……

 すると、紫紺の美少女……今しがた『オリビア』と呼ばれた彼女は、はっと何かに気付いたように口元に手を当てると……ザリーから視線をはずし、

わたくしとしたことが……ご挨拶が遅れ、大変失礼をいたしました。『邪香猫』の皆様ですわね、ご高名は私どもの国にまで轟いておりますわ、お会いできて光栄です」

 言いながら、スカートの裾をつまんで、優雅に一礼。

 たったそれだけの動作なのに、すごく洗練された雰囲気が伝わってくる。
 やはりというかこの娘、相当なお偉方というか、いいとこのお嬢様っぽい。

 そして、慌てて会釈を返した僕らににこっと微笑むと……次の瞬間、彼女の口から、とんでもない爆弾発言が飛び出した。

「申し遅れました。私の名はオリビア・ウィレンスタット。フロギュリア連邦、ウィレンスタット公爵家の令嬢にして、此度の使節団の代表を務めております。あとついでに……



 そこにいる、ザリー・トランターの……許嫁ですわ♪」

 

 ……………………!!?

 
「「「えええぇぇえぇえええええぇ―――っ!!?」」」

 
 
……今回、ちょっと、そのー……色んな意味でどんな反響になるか怖いんですが……最近、感想欄とかで、うちのザリーめっちゃ心配されたりしてるので……
でも『オリビア』は、前々から考えてた展開およびキャラ設定なので、勇気を出して登場させることにしました。頑張って書かなきゃ……!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ