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栗村修の“輪”生相談<77>45歳男性「ママチャリや折り畳み自転車で走るのはトレーニングになるのでしょうか?」

2016/06/14 06:00更新

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 45才、ロードバイク歴3年半のおデブなクライマーです。近所にヤビツ峠がありまして、トレーニングやポタリングで走りに行ってます。

 軽量なカーボンロードバイクもありますが、ママチャリやシングルギヤの折り畳み自転車を主に使ってますが、トレーニングとして走る場合、ちゃんとロードバイクを使った方が良いのでしょうか?

 ママチャリも折り畳み自転車もビンディングペダルにして足が滑らないように固定し、下死点で膝が真っ直ぐになるようなサドル高にするなど工夫を施しています。

 重い自転車やシングルギヤ車で走るのはトレーニングになるのでしょうか? トレーニングの目的は心臓と脚を鍛えることです。

(45歳男性)

 とめどなく軽量化が叫ばれ、人々が10g単位の軽量化に大金をつぎ込み、バイクの重量がUCI規定の6.8kgギリギリに張り付いている昨今、あえてママチャリや折り畳み自転車で峠に挑む質問者さんが、僕は好きです。いいですね。

 そういえば昔、僕が宇都宮ブリッツェンの監督をしていたころ、選手たちもよく練習に使う峠に、ママチャリで「ロードバイク狩り」をする人が出没していたことを思い出しました。

 何も知らない哀れなロードバイクがやってきて、峠を上りはじめるじゃないですか。すると上り口で待ち構えていた彼は猛然とスタートし、ビンディングペダルもつけていないママチャリで獲物を抜き去るのです。後には一陣の風と「俺の軽量化は何だったんだ…」と呆然とするロードバイカーだけが残ります。

 ええと、ママチャリやシングルギヤの折り畳み自転車で走ることはトレーニングになるかどうかというご質問でした。

世間ではママチャリ耐久レースというものも行われています Photo: REN世間ではママチャリ耐久レースというものも行われています Photo: REN

 答えは、イエスでありノーです。というのも、トレーニングには大きく分けて2種類あり、ママチャリで走ることはその片方には効果的ですが、もう一方にはあまり効果がないと考えられるからです。

 トレーニングは、心肺機能や筋力などフィジカルのトレーニングと、バイクを操るテクニックのトレーニングとに分けられます。ママチャリは、負荷は大きいですから、フィジカルのトレーニングとしては悪くないと思います。

 しかし、自転車の作りがロードバイクと違いますから、効率的なダンシングやペダリングのリズムなど、テクニック面はあまり向上が見込めないでしょう。というより、繰り返し語っているようにトレーニングは「順応」ですから、体がロードバイクではないものに順応しちゃうわけです。これは、ロードバイクで走ることを考えると好ましくありません。質問者さんの「心臓と脚を鍛える」という目的がロードバイクを考慮していないならこの前提は崩れますが…。

 軽くてスピードの出るロードバイクって、ある意味で「ラクな自転車」なんですよね、ママチャリなど他の自転車と比べると。だから、下手をするとトレーニングがラクに、つまりあまり効果的でなくなってしまう恐れがあります。

 ほら、ロードレースでも、MTBやシクロクロスなど、別の競技出身の選手がいい成績を出したりするじゃないですか。あれは、ロードバイク以外の自転車で高い負荷を経験することで鍛えられたんだと思います。体の使い方や体幹の強さなど、いろいろな「伸びしろ」がつくんですよ。

現ロード世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア)は、マウンテンバイクのジュニア世界王者獲得を経て、19歳でロードプロ入りした Photo: Yuzuru SUNADA現ロード世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア)は、マウンテンバイクのジュニア世界王者獲得を経て、19歳でロードプロ入りした Photo: Yuzuru SUNADA

 ただし、繰り返しになりますが、ロードレースを狙うならばテクニック的にロードバイクに順応する必要もある。そこで、理想的には、ロードバイク以外の自転車にも乗って負荷の高いトレーニングを行いつつ、狙うレースの直前で集中的にロードバイクに乗って、体をロードバイクに順応させるといいと思います。

 ですがちょっと心配なのは、「45才」「おデブなクライマー」というくだりです。上りでシングルギヤで無理をして、膝などを傷めないように注意なさってください。それから、45歳というと僕と同い年ですが、そろそろ心臓への負担を控えたくなるお年頃です。なので、膝への負担が少ないくらいのケイデンスで、無理のないペースで上られたほうがいいかもしれませんね。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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