「放課後のプレアデス」の尊さについて語ってみる
「放課後のプレアデス」は尊い。
では、『尊い』とは何か。
そこらへんを頑張って言語化してみました。
そもそも:放課後のプレアデスとは
「SUBARU(富士重工) x GAINAX Animation Project」として作成されたアニメーション作品で、宣伝色はほとんどなくなったもののスバルのプロモーションとして始まったものです。
2011年にYoutube版(無料配信4話)が公開され、その4年後(2015年春)に全12話のTVアニメとして再構築、放映されました。
お手本のようなボーイミーツガールであり、緻密な宇宙映像作品であり、詩情豊かに思春期の悩みと成長を描いたサイエンスファンタジー、そう自分は認識しています。
本作、公式サイトのイントロやキャラビジュアルを見て分かるとおり、いわゆる魔法少女モノとして売り出されています。
でも、作中には詠唱を伴う格好いい呪文もなければ、倒すべき悪い奴も居ない。怪我をするようなバトルもないし、努力逆転勝利のカタルシスもありません。
そういうものを期待して見てしまうと、大いに肩すかしをくらうのは確かだし、そういう路線だと誤解されたままだったのか、広く話題になることなく放送を終えてしまったのがとても惜しまれます。
「プレアデス」における魔法とは、端的に言うと「高度に発達した科学」みたいなもので、ドライブシャフト(≒箒:駆動音は5人それぞれスバル車のエンジン音を生収録!)で宇宙を飛んだり、服が一瞬で変わる程度のことしかできません。
物理学の都合の良いところだけを使うための「魔法」。便利な言葉だよ!
圧倒的宇宙観
でも、だからといって退屈さを感じることがないのは、SF作品として圧倒的にこだわった宇宙/物理的な考証に基づいた描写のおかげだと思います。星図の正確性、高速飛行中の光の流れ、果てには土星の環の衝突シミュレーションまで国立天文台に依頼する程にこだわった宇宙表現は、ただ見ているだけで満足感に包まれます。
地球圏からはじまって月、土星、そして外宇宙まで広がる世界。そんな静寂の中をスバル車のエンジン音をなびかせて飛んでゆく姿のなんと爽快なことか。
自分は全然理解が追いついていないんですが、多世界解釈や量子論、ダークマターなんかもさらっと世界観に入っているので、その方面に明るい人が見たらもっと面白いのかもしれません。
(作品内ではまったく説明がなかったり、あるいは早口で説明されるシーンもあるけど、あくまで聞き飛ばさせるギャグのような位置づけなので、理解できていなくても全然問題ないです。宇宙きれー、って思うだけで充分楽しめます)
それに加えて、科学面から離れて哲学的な台詞回し、宮沢賢治の世界観を思い出すような空気もあって、「魔法」「宇宙」「車」というバラバラな要素が上手く混ざり、魅力的な世界を作ってくれているんだと思います。
キャラクターの魅力:選ばれた5人
5人の少女は、「より多くの可能性を秘めた存在」と説明されているが、それは一方で「何者にもなれない存在」であると描かれている。
そんな5人が、過去と向き合い自己を肯定していく様は心が痛くなったり暖まったり、惑わされることうけあいです。
プレアデスの魅力の一つとして、登場人物が皆聡いという点が挙げられると思うんですね。
(だから、外部要因のせいで無用に振り回されるとか、トラブルメーカーが混乱を引き起こすとか、そういった横道はほとんどない。だからというわけじゃないけど、いわゆる「キャラ回」でも安心して見ていられる)
年相応とは言えないくらい聡い彼女達は、大人や周りに対する気遣いや不安から殻を被り、それ故に「何者にもなれない」(=何かを選び取ろうとしない)存在になってしまった。
それを、同じつらさを抱えた仲間達が支え、肯定してくれるところにプレアデスの妙がある、はず。
(ネタバレ配慮のため最大限にぼかすけど)自分が一番たまらなく思ったのは、お互いが悩んでいる事柄は知らないのに、かけるべき言葉を知らずに知って、語りかけているシーン。うれしくて泣いている友達を、馬鹿にせずに茶化したり、本人より先に気持ちを気付かせてあげたりと、そんなことが出来合える5人が尊い。
『何者にもなれない』少女達が物語の末に選んだ答え、またそれに至るまでの成長、全てが尊い。
この作品、正直言って放映中はそんなに推したい程じゃなかったんです。
でも、終わった後に見返して、色んなことに気付いて、評価を改めました。
たぶん、何度でも、数ヶ月後とか数年後まで、ふと思い出して何度も観たくなるような作品なんです。
先に少し書きましたが、哲学的な台詞回しが多くて、初回は何を言っているのか分からない点も多々あったんですが、2週目以降に咀嚼すると、ずっと前のシーンと繋がっていたり、後になって分かる心情や信条が現われていたりと、何周しても面白いんです。
今後の展開
Youtube版にTVアニメの他、コミカライズや小説版、さらには児童書まで出ています。そんなところから覗えるとおり、この作品はぜひ年齢の低い人達に届いてほしいなあと思ってしまうことがしばしばあります。深夜アニメじゃなくて夕方か日アサでやっていたらどれほど……とか、NHKで再放送やってくれないかな~(スバルの宣伝事業だから難しいんだよな~)とか、悔しさばかり浮かんでくる毎日です。
今後の展望としては、来月発表予定の2016年 第47回星雲賞メディア部門にノミネートしています。ここで受賞してブーストしてくれたら、一挙放送……映画版なんて夢が広がります。
宣伝
1話は無料で観ることができますが、できることなら話が加速し始める3話まで(本当のことを言うと、プレアデスの魅力が最高に詰まった4話まで……!)続けて観てほしいなあと思うところです。
Amazon、バンダイチャンネル、その他webサービス上で配信していますが、2016年6月現在、見放題サービスはひかりTVだけのようです。
一挙放送とか見放題セールが来たら宣伝したいのでどうかはよ。
あるいは、美麗アイキャッチで僕らの心を虜にしたAnmi先生みずからコミカライズした漫画版があるので、こちらから手にとってもよいと思います。
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