【レポート】

国際半導体技術ロードマップが終了 - IEEEが新たに半導体・コンピュータロードマップを発足

1 IEEEが新たなロードマップ「IRDS」を立ち上げ

服部毅  [2016/06/14]
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米国に本拠を置く世界規模の電気電子工学学会「IEEE(電気電子技術者協会)」は2016年5月、「IEEE International Roadmap for Devices and Systems(IRDS:国際デバイスおよびシステムロードマップ)」という名称の新たなロードマップの策定作業をIEEE Standards Associationの産業界連携プログラムとして発足させると発表した。なお、IEEE Standard Associationは、1500件を上回るIEEE標準規格を制定・管理し、さらに500件以上の新規標準規格を開発中のIEEE傘下の組織である。

IEEEが検討を開始したコンピュータ業界に必要なロードマップ

IRDSは、コンピュータ業界が必要とするすべての関連技術の動向を調査して関係者のコンセンサスに基づき、将来に向けたロードマップを作成する。IEEE Rebooting Computing Initiative(IEEE RC Initiative)がIEEE Computer Society(IEEE傘下のコンピュータ学会)の助言を受けながら運営にあたる。IEEE RC Initiativeは、IEEEの将来の方向性を決める委員会(IEEE Future Directions Committee)に属し、今後のコンピュータのあり方を、過去をリセットしてゼロベースで考え直すために設立されたIEEEの内部組織である。

IEEE RC Initiativeは「International Technology Roadmap for Semiconductors 2.0(ITRS 2.0:国際半導体技術ロードマップ・バージョン2.0、詳しくは後述)」と合同で半導体およびコンピュータのロードマップ会議を2015年7月、米国スタンフォード大学キャンパスで開催したり、両組織の幹部らがさらなる戦略的連携の話し合いを行った結果、IRDSが誕生した。ITRSの活動はこの段階に至る以前にすべて終了した。

従来ITRS(国際半導体技術ロードマップ)およびITRS 2.0が開発してきた半導体技術ロードマップの作成手法などはIEEE Standards Association産業連携プログラムが引き継ぎ、今後はIEEEが、デバイス、コンポーネント、システム、アーキテクチャおよびソフトウェアなどコンピュータ・エコシステムの構築のための網羅的なロードマップ作製を主導していく。従来ITRSが手掛けてきたのは、この中で、ごく一部分(デバイスやコンポーネントの一部である半導体の部分)に相当する。IRDSは、ITRSよりもはるかにスケールの大きなロードマップとなるだろう。今後は、ITRSと言う言葉は使わないことになっている。

IRDSの委員長はITRSから横滑り

図1 IRDS委員長に就任したPaolo Gargini元ITRS委員長 (出所:California NanoSystems Insatitute)

長年に渡りITRS委員長を務めてきたPaolo Gargini氏(元Intel戦略担当ディレクター、図1)が、IRDSの初代委員長に就任した。同氏はIRDS発足に当たり、「ここ10年以上にわたり、エレクトロニクス業界の構造や要求は、半導体の業界の要求をはるかに超えて発展してきている。新しいエレクトロニクスのエコシステムの変化に対応して、IRDSは、今まで築きあげたITRSに立脚し、挑戦すべき課題を明らかにするとともに、推奨できる解決策を提示できるようにレベルアップする。IRDSは、システムおよびデバイスに関して15年先までのビジョンを示し、半導体、通信、IoE(すべてのモノのインターネット)およびコンピュータ業界の今後について新たな方向付けを行いたい」とコメントしている。

すでにベルギーにて活動を開始したIRDS

ITRSは、2016年2月に米国アトランタのジョージア工科大学で開催された会議を持って活動を終了し、IRDSの最初の会議が2016年5月12-13日の2日間にかけて、ベルギー・ルーベン近郊の半導体研究機関imecのキャンパスで開催された。会議では、これまでのITRS2.0の活動状況を個々に詳細にレビューするとともに、2016年に行うべき活動プランについて議論したが、その中身については公開されていない。

imecは、最先端半導体プロセス・デバイスだけではなく、IoTやヘルスケア、次世代コンピューティングなど半導体のアプリケーション開発に注力しているので、IRDSとしては、imecの力を借りて、これらのアプリケーションを起点としてトップダウンで半導体への要求を抽出する枠組みをあらかじめ構築しておきたいようだ。このように、IDRSはGargini委員長のもとですでに予備活動を始めてはいるが、全体像や組織構成, 今後のスケジュールなどは、まだ煮詰まっておらず、後日発表するとのことである。

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インデックス

目次
(1) IEEEが新たなロードマップ「IRDS」を立ち上げ
(2) なぜITRSは活動終了してしまったのか?
(3) 新たなムーアの法則は誕生するのか?
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